急なむくみ、腹痛… 実は遺伝的な病気?「HAE」とは
- 作成:2022/04/28
健康な人でも日常的にむくみは起こりますが、実は、むくみ(腫れ)が発作的に現れる、遺伝性の病気があります。それが「遺伝性血管性浮腫(HAE)」です。HAEは放っておくと命にも関わる指定難病です。本記事では、HAEの症状などについて説明します。
この記事の目安時間は6分です
むくみの発作が皮膚から胃腸まで全身で起こる遺伝的な病気「HAE」を知っていますか?
「むくみ」という言葉、みなさんはどのような時に使いますか?例えば、「水分を取り過ぎて、翌朝、顔がむくんでしまった」「立ち仕事だから、毎日夕方になると足がむく」といった風に、日常的な事象として使うことが多いのではないでしょうか。
むくみは、専門的な言葉では「浮腫」(ふしゅ)といい、何らかの原因で、血液中またはリンパ液の水分が血管やリンパ管の外にしみ出て、皮膚や皮膚の下層に溜まった状態のことを指します。もちろん健康な人でも起こるのですが、実は、むくみ(腫れ)が発作的に現れる、遺伝性の病気があります。それが、「遺伝性血管性浮腫」です。英語名Hereditary angioedemaの頭文字を取って、HAE(エイチ・エー・イー)とも呼ばれます。普段気軽に使っている「むくみ」は見える部分の話が多いのですが、HAEのむくみ発作は、見えない部分も含め、体のあちこちで起こります。
皮膚などの見える部分に起こった場合には、急に手や唇などがパンパンに膨れるので、何か変だと気付きやすいかも知れません。一方、胃腸に起こった場合には、、「激しい腹痛や吐き気」、のどに起こった場合には、「のどの詰まり」といった症状として現れ、しばらくすると治まるので、なかなかこの病気と気付けないことも多いとされています。のどにむくみ発作が起こると、最悪の場合、呼吸ができなくなり命を落とすケースもあり、早期の発見と医師による対応が重要だと言えます。
気になる症状があれば医療機関へ
HAEの症状として現れる、「急に顔の一部が膨らんだ」「おながが痛い」などの症状は、HAE以外でも起こり得るもの。また、時間が経つと収まってしまうため、医療機関を受診しない方もいるかもしれません。しかし、病院へ行かずに、HAEの繰り返すむくみ発作を放置しておくと、ときに命取りとなる、深刻な事態を招きかねないのです。
HAEの場合、特に深刻なのは、のどに浮腫が起こり、気道が詰まって命を落としてしまうケースです。このように、のどに浮腫が起こる原因としては、HAEだけでなくアレルギー性疾患や急性喉頭蓋炎なども挙げられますが、ドイツの研究報告では、のどに発作が起きたとき、HAEと「診断されていた人」と「まだ診断されていなかった人」で、その後について比較したところ、「診断されていた人」の方が圧倒的に多く命を取り留めていました。HAEに限らず、むくみ発作をはじめとする「気になる兆候」に気づいた時点で、なるべく早く治療につなげていくことが、その後の重篤な結果を防ぐことにもつながります。気になる症状があればぜひ医療機関を受診しましょう。
しかし、HAEは、決め手となる特有の症状がないことに加え、病気自体の認知度も低いことから、症状に気付いて受診しても、必ずしもその場で診断がつかないこともあります。米国の研究報告では、HAEの発作が最初に起きた年齢の中央値は11歳、そして診断がついた年齢の中央値は19歳と、全体的に見て8年の差がありました。日本でも、HAEと実際に診断されている人数と、発症率から推定した人数を比較すると、やはり、認知度の低さなどから、診断の遅れが生じていると考えられています。HAEであるかどうかを医師が判断するために役立つ情報としては、誘発因子(ストレス、外傷、抜歯、月経、運動、感染など)、薬剤摂取歴の有無、家族歴などが挙げられており、医療機関を受診する際はこれらの項目についてもご自身で整理しておくと有用かもしれません。
参考文献
- 1) Christiansen SC. et al. Pediatric Hereditary Angioedema: Onset, Diagnostic Delay, and Disease Severity. Clin Pediatr 55(2016) 935-942. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0009922815616886?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org&rfr_dat=cr_pub++0pubmed&
- 2) Bork K. et al. Fatal laryngeal attacks and mortality in hereditary angioedema due to C1-INH deficiency. J Allergy Clin Immunol 139 (2012) 692-697. https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(12)01008-1/fulltext
- 3) Hide M, et al. Management of hereditary angioedema in Japan: Focus on icatibant for the treatment of acute attacks. Allergol Int 70 (2021) 45-54. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1323893020301027
- 4) 遺伝性疾患プラス https://genetics.qlife.jp/
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