太り過ぎて馬に乗れない武将がいた!?肥満症は命の危険も!
- 作成:2022/07/25
戦場で思うように動けなければ死ぬ確率が高くなります。石田三成の親友であった大谷吉継が眼病のため輿(こし)に乗って関ケ原に出陣したエピソードは有名かもしれません。では、太りすぎていたために輿に乗っていた武将は誰でしょうか? 今回は、輿に乗って軍勢を率いた、太りすぎ武将について歴女医の馬渕まり先生にうかがいました。
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戦国時代は小柄、肥満は少なかった
戦国時代は飽食の現代に比べて、肥満はずっと少なかったと考えられます。また、身長は見た目でわかりますが、体重は若干わかりにくいので、肥満の記録が残っている武将は少ないのです。そんな中で「豊臣秀頼」は身長6尺5寸(197cm)、体重43貫(161kg)。誇張があるかもしれませんが、かなりの巨漢だったといえますね。
そもそも肥満とは、正常に比べて体重や体脂肪が多い状態を言います。体脂肪を正確に測るのは手間がかかるため、一般的に成人の肥満度判定としては、BMI(Body Mass Index)が使われます。
BMI (kg/m2)= 体重kg ÷ (身長m)2
日本肥満学会では、BMI:22を標準体重としており、25を超えると肥満度1、以後BMI:5刻みで肥満度が増えていきます。筋肉量の多い人は体重が重いため、体脂肪が少なくてもBMIが高めに出てしまうといった欠点はありますが、身長と体重がわかれば簡単に計算ができます。ちなみに、標準体重であるBMI:22は、統計学的に一番病気が少ない体重になります。前述の秀頼のBMIを計算すると 41.5で肥満度4に該当します。
戦場で「輿」といえば今川義元、肥満説の真実は?
戦場に輿で赴いた武将といえば、真っ先に浮かぶのは今川義元ではないでしょうか。駿河国・遠江国の戦国大名で、武田・北条と結び三河、尾張の一部まで領土を拡大、内政面でも優れた武将でした。
しかし、歴史マンガでは公家の真似をして顔は白塗り。太りすぎて馬に乗れず、桶狭間では大軍勢に奢って戦場で宴会中に討たれるという残念な人物に描かれることが多い武将です。
信長公記の桶狭間の描写に、激しいにわか雨に紛れて信長軍が今川軍に近づき、信長が「それ、掛かれ、掛かれ」と叫ぶと敵は水を撒くように後ろへどっと崩れ、義元の朱塗りの輿さえ打ち捨てて逃げたとありますので、輿に乗っていたことは間違いありません。しかし、義元が肥満であった記録は残っておらず、本人と確証が持てる肖像画も現存しません。桶狭間に参戦したという旧・今川家の家臣が、義元供養のために長福寺に寄進した木像はむしろ細身な印象で、思慮深い顔立ちをしています。
今川家は清和源氏の流れをくむ名門で、もともと駿河国と遠江国の守護大名でした。義元の母は公家の出身であり、和歌や蹴鞠など貴族文化に親しんでいたのは何の不思議もありません。輿を使っていたのも、馬に乗れないからではなく、輿を使える身分であったから使っていたという見方もあります。海道一の弓取り(東海道一の武士)と称されるほどですので、太って乗馬できなかった義元は後世に作られたイメージではないかと思います。
太りすぎて馬に乗れなかった武将は?
では、太りすぎて馬に乗れず、輿を使っていた武将はいないのでしょうか。実は、いたのです。九州の戦国大名で、一時は島津氏に並ぶ勢力を誇った「龍造寺隆信(りゅうぞうじ たかのぶ)」です。
龍造寺隆信は、享禄2年(1529年)、肥前国に少弐氏(しょうにし)に仕える龍造寺の分家に長男として生まれました。幼い頃は寺に預けられ僧になっていましたが、父と祖父が謀反の疑いで粛清されたのち、仇を取って家を再興した曽祖父の跡を継ぎ還俗しました。龍造寺本家の命令で、主君を追い出した後、跡継ぎのいないまま当主が死去した本家を継ぐため未亡人と結婚、家内の反対を周防、筑前などの守護であった大内義隆の力を借りて抑えつけました。
天正6年(1578年)には肥前を統一し、大友と島津の争いに乗じてさらに領地を拡大。しかしこの頃から、娘婿を謀殺、人質を殺すなど、粛清を行うようになりました。
天正12年(1584年)3月、配下であった有馬晴信が龍造寺氏から離反すると、これを鎮めるべく隆信は大軍を率いて島津・有馬連合軍と戦うことを決めました。龍造寺軍2.5万人対し敵は5千人。当初の予測を覆し、沖田畷の戦い(おきたなわてのたたかい)で大敗北したうえ、討ち死にしてしまったのです。
龍造寺隆信は太りすぎて馬に乗れず、6人で担ぐ輿に乗って戦場に出向いていました。
龍造寺軍は、沼地の一本道に誘い込まれてそこを銃撃され、大混乱に陥ります。大軍の利を活かせぬまま、隆信は島津の軍勢に見つかり、首を取られてしまいました。最期に関しては日ごろから部下につらくあたっていたため、嫌気のさした側近たちが輿を放り捨てて逃げ、そのため逃げ遅れて討ち取られたという説もあります。享年56。
肥満は、糖尿病や脂質異常症・高血圧症・心血管疾患などの生活習慣病をはじめとして、数多くの疾患のもととなり、命に関わることがありますが、性格の悪さも命取りになることもよくわかりましたね。適正体重を保ち、健康に気を配ることも大切ですが、周りの人に気を配ることも忘れてはいけません。
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