赤ちゃんに必要な睡眠時間ってどのくらい?医師が解説、「育児の科学」
- 作成:2021/09/29
こんにちは、森田麻里子です。私は医師で、赤ちゃんの睡眠トラブルについて情報発信やアドバイス等を行っています。この連載では、夜泣きや、なかなか寝てくれない、朝起きるのが早すぎる、といったお悩みについて、解決のヒントをお伝えしていきたいと思います
この記事の目安時間は3分です
睡眠トラブルとは?
夜泣きをはじめとする睡眠トラブルは、とても深刻な問題です。赤ちゃんが寝られないという問題だけではなく、ママ・パパの睡眠不足も起こり、それによって日中のすごし方に影響が現れ、さらに睡眠トラブルが悪化する…という悪循環に陥ってしまうこともあります。
睡眠トラブルに明確な定義はありませんが、よくあるトラブルには次のようなものがあります。
- 授乳・ミルク等で必要な回数以上に夜中に起きる
- 寝かしつけに30分以上かかって騒いでしまう
- 朝4時とか5時台に起きてしまう
睡眠トラブルを抱えている赤ちゃんがいる場合、どうしても、「なかなか寝ないのはまだ眠くないからだ。そのまま起こしておこう」「夜に何度も起きてしまうなら、まとまって眠れるように寝る時間を遅くしよう」と考えてしまいがちです。おとなならそういう方法もありますが、赤ちゃんの場合、これは正しくありません。実際には、ほとんどの赤ちゃんは寝すぎではなく、睡眠不足です。そして、その睡眠不足のために、余計に夜起きるようになってしまうこともあるのです。
赤ちゃんの睡眠トラブル解決の鍵は、とにかく赤ちゃんにとってちょうどよい生活リズムや、寝室の環境を整えてあげること、そして寝かしつけに手をかけすぎないことです。なかでも、就寝時間と起床時間をちょうどいい時間に調整することは、とても大切です。
理想的な赤ちゃんの寝る時間は?
そもそもみなさん、赤ちゃんは何時ごろ寝かせてあげればよいか、ご存知ですか? おとなと一緒に寝るというご家庭も多いと思いますし、赤ちゃんだからおとなより早く21時ごろかな? と思っていらっしゃる方も多いと思います。しかし実は、赤ちゃんは夜19時から20時ごろに寝るのがちょうどいいのです。思ったより早いと思われるかもしれませんが、十分な睡眠時間を確保するためにはこのくらい早く寝かせる必要があります。
赤ちゃんの睡眠時間については、米国国立睡眠財団などから月齢ごとに推奨時間が出されています。いずれもお昼寝を含む一日の合計で、0〜3ヶ月の赤ちゃんは14〜17時間、4〜11ヶ月は12〜15(WHO推奨は12〜16)時間、1〜2歳は11〜14時間です。このなかで、お昼寝を除くと、夜の睡眠時間はおよそ10〜12時間が目安になります。ですから、朝6〜7時に起きるとすると、夜は19〜20時には寝る必要があるということなのです。
寝る前の赤ちゃんのぐずりは、眠くなりすぎているサイン
よく、赤ちゃんの「寝ぐずり」なんて言いますね。赤ちゃんは眠くなりすぎると、ぐずってギャン泣きになり、余計に寝つきにくくなってしまうことがあります。寝る前に赤ちゃんがぐずっているような場合は、眠くなりすぎているサインかもしれません。就寝時間を思い切って早めることで、寝つきがスムーズになったり、その後の夜中の睡眠もしっかり深くなることも多いものです。
また、夜の睡眠時間がきちんと確保できているのに、就寝前にぐずってしまう場合は、もしかしたらお昼寝が足りないのかもしれません。3時間以上続けて寝続けているようなときは途中で起こしてあげて良いと思いますが、基本的に赤ちゃんの睡眠トラブルを改善させるために、お昼寝をさせないようにする必要はありません。
お昼寝は、月齢の低いうちは一日に何度も細切れにすることがありますが、成長とともにまとまっていきます。個人差もありますが、生後6ヶ月ごろには1日に2〜3回、生後9ヶ月ごろには2回、1歳すぎから1歳半の間は1回が目安です。お昼寝も、十分に寝かせてあげることを意識してみてください。
お仕事の都合などで、ちょっと早寝が難しいというご家庭もなかにはあるかもしれません。どうしても早寝が難しいときは、十分な睡眠時間が確保できるように、朝起きる時間を遅らせるのも一つの方策です。ただし、経験上、遅寝遅起きだと赤ちゃんの睡眠がなかなか安定しないことがあるようです。
これまで私が経験したなかでも、単に、遅寝遅起きを早寝早起きに変えただけで、夜泣きが改善したケースもあります。こればかりは理屈で説明ができないのですが、やはり赤ちゃんには、日が昇ったら起き、日が沈んだら眠る、早寝早起きのリズムが合っているのかもしれませんね。
森田 麻里子(もりた・まりこ)
医師・小児スリープコンサルタントChild Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。2012年、東京大学医学部医学科卒業。亀田総合病院での初期研修を経て、2014年、仙台厚生病院麻酔科、2016年より南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。
2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より現活動を開始。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務。乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや、育児支援者・医療従事者向け講座などを行う。
著書:『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』ダイヤモンド社、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』光文社新書、『子育てで眠れないあなたに』KADOKAWA
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