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ADHDって何?

  • 作成:2022/08/04

ADHDは、「不注意」、「多動性」、「衝動性」の3つの症状を特徴とする精神疾患です。通常は小さい頃から症状が見られますが、子どもに限られた疾患ではなく、成人でもみられます。本記事ではADHDがどのような特徴をもつ疾患であるか、解説します。

岸本 雄 監修
多摩済生病院 /VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 精神科医
岸本 雄 先生

この記事の目安時間は6分です

ADHDって何?

ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症※)は、忘れ物が多かったりミスを繰り返したりする「不注意」、落ち着きのない「多動性」、待つことが難しくすぐに実行してしまう「衝動性」の3つの症状を特徴とする精神疾患です。
※”注意欠如・多動性障害”と呼ばれることもあります

通常は小さい頃から症状が見られ、約5%の子どもがADHDと診断されています。しかし、子どもに限られた疾患ではなく、大人でも約2.5%がADHDだと報告されています。また、小児期では、女児に比べて男児の方が4~5倍ほどADHDの症状が見られますが、大人になると男女に大きな差はなくなります。1)
ADHDは発達障害者支援法2)によって、自閉症やアスペルガー症候群と同じように「発達障害」として定義されています。そのため、親のしつけが悪い、子育ての環境が良くないなどの理由で発症するのではありません。親や兄弟がADHDだとADHDである可能性が高いというような遺伝的要因と、母親の妊娠中の喫煙や生まれた時の体重などの胎児期における環境要因が合わさることで発症すると言われています。

ADHDって何?

政府広報オンライン 発達障害ってなんだろうから一部抜粋

ADHDの特徴的な症状

ADHDは「不注意が優勢に存在」、「多動性−衝動性が優勢に存在」、そのどちらも併せ持つ「混合して存在」の3つに分類されています。(「多動性」と「衝動性」は関連が深いため1つの領域としてまとめて考えることが多いです)。しかし実際には成長とともに「混合して存在」していたのが「不注意優勢」に変わっていくなど、時間経過とともに変化することがあります。特に青年期以降は、外から観察される「多動」は軽減しますが、頻回のおしゃべり、もじもじするといった内的な落ち着きのなさが顕著になっていきます3)。この他にも大人のADHDの特徴としては、計画を立てて行動をすることが困難になる実行機能障害や情緒的な不安定性が目立つことがあります。また、二次的に気分障害、不安障害、物質使用障害を合併していることもあります。これらは、ADHDと症状が類似しているため、診断はより困難になります。

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ADHDの診断

米国精神医学会による疾患分類と診断基準集であるDSM-5では、9つの不注意症状および9つの多動性・衝動性症状が記載されています。この基準による診断では、少なくとも一つのグループで17歳未満では6項目、17歳以上では5項目以上満たす必要があります。(以下はDSM-5の一部を抜粋したものです)

ADHDって何?

DSM-5に記載されている不注意および多動性-衝動性の症状

診断は、現在の症状だけではできません。不注意または多動性-衝動性症状のうち、いくつかが12歳になる前から存在していたことを確認する必要があります。また、2つ以上の場面(例:家庭、学校、職場:友人や親戚といるとき:その他の活動中)でも同じ症状がみられるか、これらの症状によって社会的、学業的、または職業的な機能が明確に低下しているという証拠や証言があるかも確認します。
そのため、ADHDの診断を行うには、問診だけでなく、普段の行動観察や第三者(教師、上司、友人など)からの情報提供も重要になります。

ADHDの特性を理解して生活する

ADHDにおける「不注意」「多動」「衝動性」は行動上の問題であり、それらは健常者でも程度の差こそあれ、それなりに見られることが多いものです。そのため、健常からどれくらい逸脱して問題となっているか、年齢によってどれくらい不相応な状態なのか、という視点で考えることが重要です。

ADHDの子どもは、その疾患の特徴だけを見ると”しつけができていない子ども”、”その保護者は悪い育て方をしている”などと見られる可能性があります。ADHDの大人は、”仕事ができない”、”空気が読めない”などと思われてしまうことがあるでしょう。しかし、これらの症状は発達障害という脳の障害が原因であることを認識した上で、ADHDであっても社会で活躍している人が多くいることを踏まえ、「不注意」や「多動・衝動性」という症状へ適切な対処をしながら周りの理解を少しずつ深めていくことが重要であると言えます。

あの人も ADHD?

著名人の中には、自身がADHDであることを公言している人がいます。また、ADHDのような特性を持っていながら、芸能人やスポーツ選手、経営者などとして活躍している人も多くいます。自身の特性を理解し、社会とうまく付き合いながら長所を発揮できる環境を探すことが重要であるといえます。

ADHDを公表している著名人

  • 深瀬 智さん(SEKAI NO OWARI メンバー)
  • 勝間和代さん(評論家)
  • 市川拓司さん(小説家)

【参考文献】
1)American Psychiatric Association : Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5thed.(DSM-5).APA,Arlington,VA,2013(日本精神神経学会監修, 高橋三郎, 大野裕監訳:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院.,東京,2014.)
2)発達障害者支援法
3)齋藤 卓弥:注意欠如多動症(ADHD)の概念・症候・診断基準,精神科治療学,29:307−312,2014
4)齊藤 万比子(編).注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 第4版.じほう,201

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宮崎大学医学部医学科卒業。東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科医局に所属。同大学や都立松沢病院、東京警察病院にて精神科急性期、リエゾン業務、緩和ケア業務に従事。現在は労災指定病院である多摩済生病院にて、精神科慢性期、ビジネスパーソンの精神的ケアに従事している。

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