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ADHD相談室

  • 作成:2022/08/04

こちらのコーナーでは、ADHDに関する質問について、メンタルクリニック四谷 副院長 堤 多可弘先生にご回答いただきます。

堤 多可弘 監修
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷  副院長/精神科医・産業医
堤 多可弘 先生

この記事の目安時間は6分です

ADHD相談室
  • Q. いつまで治療を続けるのでしょうか?

    「いつまで治療を続けるか」とか「どんな治療があるのか」とかは治療を始めるにあたって気になるところですよね。

    質問の答えに入る前にちょっと長くなりますが重要な前置きをさせてください。

    ADHD は特性としての側面が強い疾患です。つまり生まれつきの性質ですね。風邪や骨折のように完治!というイメージではなく、「その性質をうまくコントロールできるようになり、困りを減らす・無くす」ということが治療の一番の目的になります。 お薬も、「飲み続けることで治る」というよりも「飲んでいる間に症状をカバーする」という意味合いが強いと考えられています。目が悪い人が眼鏡をかけるようなイメージですね。
    また、自分でいろいろと調べたり工夫をしたりすることなどもある意味では治療と言えます。

    混乱を避けるために、ここでの「治療」は、お薬を飲むことや医療機関や専門機関の専門家によるカウンセリングやサポートなどをうけることだとします。
    具体的にどのような治療があるかと言うと、薬物治療、認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニング、 専門家によるケースマネジメントと環境調整、種々のカウンセリング、デイケア、ナイトケアなどです。
    ADHD の治療はこういったものたちを組み合わせて行います。

    さて、前置きが長くなりましたが、いつまで治療を続けるかということについてお答えします。

    結論から言うと困りがなくなるまでは治療を続けることになります。
    ADHDの一番の問題は、その症状によって困りが生じることだからです。

    具体的な例を出して説明します。
    ADHD と診断されている不注意が目立つ人が、注意力を要する仕事についてしまった結果、ものすごく困ったケースがあったとします。
    その人がカウンセリングを受けて、不注意をカバーする方法を身につけて仕事で困ることがなくなればそこで治療は終了です。 また環境調整として転職をした結果、困りがなくなれば治療終了といえます。
    野球選手がフォームを変えてパフォーマンスを上げたり、ポジションを変えてレギュラーをつかむようなものです。

    お薬に関しても似たような考え方ができます。お薬を飲みつつ、色々な工夫を身につけて、ADHDとうまく付き合える感覚を身につけたらお薬を終了しても良いと考えられています。
    もちろん薬をやめてしまうと症状が再燃してしまうケースも多いので、主治医とよく相談しながらメリット・デメリットを考えていくのが良いでしょう。

    ADHD の治療はうまく付き合えるようになるというのが目的です。そのためうまく付き合えるようになったら治療は終了と言えるでしょう。

  • Q. ADHD診療をしている病院はどうやってさがしたらいいでしょうか?

    最近では発達障害や ADHD の診療をうたっているクリニックなども増えていますがどこが専門なのかよく分かりませんよね。ホームページに書いているからといって必ずしもご自身と相性が良いとも限りません。

    いくつか判断材料になるものをお伝えします。

    ①心理検査がうけられるか
    ADHD の治療に関しては心理検査が大きな役割を担います。もちろん心理検査はだけで診断をつけられるわけではないのですが特性を把握して対策を立てるためには大きく役に立つからです。 ADHDの心理検査やWAIS-Ⅳ知能検査などが受けられるかどうかを調べるとよいでしょう。

    ②公認心理士・臨床心理士のカウンセリングが受けられるか
    ADHD の治療は、薬物療法だけではなく、認知行動療法やカウンセリングなどが重要になります。 全員が全員必要とするわけではないですが、受けられるところの方が治療選択肢が広がるのでおすすめです。

    ③ドクターがADHDの薬を処方できるか
    ADHD の一部の薬は処方には認可が必要なのでその処方ができる病院にかかった方が、治療選択肢が広がります。

    ④デイケアなどの治療選択肢があるか
    カウンセリング以外にも、デイケアやナイトケアといった、ADHD の特性を学んだり対策をたてたりするのに役立つ治療選択肢があります。こういった施設を持っているところの方がやはり選択肢が増えるのでおすすめです。

