その水、まだ飲めるかも?ペットボトル水の賞味期限

  • 作成:2022/04/27

昨年は関東で、今年に入ってからは九州地方で大きな地震が発生しました。たびたび大きな地震がくると、災害対策として、食料や飲料水を備蓄するご家庭も増えてくることと思います。飲料水などはたくさんあることにこしたことはないと買いだめし、“気がついたら賞味期限切れ”なんていうことも。さて、その水、どうしていますか? 今回はDr.ソナエル氏にペットボトルの水の賞味期限について伺いました。

この記事の目安時間は3分です

その水、まだ飲めるかも?ペットボトル水の賞味期限

(画像素材:ピクスタ)

備蓄しているペットボトルの水、賞味期限が切れていませんか?

防災を考えるとき、食料や飲料水の備蓄は欠かせないものです。備えの目安としては、ライフラインの停止を最低1週間と見込んでおくべきであり、政府も大規模災害時は1週間の備えを推奨しています。

実際に食料まではあまり備蓄していなくても、飲料水だけは備蓄しているという方は多いかと思います。ちなみに飲料水の備蓄の目安は、1人あたり1日おおよそ3 Lとされており、防災用にダンボールで箱買いしてあるという家庭もあることでしょう。しかし、いつ頃か忘れたが、昔、水を買いだめしておいたけれど、久しぶりに確認してみたら賞味期限が切れていた、ということもあるかもしれません。

賞味期限が切れるともったいない気持ちになりますが、だからといってそのまま飲まずに捨てたり、植物の水やりに使ってしまうのは、実はさらにもったいないことなのです。

「賞味期限」と「消費期限」の違いについて

賞味期限切れのペットボトルの水が飲めるかどうか考えるためには、まず「賞味期限」について意味を確認しておく必要があります。このときよく混同されるのが「消費期限」です。

「賞味期限」とは、未開封で適切な環境に保管されていた場合に、品質が変わらず美味しく食べられる期限のことです。対して「消費期限」とは、未開封で適切な環境に保管されていた場合に、安全に食べられる期限のことです。

つまり、「賞味期限」は過ぎても味や風味は若干悪化しますが、食べたり飲んだりすることができます。一方、「消費期限」は過ぎたら安全に食べられないということです。

ペットボトルの水に記載されているのは「賞味期限」であり、つまりこの期限が過ぎても、味が若干変化している可能性はありますが、未開封であれば飲むことができます。

ペットボトルの水が賞味期限を過ぎても安全に飲める理由

もちろん開封後のペットボトルの水は、雑菌が混入し繁殖して胃腸炎などの原因となるため、速やかに消費する必要があるのは言うまでもありません。しかし未開封で適切に保管されていれば、長期にわたって基本的に腐ることはありません。
これはペットボトルの水は、製造過程において加熱やろ過により細菌等が取り除かれているためです。このため未開封で適切に保管してあれば、細菌が繁殖することもなく、賞味期限を過ぎても問題なく飲むことができます。

消費者庁では、「飲料水は、賞味期限を超過しても一律に飲めなくなるものではありません。品質の変化が極めて少ないことから、一部のものについては期限表示(消費期限・賞味期限)の省略も可能」と呼び掛けています。

通常、500mlのペットボトルの水の賞味期限の多くは、1年程度に設定されています。保存用の水であれば5〜15年と長期のものもあります。
賞味期限が切れた場合、最終的には匂いや味で自己判断し、自己責任で飲むことになりますが、賞味期限を大幅に過ぎても飲める可能性が高いことは覚えておきましょう。

ペットボトルの水に賞味期限がある理由

ペットボトルのミネラルウォーターに賞味期限が設定されている理由は2つあります。

1つ目は、ペッドボトルには目には見えないわずかな通気性があるため、長期保存により中の水が蒸発し内容量が変わってしまうことが理由です。法律(計量法)に則った内容量を維持するために、賞味期限が設定されています。内容量が減っても品質にはほとんど変化がないため、賞味期限が切れてもペットボトルの水は飲めるというわけです。

2つ目は、前述の通りペットボトルにはわずかながら通気性があるため、匂い移りの可能性があるためです。匂いが強い食品などと一緒に保管した場合、長期的にみて水に匂いが移ってしまう可能性があります。その匂い移りを許容できる期限として賞味期限が設定されているのです。

水の賞味期限を正しく理解し、物資の限られた災害時には有効活用を

賞味期限が切れたペットボトルの水をすぐに捨ててしまうことが、いかにもったいないことかおわかりいただけたでしょうか。ただ実際、この事実が正確に理解されていないために、本当は飲める飲料水を廃棄してしまったり、生活用水として使用してしまったりという事案が過去にあります。

2016年の熊本地震では大量の飲料水が支援物資として届いたものの、その後、使い切れずに余った賞味期限切れの飲料水を花壇の水やりや手洗いなどで消費し、それでも消費できない水の活用法を模索するという事態になりました。

2019年9月に発生した台風15号(令和元年房総半島台風)で被災した千葉県においては、市が誤って1年以上賞味期限が過ぎたペットボトルの水を配り、受け取った市民から苦情が出て、それを受けた市が謝罪し、そのことを新聞が報じた例があります。自治体、市民、メディアのいずれも水の賞味期限について正しく理解せず、残念ながら飲料水を有効利用できなかった事案です。

災害時は物資が限られ非常に貴重となるため、無駄なく消費する必要があります。特にペットボトルの水については、賞味期限について正しい理解をし、日頃から意識を持つことが重要と言えます。

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