マスクを着けていると、低酸素状態になるって本当ですか?
- 作成:2022/04/23
コロナ禍のいま、屋内外でマスク着用を求められる機会はたくさんあります。マスクを着けていて息苦しさや暑苦しさを感じたことのある人は多いと思いますが、その息苦しさから「マスクを着けていると酸素不足になって、何か身体に害があるのではないか?」と不安になる方も多いと思います。実際にはそのような心配は必要ありません。今回は、マスクをつけた状態で血中酸素濃度を測定した研究の結果から、マスク着用時にできることまで紹介したいと思います。
この記事の目安時間は3分です
日常生活でマスクの着用によって低酸素状態に陥ることはまずない
布製や不織布製のマスクを着用することによって「低酸素状態」に陥るかどうかを検証するためには、実際にマスクをつけてみて血液中の酸素濃度がどう変化するのかを測定すれば良いですが、実際にこうした研究は既にいろいろと行われています。
たとえば、下記のような研究があります。
下記の1)2)3)の3つの状態で、それぞれSpO2(動脈血酸素飽和度)を測定しました。
1)マスクを着用する1時間前
2)マスク着用中
3)マスク着用から1時間後
「動脈血酸素飽和度」というのは、血液中(動脈)の多くのヘモグロビンの何パーセントが酸素を運んでいるかという数値です。
この研究でSpO2の値は、1)96.1%→2)96.5%→3)96.3%という結果となり、マスクの着用前と着用中と着用後で、血中のヘモグロビンが運んでいる酸素のパーセンテージにはほとんど変化がなかったことが確認されています1)。
このSpO2は、正常値は96%以上、95%未満が呼吸不全の疑いがあるとされています。つまり、日常生活を送る上では、マスクを着用していても特に「低酸素状態」に陥るような心配はない、ということです。
意外?運動時にマスク着用しても血液中の酸素濃度には影響がない
しかし、仕事で外を歩いたりしている際に“息苦しさ”を感じることは多いと思います。こういった運動時にはどのような影響があるのでしょうか。これに関しても、実際にマスクをつけた状態で歩行運動を行って、同じくSpO2を測定した研究があります。これによると、マスクなしで10分間歩いた際のSpO2が97.2%に対し、マスクを着用して10分間歩いた際のSpO2は97.0%と、こちらもマスクの有無によって酸素濃度に差は確認されませんでした2)。
さらに、心拍数が170bpmを超えるくらいの強めの運動を行った場合の研究でも、マスクなしの場合でもマスクをつけていた場合でもどちらもSpO2は96%と差は確認されず、運動パフォーマンスにも特に目立った差は生じなかったという結果が得られています3)。
つまり、日常生活だけでなく運動をする際にも、特にマスクをつけているからといって「低酸素状態」という危険な状態に陥るようなリスクは考える必要がない、と言えます。
マスクで息苦しさを感じるなら周囲の迷惑にならない場面では適宜外す選択肢を
マスクには「低酸素状態」を引き起こすようなリスクがあり医学的に有害だ、ということは基本的にありませんが、それでもマスクで暑苦しいとか鬱陶しいとかいった不快さを感じることはあると思います。そういった場合は、マスクが必要な場面ではつける、不要な場面では外す、といった臨機応変な対応をしてもらうのが良いでしょう。
マスクは新型コロナウイルス感染症の感染リスクを減らしてくれるもの4)ではありますが、マスクが防いでくれるのは主に「口や鼻からウイルスを含んだ飛沫が飛び散ること」です。
どのような状況でこの飛沫が飛び散りやすいかというと、“話しているとき”です。つまり、“マスクを外した状態で会話”すると、非常に感染リスクが高くなる、ということです。飲食店などでは気が緩んでしまい、飲食するとき以外もマスクを外しておしゃべりしてしまうケースもあるかと思いますが、やはり他人と喋る際にはマスクを着用した方が良いと言えます。
一方で、まばらにしか人が居ない公園で、特に喋りもしなければ呼吸が荒くなるような運動もしない、ただ気分転換に散歩しているような時には、それほどマスクが重要というわけではありません。特にこれから暖かい季節になり、夏場にはマスクが汗で貼りついて不快感を感じたり、息苦しいと感じることも多くなってくると思います。屋外でなおかつ誰もいない状態を確認してになりますが、マスクなしで深呼吸できるような機会も、日常の中で探してもらえたらと思います。
1) JAMA . 2020 Dec 8;324(22):2323-2324.
2) PLoS One . 2021 Feb 24;16(2):e0247414.
3) Int J Environ Res Public Health . 2020 Nov 3;17(21):8110.
4) Nat Med . 2021 Aug;27(8):1324-1327.
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