家康に疎まれた次男、結城秀康が命を落とした梅毒が令和の世にも急増
- 作成:2022/11/15
2022年の梅毒は過去最悪のペースで、累積報告数が第42週(10月17~23日)までに初めて1万人を超えました。過去の記事で加藤清正と梅毒を取り上げましたが、梅毒にかかる著名な戦国武将は多かったようです。今回は同じく梅毒を患った「結城秀康」について、歴女医の馬渕まり先生が解説します。
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家康に疎まれ不遇な幼少期を送るも、勇猛果敢な武将となった秀康
結城秀康は天正2年(1574年)2月8日、徳川家康の次男として生まれました。母の於万の方(おまんのかた)は家康の正室・築山殿の奥女中でした。秀康は家康に好かれていなかったため、3歳まで対面を許されませんでした。俗説になりますが秀康が双子で生まれたため、忌み嫌っていたという話もあります。
秀康が5歳の時、兄・松平信康が信長に自刃させられると、秀康は家康の一番年上の男児となり家を継ぐ可能性もありましたが、天正12年(1584年)、小牧・長久手の戦いで豊臣と徳川が和議を結ぶと、その条件として秀吉のもとへ養子に出されてしまいます。実質人質に近い立場であったものの、九州征伐や小田原攻め、朝鮮出兵で活躍し、秀吉に可愛がられていたようです。
しかし、秀吉に実子が誕生すると、今度は結城家へ養子に出されましたが、結局、徳川の跡継ぎとはなれませんでした。豊臣に恩顧を感じていたものの、関ケ原の戦いでは前哨戦の会津征伐に参加し、家康の命令で宇都宮にとどまり、会津勢の西上を阻止したため、功績を認められ越前北庄67万石の大名となっています。
そんな秀康ですが、これまた不幸にも若くして梅毒を患い、鼻が欠けていました。梅毒3期の症状です。梅毒感染によって皮膚にできるゴムのようなしこり(ゴム腫)によって周りの細胞が破壊されるのですが、鼻の骨は破壊されやすく、治療方法がない時代には鼻が欠ける人も多かった模様です。
それに絡んだ可哀そうな話もあります。家康の招きに応じて対面する際、「秀康が欠けた鼻を隠すため軟膏を貼っている」と聞いた家康が不機嫌になり、「病気で身体が欠損するのは自然であり恥ずべきことではない。表面だけ取り繕うのは公家や町人のやることで、武士のすることではない」と追い返してしまったようです。
慶長8年(1603年)頃から病床に沈み、晩年は相当衰弱していた秀康。伏見城の留守居役、御所造営の総奉行という大役を任されるも、病いで職務をまっとうできなくなったため、慶長12年(1607年)3月1日に越前へ帰国し、そのまま閏(うるう)4月8日に死去しました。享年34。
『当代記』によると死因は「日来唐瘡相煩(とうがさぴんいん)、其上虚成」とあり、梅毒または梅毒による衰弱死と考えられます。
戦国時代から江戸時代にかけて患者が多かった梅毒とは
梅毒は1492年コロンブスにより新大陸から欧州に持ち込まれた説が有力で、戦国時代から江戸時代にかけていたるところに患者がいました。豊臣秀吉の参謀として知られる黒田官兵衛や前田利家の長男、前田利長も梅毒だったようです。
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌に感染して起こる病気です。主な感染経路は性行為ですが、血液や体液に触れることで、傷口や粘膜から感染するケースもあります。
治療を行わない場合、症状が出たり消えたりを繰り返し、慢性的に進行していきます。感染後3週間で感染部位のしこりや膿、リンパ節の腫れが起こります(1期)。これは数週間で自然治癒するため梅毒と気づかないこともあります。
その後3カ月程度おいて全身に広がる発疹(バラ疹)などの2期が出たあとは、数年から数十年の潜伏期を経て全身症状が出現します(3期、4期)。
1940年代以降はペニシリンによる治療法が確立したため、日本において梅毒で亡くなる方はほぼいなくなりました。
しかし、妊娠中に梅毒にかかっていると胎児に感染し、先天梅毒を起こすなど、3期以降の梅毒に進むと心臓や神経にダメージを残す場合もあります。
梅毒は、血液中の梅毒トレポネーマに対する抗体検査で簡単に調べることができます。ただし、抗体ができるまで3週間程度かかりますので、感染が疑われる行為があった場合は、適切な時期に検査を受けることが大切です。保健所で無料検査を行っている自治体も多くありますので、心配な時はぜひ検査を受けてください。
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