赤ちゃんのうちに体内時計を整える生活習慣を 良質な睡眠が得られる工夫とは
- 作成:2021/11/11
こんにちは、医師の森田麻里子です。赤ちゃんの睡眠トラブルについての情報発信やアドバイス等を行っています。この連載では、夜泣きや、なかなか寝てくれない、朝起きるのが早すぎる、といったお悩みについて、解決のヒントをお伝えしていきたいと思います。 第2回の記事では、赤ちゃんの寝室環境についてお伝えしてきました。今回は毎日の生活で大切な、体内時計を整えるための生活習慣についてお話ししていきます。
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第2回の記事では、赤ちゃんの寝室環境についてお伝えしてきました。今回は毎日の生活で大切な、体内時計を整えるための生活習慣についてお話ししていきます。
スムーズな眠りの鍵は体内時計を整えること
朝になったら起きて活動し、夜になったらぐっすり眠る。そんなリズムを作るためには、赤ちゃんの体内時計を整える必要があります。
体内時計というのは、私達の身体の中にある時計のようなものです。脳の中や腸など、身体の様々な場所には、約24時間のリズムを刻む細胞が散らばっています。朝になったら目が覚めてきて、夜になったら眠くなってくるのも、それらの細胞の働きです。時間帯に合わせて適切に血圧や体温をコントロールしたり、ホルモンを分泌したりすることで、心地よく活動できるように身体の機能が調節されているのです。
実は多くの人は、24時間より少しだけ長いリズムの体内時計を持っています。本来ならそれを放っておくと、どんどん遅寝遅起きになってしまうはずですよね。私たちが意識しなくても、朝だいたい同じ時間に起きて夜眠ることができるのは、体内時計が毎日、地球のリズムに合うように『時刻合わせ』されているからです。
体内時計を整えるために欠かせない“光”
その時刻合わせのために最も大切なのが、“光”です。朝起きて、しっかり日光を浴びることで、朝だということが身体に伝わります。まず、 朝は一定の時間に寝室を明るくしましょう。第1回の連載でもお話ししたとおり、午前6〜7時頃がおすすめです。窓があるお部屋でしたらカーテンを開けて明るくし、窓がなければ電気をつけます。生後3カ月以降のお子さんでしたら優しく名前を呼ぶなどして起こしてあげましょう。そして明るい日光の入るリビングに移動します。
逆に、夜になってあたりがだんだん暗くなると、睡眠ホルモンであるメラトニンも十分に分泌され、眠くなってきます。しかし現代の生活では、夜の間も家の中は明るい電気がついていますよね。夜、あまりに眩しい光が目から入ると、身体は「まだ昼なんだな」と思って、睡眠ホルモンの分泌が抑えられてしまいます。その結果、寝つきも悪くなりますし、 体内時計が乱れたり、遅寝遅起きになったりしやすくなるのです。
それを避けるためには、寝る1時間ほど前からリビングの照明を少し落とし、オレンジ色の光にするのがおすすめです。本も読めないくらい暗くする必要はありません。明るさは、薄暗い夜のレストランやバーをイメージしてみてください。明るさを変えられる照明や、色を変えられる照明だと、調節が簡単です。または、間接照明があるとベストですね。もちろんそういった照明がない場合も、リビングに2つ照明があったら1つを消すなど、出来る範囲の工夫で構いません。リビングの照明を薄暗く暖色系にするのは、おとなにも効果があります。夜中まで青白い電気をつけているよりも、早い時間に眠くなることに気づくと思います。
ここで“オレンジ色”とお伝えしたのは、ブルーライトを避けるためです。ブルーライトが目に入ると、特に身体がより昼間だと勘違いしやすいのです。子どもはおとなよりも目の水晶体の透明度が高いため、ブルーライトの影響を受けやすいとも言われています。また、それほど眩しいものでなくても、ブルーライトを発するようなテレビや DVD、 スマートフォンなどといった機器は、コンテンツそのものが興奮しやすいものになっています。寝る前には適していませんよね。寝る1時間ほど前には終わりにしましょう。
寝る前のルーティーンを決めよう
体内時計を整えるのと同時に大切なのが、赤ちゃんに寝るための心の準備をさせてあげることです。私たちおとなは時計が読めますから、「そろそろ寝る時間だな」とか、「スマホを見るのは終わりにしないといけないな」とか、考えることができます。しかし赤ちゃんは時計が読めません。楽しく遊んでいる時に、 急に寝る支度を始められると、抵抗したくなりますよね。できるだけスムーズに寝つかせてあげるためには、周りの環境や、ママ・パパの行動パターンで、「これから寝るよ」ということを教えてあげると良いのです。
そのためには、寝る前に毎日同じ流れで同じ行動をする、つまり寝る前の行動をルーティーン化するのがおすすめです。『寝る前のルーティーン』、『就眠儀式』という言葉で説明されることもあります。
たとえば、寝る1時間ほど前にリビングの照明を暗くして、そこからお風呂に入ります。お風呂から上がったらスキンケアとお着替え、授乳やミルクにし、絵本を読んで、ぬいぐるみにおやすみを言いながら暗くした寝室に向かいます。そしてお布団に横になって、毎日同じ子守唄を歌う、というようなイメージです。
これは一つの例ですので、この通りでなくても構いません。ご家庭の状況やお子さんの月齢・好みによって、必要な活動は変わってくると思います。リラックスできる活動で構成することがポイントです。
おとなでも子どもでも、良い睡眠をとるためには、良い習慣を身につけることが大切です。小さい時から習慣づけていくことで、良い眠り、健やかな眠りを得られるようになっていきますよ。
森田 麻里子(もりた・まりこ)
医師・小児スリープコンサルタントChild Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。2012年、東京大学医学部医学科卒業。亀田総合病院での初期研修を経て、2014年、仙台厚生病院麻酔科、2016年より南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。
2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より現活動を開始。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務。乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや、育児支援者・医療従事者向け講座などを行う。
著書:『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』ダイヤモンド社、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』光文社新書、『子育てで眠れないあなたに』KADOKAWA
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