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- 作成:2022/08/04
ADHDは不注意や、多動性・衝動性の症状が多く見られる疾患です。それらの症状はADHDではない方にも一定程度見られることもあり、自身では判断しづらいものです。 本記事では、症状が自身にも当てはまるものがあると思った際の相談先、相談時に準備しておくといいこと、実際の治療をお伝えします。
この記事の目安時間は6分です
相談先
ADHDは、「不注意」や「多動性・衝動性」という症状の他にも、様々な要因を検討しながら医師が診断します。しかし、すべての病院で大人のADHDを診察できるわけではありません。そのため、相談をする際には大人のADHDの診断ができる医療機関を選ぶのがよいでしょう。
発達障害者支援法によって各都道府県と指定都市(人口50万人以上の都市)に設置が義務付けられている「発達障害者支援センター」(例:東京都発達障害者支援センター)に相談してみるのも良い方法です。こちらは、発達障害のある人への総合的な支援を行う機関であり、発達障害の診断を受けた人以外にも、「自分は発達障害(ADHD、ASD、LDなど)かもしれない…。」と思った人も相談をすることができます。
相談時に準備しておくといいこと
大人のADHDの診断は難しいと言われています。小さい頃からその症状が出ていることが多いのですが、大人になってからだと小さい頃の記憶を思い出すのが難しいためです。
また、自分の行動を客観的に振り返ることも難しいものです。思い当たる症状がある場合、家族に自分の小さい頃の性格や行動を尋ねたり、友達や同僚に仕事中や普段の言動を尋ねたりして客観的な情報を得ておくと、より正確な情報を元に診断・治療を進められる可能性が高いでしょう。
ADHD診断後の治療や支援
医療機関を受診して、ADHDと診断がついた場合、もしくはADHDに見られる症状への支援が必要になった場合、大きく分けると「環境調整」、「心理社会的治療」、「薬物療法」が行われます。まずは「環境調整」や「心理社会的治療」が優先されますが、子どもよりも行動範囲が広く社会的な役割が大きい大人の場合は、「薬物療法」も含めた総合的な支援が必要なケースもあります。
①環境調整
ADHDの症状における日常生活の困りごとに対処する手立ての一つとして「環境調整」があります。「環境調整」とは身の回りの物や仕組みをうまく利用して、特性によるミスを減らそうとする試みです。例えば、家の中でスマホをなくすことが多い場合、『スマホを置く場所をつくる』というのも環境調整です。
そのほかにもメモを取る、付箋を貼っておく、予定表を作る、アラームを設定する、家と職場に同じものを買っておく、などの方法もあります。最近ではスマートフォンのリマインダーやカレンダーなどのアプリを利用する方法もあります。
②心理社会的治療
ADHDの患者さんは幼少期の頃からその特性によって学習面、生活面、人間関係でうまくいかない経験を積み重ねて成人になる方が少なくありません。心理社会的治療では、自分がもつ特性を理解して日常生活をよりよくしていくための手立てや工夫を身につけていくことを目標にします。
人によってADHDの特性は様々です。したがって、自分に合った手立てや工夫を見つけるためには、一般的なADHDの特性について知るだけでなく、自分のもつ特性について医師や心理士などの専門家と共に理解を深めていくことが重要です。これを「心理教育」といいます。
「心理教育」の他に「認知行動療法」が行われることもあります。認知行動療法では自身の考え方や行動の特徴を見直して、問題を解決していきます。例えば、やる気の起きないことにも取り組めるようにする、他のことに気を取られずに集中して作業に取り組めるようにするなど様々なものがあります。指導を受けて個人で行うこともあれば、社会適応スキルを学ぶために集団で行われることもあります。次に説明する薬物療法と併用して治療を進めることもあります。
③薬物療法
ADHDの原因は脳の機能障害と言われています。
脳内の神経細胞はドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質によって、神経から神経へ情報を伝達しています。ADHDの症状は、これらの神経伝達物質が不足するなどで起こる神経の伝達異常によってあらわれるとされています。
現在、ADHDの治療薬は国内で4種類が発売されており、患者さんの症状や状況に合わせて使用されています。適正な用量には個人差があるため、医師と相談しながら用量を決めていきます。また、二次的精神症状に応じて、抗うつ薬や抗不安薬などが使用されることもあります。
・コンサータ(メチルフェニデート製剤)
脳内のドパミンとノルアドレナリンの働きを強める作用があります。 1日1回の服用で約12時間効果が持続します。
副作用として見られる食欲不振には、十分な注意が必要です。
・ストラテラ(アトモキセチン製剤)
脳内のドパミンやノルアドレナリンの働きを強める作用があります。服用を続けていれば効果が切れることなく持続しますが、安定した効果が得られるのには1~2ヶ月ほど時間がかかります。カプセルの他に液剤や錠剤もあります。
副作用として見られる吐き気や食欲不振などの消化器症状は、2回に分けて服用したり、少ない用量から少しずつ増量したりすることでやわらげることができます。
・インチュニブ(グアンファシン製剤)
脳内のノルアドレナリンの働きを強めるのではなく効率を改善する作用があります。効き始めるのに1~2週間ほど必要ですが、ストラテラと同じように効果が切れる時間がなく持続します。
元々、血圧を下げる薬として使われていたこともあり、血圧低下の副作用があります。また、交感神経の働きを抑えるので眠気が起こることもあります。
・ビバンセ(リスデキサンフェタミン製剤)
脳内のドパミンやノルアドレナリンの作用を高めることで脳の情報伝達を高める作用があります。1日1回の服用で12時間ほど効果が見られます。
副作用として、食欲不振や不眠が表れることがあります。午後の服用は避け、なるべく朝食後に服用します。
まとめ
豊かな経験を持つ医師や心理士の多くは、ADHDの方の生活や取り組みについて詳しく聴取し、ミスが生じる要因(行動や環境面)を分析して助言をします。また、相談者の頑張りを認め、うまくいった要因を一緒に考えていきます。ADHDかもしれないと思い、生きづらさを感じられている場合は、一人で抱え込まずに相談してみるとよいでしょう。
【参考文献】
1)コンサータ添付文書
2)ストラテラ添付文書
3)インチュニブ添付文書
4)ビバンセ添付文書
5)注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版 じほう
宮崎大学医学部医学科卒業。東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科医局に所属。同大学や都立松沢病院、東京警察病院にて精神科急性期、リエゾン業務、緩和ケア業務に従事。現在は労災指定病院である多摩済生病院にて、精神科慢性期、ビジネスパーソンの精神的ケアに従事している。
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