あなたの悩みADHDが原因かも?
大人のADHD特設ページへADHDかもしれないと思ったら ~ 精神科医からのメッセージ ~
- 作成:2022/06/24
近年、発達障害の中でも、ADHDの可能性をご自身で疑う方は増加傾向にあります。また、場合によっては、その可能性を周囲の方から示唆されるケースもあるでしょう。 ADHDの方は、どのようなことで困っているのかや医療機関がお手伝いできることについて、VISION PARTNER メンタルクリニック四谷 院長 尾林 誉史 先生に伺いました。
この記事の目安時間は3分です
ADHDで受診される方の困りごと
ADHDは、不注意、衝動性、多動性によって説明される疾患概念です。それら三つの要素がまんべんなく備わっている方は比較的少なく、成人の場合であれば、不注意や衝動性を中心に据え、それらも個人差を持って表れていることが多いものです。臨床上は、特に不注意の症状にお困りの方が多く、衝動性についてはあまり意識されていないものの、問診の結果、その傾向に気付く方が多い印象があります。
当院を受診される方のお話を伺っていると、多少の差はあれ、以下のような困り事を訴える方が多いように感じられます。
- 昔からものをよくなくすのでそういう性格だと思ってやり過ごしていた。しかし、あまりにも改善の兆しがなく困り果てていた。
- 待ち合わせには必ず遅刻し、予定自体を忘れてしまうこともある。学生時代までは何となく過ごしていたが、社会人になってからは怒られることが増えた。
- 過集中の傾向がある。油断をするとすぐに昼夜逆転の生活パターンになり、朝仕事に行くことが億劫になってきて、このままではまずいと思った。
これらの訴えはそれぞれに内容が異なりますが、全てに共通して言えるポイントは、「他ならぬご本人が困っているため、結果として受診にいたっている」という点です。これは、とても大切なポイントです。
ADHD診断の意味
唐突ですが、ADHDかどうかを判定する、万能の検査があるとします。その検査にご自身の症状や困り事を入力したり、回答したりすると、ADHDかどうかの結果だけを返してくれる夢のような検査です。この検査を使って自分がADHDであると判定された方のうち、どのくらいの方が受診にいたると思いますか? 私は、どんなに多く見積もっても、半数以下ではないかと思います。このようなギャップが生まれるのは、一体なぜでしょうか?
最大の要因は、ADHDという疾患概念が、「当事者の方が、どれくらい困っているのか」という部分までは、残念ながら何も示してはいないためです。あくまでも症状面として、「忘れ物が多い可能性がある」「思い立ったらすぐに行動してしまいがち」などの要素を、淡々と伝えてくれる役割しかありません。
先の夢のような検査が、「困り感」を適切に汲み取ってくれるとしたら、診断意義や受診の必要性は格段に上がるものと思われます。しかし、その方が働いていらっしゃるのか?働いているとして、どのような仕事を引き受けているのか?さらには、どのような役職に就いているのか?主婦でいらっしゃるのか?はたまた、学生さんなのか?など、当事者を取り巻く環境は様々です。そして何よりも、「困る」とは極めて主観的な話ですので、本当に困り果て、ひいては生きにくさを感じているかどうかまで勘案することは、大変に難しいことです。
何が申し上げたいのかと言えば、ADHDの診断は、あくまでも多くの方に見られる「困り事のパターン」のようなものを示しているに過ぎず、受診をするかどうかの絶対的な判断基準ではないということです。大切なことは、「他ならぬご本人が、仕事上や生活上での困難を抱えており、心から改善したいと願っている」ことであり、そのためのお手伝いを行うのが、医療機関であるということです。診断基準をどのくらい満たすかではなく、ご自身が困っている気持ちに従って、周囲や医療機関にサポートを求めることは、勇気のいることかもしれませんが、とても大切なことだと私は思います。
私たちができるサポート
もし、あなたがADHDではないかと疑い、「このままではまずいなあ」「いよいよ困った、どうしたらよいのだろう」そんな思いを抱えているなら、クリニックを始めとする医療機関の受診を考えてみてください。医療機関では、心理的療法や薬物療法の可能性を慎重に検討しながら、共に治療を進めてくれるでしょう。みなさんの治療目的が、疾患概念に振り回されるのではなく、疾患概念を手がかりにして、よりよい人生のビジョンを描けることであってほしいと、願って止みません。
東京大学理学部化学科卒業後、(株)リクルートに入社。退職後、弘前大学医学部医学科に学士編入し、東京都立松沢病院にて臨床初期研修修了後、東京大学医学部附属病院精神神経科に所属。
現在、16社の企業にて産業医およびカウンセリング業務を務める他、メディアでも精力的に発信を行なっている。
【資格】
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/コンサータ登録医師/公認心理師
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