    ここまで説明しましたが、「探すの難しいな」とおもわれたかもしれません。実際全てを兼ね備えている機関は多くないのが現状です。また相性も大事ですよね。

    そこで最も簡単な方法としては、大学病院や国立病院、県立精神医療センターなどの中核となる病院を受診してみるのがおすすめです。こういった大きな病院には専門家がることが多いですし、中核病院には情報が集まっているのでより専門的な医療機関を紹介してもらえるかもしれません。受診にあたっては紹介状が必要な場合もあります。その場合はメンタルクリニックからの紹介状が望ましいですが、 普段かかっているメンタル以外のクリニックでも紹介状は書いてもらえるので「○○病院に受診したいけど手紙が必要と言われた。簡単でいいのでお願いします」と頼んでみると良いでしょう。

    反対に注意してほしい点も伝えておきます。
    最近では眉唾な治療や高額な自費治療をいきなり勧めてくるクリニックなどもあります。
    日本の医療保険は大変優れており、しっかりと効果のある治療であれば基本的に保険適用となっています。 あたかも最新最良の治療であるかのように謳っていたり、 それらしい論文を掲載して有効性が高いように見せたりしていますが、 通常の保険診療で受けられる治療の方が効果が高いことがほとんどです。 十分気を付けて慎重に判断しましょう。

    なお、大学病院などで研究もかねて、保険外の最新の治療をする場合は、きちんとその旨の説明があるので安心して大丈夫です。

    また心理士によるカウンセリングは多くの場合自費ですが、1回1時間数千円から1万円前後が相場です。これらは問題ないはずです。

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  • Q. 薬物療法が不安です。

    薬物療法が不安という方は大勢いらっしゃいます。
    しかし、少なくとも保険適用されている薬物治療に関しては、厳しい審査を経て採用されている薬ばかりです。重たい副作用が起きる可能性は低いです。

    また重たくなくとも副作用が出てしまった場合は、別の薬に変えたり量を調整したりする、あるいは一時的に副作用止めを利用するなどで、日常生活に支障が出ないように工夫することは可能です。

    薬に依存してしまうことを心配される方も多いですが、医師の指示に従ってきちんと服用していれば、極端な依存に陥ることもありません。また、1度飲んだからといって未来永劫に残るような障害が出たり、自分の性格や思考回路が変わり続けてしまうということもありません。

    最終的にはお薬を飲むことと飲まないことの、メリットとデメリットを比較することになりますので、主治医によく相談してみるといいでしょう。私も治療するにあたっては「一度飲んでみて、飲んでた方が調子が良ければ飲み続けてみましょう。飲まない方がいいなとか、効果がわからないなと思えばやめてしまいましょう」とお伝えしています。中には「一度やめてみたけど、やはり飲んでいた方が調子がいい」といって再開するケースもあります。副作用が出づらいように、ごくごく少量から始めることも可能ですので、あまり不安になりすぎなくてよいでしょう。お薬によって困りがなくなり、豊かな人生が送れるようになればと思います。

  • Q. ADHDと診断されてなにか意味があるのでしょうか。ショックを受けるだけにならないでしょうか。

    おっしゃる通り、診断を受けることで、ショックを受けてしまう方もいらっしゃるでしょう。
    しかし、診断を受けることがその人の全てを決めてしまうわけではありません。
    あくまで 、いち側面に名前がついたにすぎません。

    また、人生を決めてしまうわけでもありません。診断の有無に関わらず、活躍されていたり、自分の望む人生を送られている方は数多くいらっしゃいます。

    むしろ、診断をつけることによって自分の特性を知り、その対策を立てることで、より人生を豊かにするチャンスが広がると考えてください
    また、診断が付くことによって様々な支援やサービスなど受けられる場合もあります。そういった意味でも困りを減らす手助けになります。

    診断は「前に進むためのいちステップ」程度に思ってもらえれば大丈夫です。

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弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。

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