妊娠してから「葉酸」のサプリメントを飲み始めるのでは遅い?
- 作成:2022/04/21
「葉酸」が妊婦にとって大事な栄養素であることはよく知られています。「葉酸」のサプリメントは“妊婦にお勧めのサプリメント”として紹介されることも多いですが、実は、「葉酸」が大事なのは妊娠のごく初期のため、妊娠に気付いてから飲み始めるのでは間に合いません。妊娠を考えているのであれば、「葉酸」のサプリメントは妊娠前から飲んでいることが大事です。
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「葉酸」の追加摂取で子どもへの先天異常リスクを軽減
「葉酸」は、豆類や海藻などにも豊富に含まれる栄養素ですが、妊娠中は母体と胎児の両方が必要とするため、普段よりも多くの「葉酸」を摂取しなければなりません。通常、栄養に関しては“バランスの良い食事”を心がけるのが基本ですが、こと「葉酸」に関しては、様々な食材を手に入れやすい日本の妊婦であっても、食事のバランスに気を付けるくらいでは十分な量の「葉酸」をとれないことが多い1)ということがわかっています。そのため、適宜サプリメントなどで「葉酸」の補充(※通常は400μg/日を追加)を行うことが望ましいとされています。
実際、こうしたサプリメントによる「葉酸」の追加摂取によって、生まれてくる子どもに神経管欠損という先天異常が起こるリスクを25~30%ほど減らせる、という効果を期待できることがわかっています2)。(※葉酸の摂取だけで発症するかしないかが決まるものではありません)
妊娠に気づいてから飲み始めるのでは間に合わない「葉酸」サプリメント
しかし、こうした効果を期待するためには、妊娠3ヶ月までの妊娠初期の段階……厳密に言えば胎児の神経管が形成される妊娠6週目までの間に「葉酸」を摂取して、葉酸不足をしっかりと解消しておく必要があります。
日本では、妊娠がわかってから「葉酸」を摂り始める人が少なくありません3)が、普通はこの段階では妊娠していることには気付けません。そのため、“妊娠に気付いてから飲み始める”のでは基本的に間に合わず、本当に必要な時期は既に終わってしまっている、ということになります。
このことから「葉酸」は“妊婦であることを自覚した人”より、“これからの妊娠を考えている人”……妊娠可能性がある時にこそ意識すべき栄養素だと言えます。
妊娠に気付いてからの「葉酸」サプリメントは意味がないの?
「葉酸」は、たとえば自分の血液を作るのにも大事な栄養素です。そのため、妊娠3ヶ月目を過ぎてからの摂取も、全く無意味というわけではありません。特に、「葉酸」そのものは比較的安全性の高い成分で、「葉酸」のサプリメントも副作用の心配をする必要があまりありません。このことから、葉酸の摂取量が不足気味な人は、妊娠期間を通して摂取し続けても良いとされています4)。「葉酸」を豊富に含む食品…例えば豆類や海藻類を普段あまり食べない人は、妊娠に気付いてから以降も摂り続けてみても良いでしょう。
ただし、「葉酸」でもなんでもそうですが摂り過ぎるとよくありません。医師から特別な指示を受けている場合を除き、サプリメント等で摂るのは1日400μg=0.4gの推奨量に留めておくようにしましょう。
また、サプリメントの中には「葉酸」以外にも色々な栄養素を配合したものもあります。こうした商品は手軽に色々な栄養素を摂れるため便利ですが、妊娠中の安全性が不確かな成分が混ざっていたり、あるいはいろいろな成分の過剰摂取を起こしたりするリスクもあるため、摂取するときは医師や薬剤師に相談し、十分に注意して摂取しましょう。
1) J Obstet Gynaecol Res. 2011 Apr;37(4):331-6
2) Am J Clin Nutr. 2007 Jan;85(1):285S-288S.
3) Nihon Koshu Eisei Zasshi . 2014;61(7):321-32.
4) 日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会編:産婦人科診療ガイドライン 産科編2021
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