「両側性網膜芽細胞腫」とともに生きるりょうとくん、「新幹線の運転士になりたい」~QLife「遺伝性疾患プラス」2周年記念イベント
- 作成:2022/12/25
遺伝性疾患情報の専門メディア「QLife遺伝性疾患プラス」は、サイトオープン2周年を記念し、『CaNoW』とともに、遺伝性疾患の患者さんとご家族の願いを叶えるイベントを開催しました。テーマは「願いを叶え、疾患啓発につなげる」。今回ご紹介するのは、網膜芽細胞腫の木瀬りょうとくん(6歳)とそのご家族です。 ※CaNoWとは、エムスリー株式会社が展開する『病や障がいと共にある方』の願いをかなえるプロジェクトです。CaNoWは、病や障がいと共にある方の願いを、医療×人×ITの力で叶えていきます。詳細は、CaNoW公式ホームページをご覧ください。
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眼球摘出は免れたものの、両目の視力が低下
「網膜芽細胞腫」(もうまくがさいぼうしゅ)とは、目に発生するまれながんです。全体の約40%が遺伝性で、木瀬さんご家族は母親の真紀さんと、息子のりょうとくんがこの病気と診断されています。
真紀さんは幼少期に左目を摘出しており、右目は放射線治療の後遺症で白内障手術を受けました。一方、りょうとくんは、真紀さんが妊娠中に受けた羊水検査で網膜芽細胞腫になる可能性があることが指摘されていたそうです。出産後の検査で両目に腫瘍があることがわかり、すぐに治療を始めました。
2年近くに及ぶ治療は奏功し、眼球を摘出することは免れました。小学1年生になった現在は経過観察をしながら元気に過ごしています。しかし、両目ともに見えづらい状況で、普通学級に通いながら弱視学級に通級しています。
将来の夢は、新幹線の運転士
幼い頃から電車が大好きなりょうとくんは、保育園の卒園式で「将来、新幹線のぞみの運転士になりたい」と発表しました。しかし、視力の問題でその夢を叶えることは難しいと、真紀さんは考えています。今回のイベントに応募したのは、「運転士に近い体験をしてほしい」という思いからでした。
そこで、JR東海が運営する「リニア・鉄道館」(愛知県名古屋市)で、りょうとくんに新幹線シミュレータの運転を体験してもらうことにしました。新幹線に関する知識をより深めてもらおうと、いすみ鉄道(千葉県夷隅郡大多喜町の鉄道会社)の元運転士で鉄道Youtuberの西上いつきさんをゲストに招きました。
憧れの制服を着て運転席へ
イベント当日、木瀬さんご家族は期待に胸を膨らませながら、リニア・鉄道館へ。りょうとくんはゲストの西上さんと初めて会い、最初は照れていたものの、すぐに打ち解けました。西上さんから展示物の説明を聞いているうちに仲良くなって、りょうとくんのほうから「今度(西上さんが運転していた)いすみ鉄道を見に行きたい」などと、わくわくした様子で話す場面も。
また、二人で一緒に新幹線クイズにチャレンジしました。1問正解するごとに電車のシールをもらえるルールで、りょうとくんは7問すべてに正解! ラリー用紙にシールがたまり、とても嬉しそうでした。
そしていよいよメインイベント、新幹線の運転体験の時間がやってきました。運転士の制服に着替え、制帽をかぶったりょうとくんは、実物大の新幹線N700系の運転シミュレータへ。運転席に座り、間近で見て、触れることもできる計器類に興味津々です。
運転操作中は本物の新幹線と同じように目の前を風景が流れていきます。りょうとくんは「運転席からビルやマンション、東京タワーや浜名湖も見えた。本物の運転士になったみたい!」と、目を輝かせていました。 イベントを終えたあと、「運転シミュレータが一番楽しかった。でもジオラマもすごかったし、西上さんと名鉄の話ができたことも嬉しかったよ」と、興奮気味に話してくれました。
当事者からの発信が理解や支援につながっていく
前述の通り、網膜芽細胞腫は約40%が遺伝性の疾患です。しかし、遺伝性疾患に対する社会の理解は十分とは言えません。りょうとくんの母親の真紀さんによると、誤った情報によって当事者が心ない言葉をかけられることも少なくないそうです。そうした中、真紀さんは網膜芽細胞腫の成人患者さんを中心とした患者会「RBピアサポートの会」を立ち上げ、共同代表を務めています。その背景には、どんな思いがあるのでしょうか。
「病気やハンディキャップを公表することは、デメリットもあると感じています。しかし、今回のイベントへを通じて、自ら公表すれば理解してくれる人は意外と多いと感じました。できないことを伝え、その上で旅行を企画してもらったことで、家族全員で楽しむことができました。当事者からできないことをもっと周りに伝えることで、家族や医療関係者以外の方々にも支援してもらえる機会が増えることを願っています」(真紀さん)
さらに真紀さんは「網膜芽細胞腫という病気について、もっと多くの人に知ってほしい」と訴えます。
「この病気は早期発見することで適切な治療につながり、視力を温存できる可能性が高くなると言われています。知っていただくことが第一歩ですね。一方、亡くなるお子さんや全盲になるお子さんもいるというのが現実です。他の小児がんと比べると病気の深刻性は低いかもしれませんが、病気を一生抱えていくことに変わりはないということも、あわせて知っていただけたらと思っています」
引用元:CaNoW(カナウ)
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