関ヶ原の裏切り者、小早川秀秋の死因は祟りか酒か…
- 作成:2022/12/16
小早川秀秋と聞くと、関ヶ原で西軍から東軍に寝返り西軍敗北の一因となった武将のイメージがありますね。名字の小早川から「毛利の親戚?」と思われるかもしれませんが、実は豊臣秀吉の姻族にあたります。21歳の若さで没したため、関ヶ原で裏切った相手の怨念で呪い殺されたという噂もありますが、その真相について、歴女医の馬渕まり先生にうかがいました。
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関ヶ原の戦いで寝返った秀秋は大谷吉継に祟られた!?
小早川秀秋は、天正10年(1582年)、木下家定の五男として近江国の長浜で生まれました。父の木下家定は秀吉の妻、ねねの兄ですので、秀秋は秀吉の甥にあたります。
3歳で秀吉の養子になった秀秋は、ねねの元で育てられました。7歳で元服と同時に丹波亀山10万石を与えられ、翌々年には権中納言に叙せられるなど、秀吉の後継者の一人と目されていました。
しかし、文禄2年(1593年)、秀吉に実子の秀頼が生まれると同年に、小早川家に養子に出されてしまいます。しかも、翌年、豊臣秀次の事件に連座し亀山の領地は没収。幸い、養父となった小早川隆景が居し、所領の筑前30万石を秀秋に譲りました。
その後、秀吉の命で慶長の役に従軍しますが、帰国後に越前北ノ庄15万石への減封転封命令が下されるなど秀吉に冷遇されました。秀吉の死後は筑前・筑後に復領し石高も59万石と大幅に増加となりましたが、思うところがあったのでしょう。関ヶ原では徳川家康と内通し、西軍のはずが松尾山を下り、西軍の大谷吉継の陣を攻撃しました。結果、西軍は敗れ、吉継は彼の陣に向かって「人面獣心なり。三年の間に祟りをなさん」と言い残し切腹をしたという伝説があります。
関ヶ原の戦い後、秀秋は旧宇喜多領の岡山55万石領主となりましたが、そのわずか2年後に21歳の若さで亡くなっています。大谷吉継の祟りで死んだという話もありますが…。
祟りは祟りでも大量飲酒が祟って早死にした!
当時の名医、曲直瀬玄朔(まなせ・げんさく)が記した『医学天正記』には、慶長6年(1601年)7月に、酒疸による黄疸の症状が激しくなり治療をしたことが記されています。
『黄疸』の項目には、「大量の飲酒による黄疸、みぞおちあたりのしこり、飲食ができず喉が渇くとあります。『黄疸』のほか、『内傷付飲食(飲食の不摂生による内臓の疾患)』『消渇(糖尿病)』の項目に名前が上がり、食欲不振、酒を飲むと吐く、舌が黒く尿が赤いなどと書かれています。
どうやらアルコールが原因のようですね。黄疸などから肝疾患が疑われます。おそらくアルコール性肝硬変だったのではないでしょうか。
秀吉の後継者になる可能性のあった秀秋は、彼に取り入ろうとする諸大名から接待攻勢を受け、元服をした7歳から飲酒していたようです。
小早川家の養子となった際は12歳。後継者候補から外れたため大名による接待は減ったものの酒はやめられず、毎夜の酒盛りは継続していたようです。
19歳でアルコール性肝障害、21歳で死亡は若い気もしますが、アルコール性肝障害は個人差があるものの、純エタノール換算 60 g/日(日本酒 3合/日)以上の飲酒を 5 年以上継続することによって発症します。7歳から飲酒をはじめた秀秋は10年以上の飲酒歴があります。
大量のお酒を長期にわたって飲み続けると、アルコールなしではいられない状態になります。それがアルコール依存症です。その影響が精神面にも身体面にも表れ、生活に支障をきたすようになります。アルコールが抜けるとイライラや不眠、頭痛や手の震えなど離脱症状が起こり、それを抑えるためにまた飲んでしまうという状態に陥ります。
飲酒をはじめた年齢が低いほど、アルコール依存症になりやすいという研究結果があり、秀秋が10代半ばでアルコール依存症だったこともうなずけますね。秀吉に冷遇されたことや、西軍を裏切ったことがストレスになり飲酒に拍車がかかったのかもしれません。
現在、日本国内のアルコール依存症の患者数は80万人、予備軍は約440万人といわれています。アルコール依存症は早期に治療をはじめれば、治療効果が上がりやすい病気です。気になる方は秀秋のようになる前に医師にご相談ください。
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