子ども用眼鏡、「ブルーライトカット」が良いって本当ですか?
- 作成:2022/04/22
「ブルーライトカット」の眼鏡は、眼の疲れや負担を減らすとして、特にパソコンやスマートフォンなどのデジタル端末を扱う機会の多い人にお勧めされていることの多いアイテムです。子ども用の眼鏡を作る際にも「ブルーライトカット」の眼鏡をお勧めされることがあるかもしれません。しかし、「ブルーライトカット」の眼鏡が本当に子どもの眼によいのかどうか、購入を迷う保護者も多いのではないでしょうか。
この記事の目安時間は3分です
ブルーライトをカットしても眼の疲労や負担は変わらない?
そもそも「ブルーライト」とは、可視光線に含まれる青色の光のことです。この青色の光は、太陽光だけでなく、デジタル端末や部屋の照明などから出る光にも含まれています。この光が眼に疲れをもたらしたり、負担をかける可能性があるとして、眼のトラブルを防ぐために開発されたのが「ブルーライトカット」のレンズを用いた眼鏡だということになります。
最近では、パソコンやスマートフォンなどの液晶画面からは特にブルーライトがたくさん出ているため、太陽光などと比較して眼に負担をかけやすく有害である、といった論調もあります。しかし、パソコンやスマートフォンの液晶画面の明るさを最大に設定しても、デジタル端末から出ているブルーライトの量が太陽光などに比べて特に多いわけではありません1)。
また、「ブルーライトカット」についてはこのような研究もあります。2時間のコンピューター作業をする際に、「ブルーライトカット」レンズの眼鏡をかけたグループと、通常のクリアレンズの眼鏡をかけたグループとに分かれてその影響を比較したところ、「ブルーライトカットのレンズの有無によって眼の疲労感には特に違いが生じなかった」という結果も得られています2)。
以上のことから、「ブルーライトカット」の眼鏡をかけても、“眼への負担を軽減する”とか“眼の疲れを軽減する”といった効果は、ほぼ期待できないと考えるのが妥当です。
特に子どもの場合、太陽光を浴びることは心身の発育に重要だという観点から、日本眼科学会や日本小児眼科学会などは、むやみに「ブルーライトカット」の眼鏡を使うのは避けた方が良いという慎重な姿勢を表明しています3)。
「ブルーライトカット」レンズはこんなときに活用しよう
太陽光やブルーライトに限らず、眼から入ってくる光の刺激は、体内時計の調節に深く関わっています。そのため、寝る前に明るい画面を見続けていたりするとなかなか眠くならなかったり、寝室が明るいままの状態で眠ると眠りが浅くなって途中で何度も目が覚めたり…といったように、光の扱いを間違うとさまざまな睡眠障害を引き起こす恐れがあります。
一方で、日中にはきちんと太陽光を浴びないと身体がいつまで経っても覚醒しないため、これもまた睡眠障害の原因になる可能性があります。ひどい場合には、冬季うつ病(季節性感情障害)のような症状に繋がることもあります。
しかし、就寝前にパソコンやスマートフォンを扱う時間に限って装着するというような場合には、「ブルーライトカット」の眼鏡には一定の効果は期待できるかもしれません。
そもそも睡眠にトラブルを抱えている場合は「ブルーライト」をカットすることを検討する前に、寝る前にはパソコンやスマホなどの明るい画面を長時間に渡って見続けるのは避けた方が良いですし、寝室を遮光カーテンなどで部屋をしっかりと暗くする、きちんと防音する、心地よい温度や湿度に保つといった方法で睡眠環境を整える4)ことが重要です。
1) 住総研研究論文集.42:85-95,(2016)
2) Am J Ophthalmol . 2021 Jun;226:243-251.
3) 日本眼科学会、日本小児眼科学会「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」
4) 照明学雑誌.84(6):354-361,(2000)
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