注射が苦手な長男がワクチン接種!パニックを防ぐ「4つの準備」

  • 作成:2023/02/18

こんにちは。外科医ちっちです。うちの3人の子ども(13、11、7歳)は、自閉スペクトラム症です。一緒に生活するうえで、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることもあります。この連載では、発達障害のわが子の日常や、子育ての様子を徒然なるままに綴ります。世の中にはこんな「変わっている子」、「変わっている人」もいることを、いろいろな方に広く知ってもらい、当事者や周囲の人が生きやすくなることを目指しています。今回は、新型コロナワクチンの接種に向けた事前準備についてです。

外科医ちっち 監修
 
外科医ちっち 先生

この記事の目安時間は3分です

理屈で納得する長女、痛みに鈍感な次男

小児のコロナのワクチン接種について、子どもたちが学校の友人から聞いた範囲では、あまり進んでいないようです。市の広報によると、わが市の小児のコロナワクチンの接種率は15%程度だそうです。色々な考えはあるとは思いますが、私個人としては、コロナワクチンはデメリットよりメリットが大きいと考えています。

長女いっちと、次男さんちは、予防接種に関して大きな問題はありません。
まず、いっちには漫画『はたらく細胞』(清水茜、講談社)と、さーたり先生の『感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた』(さーたり、中山哲夫、KADOKAWA)を読ませてみました。そうすると、冷静に「予防接種=免疫をつけるために必要なもの」と解釈してくれていて、抵抗はありません。

うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−注射が苦手な長男がワクチン接種!パニックを防ぐ「4つの準備」

さんちの場合は 「生まれつき痛みに鈍感」で解決!
まだ字が読めないので、感染症の概略を私と妻が説明。実際にワクチンを打つ時も、緊張・不安はありつつ、暴れはしないので、涙ぐむもののスムーズに終了します。むしろ、成長して子どもらしい反応をしています。

実はさんちは、長い間、予防接種で泣かない子どもでした。涙が出るようになったのは5歳の時のMRワクチンからです。彼の中では「コワイ」という気持ちはあるようですが、痛みを感じにくく、「イタイ」という感覚は鈍いようです。不思議です。こういう人もいるのですね。

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注射で大暴れしていた長男、どうするか…?

問題は、長男にっち。痛み・不安が強いのです。
赤ちゃんの頃は押さえつけてこなしました。しかし、2歳ごろから定期接種で「バカヤロー」と怒り出し、医師を咄嗟に蹴ってしまうなど、大暴れします。小学生になると定期接種が減るので、コロナワクチンは久しぶりの注射です(インフルエンザの予防接種は大変すぎるので諦めています)。

高学年になって成長はしたはず…と思うものの、久しぶりの注射でパニックになってしまえば体が大きい分、周囲の被害も大きくなるという不安もありました。

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それでも、子どもは集団生活でコロナを感染させ合う可能性が高そうです。また、報告される限りワクチンの接種量が少ない分、副反応は成人より少ないこともわかっています。検討の結果、長男にっちにもコロナワクチンを接種することにしました。

注射が超苦手な子どもに対する4つの準備

少しでもワクチンをスムーズに接種するために、わが家では以下の4つを心掛けています。

1)落ち着いているときにメリットを説明
2)ワクチン後の要望を聞く(ご褒美を考えさせる)
3)コロナワクチンを打つことは決定であることを曲げない
4)接種直前(前日)に予約を取る

1)落ち着いているときにメリットを説明
学校から帰ったあと、休日、食後のおなかがいっぱいの時、は心に余裕があります。気持ちが落ち着いている時に、なぜ打つのか、メリット・デメリットを説明します。事実だけを伝えるのがポイントです。

2)ワクチン後の要望を聞く
ごほうび作戦に近いもので、賛否があるかと思います。
普段、私たちは街はずれに住んでいます。今回は、小児の集団接種で街まで行くことになります。新型コロナ流行に対応して、街の大きな本屋や電機屋、駄菓子屋さんなどにはあまり行っていなかったので、街に行ったらやりたいことを子どもに考えてもらいました。
考えているときの子どもたちはワクワクしていました。
そして、子どもたちから出たやりたいことは、

「駄菓子屋さんで爆買い」

「ねえねえ、いくらまでいいの? 500円? 500円もあったらあの小さいカゴに山のように買えるかなぁ」
爆買いという、思いのままに買い物をするということに憧れていた長男にっち。
駄菓子屋さんでの爆買いOKに目をキラキラさせていました。

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3)新型コロナワクチンを打つことは決定であることを曲げない
「コロナワクチンを打たない選択をする子どもが多い」と、にっちは友人から聞いていました。
みんながやらないなら、自分もやらないでいいはず。かかっても死ぬわけないから。もしコロナになっても、熱とか咳とか耐えるから……などなど。

そんな理屈を一生懸命しゃべってなんとか逃げようとしていたので、「ワクチンが痛くて怖くて嫌な気持ちはわかるよ。それは当たり前の気持ちだね。ただ…」
嫌な気持ちを受け止めてから、目を見て真剣に一度だけ言いました。
「コロナワクチンはメリットのほうが大きいので、にっちが嫌がっても、にっちの命が大事だからやります」
この会話で、にっちは観念したようでした。

4)接種直前(前日)に予約を取る
集団接種はわりと直前でも空きがあります。ですから、接種券が届いたその週末に打てたらいいなと私と妻は考えました。
まずは、「接種券が届いたよ」と届いた日に子どもたちに報告。
2、3日かけて説明。金曜日の夕方、満腹の状態の子どもたちの目の前で、翌土曜日午前の集団接種の予約をしました。
嫌な予定は、早く終わらせるに限ります。
これが1週間後、2週間後だと、不穏な気持ちを持ち続けることになるので、日常生活にも支障が出るでしょう。集団接種が、直前でも予約が取りやすくて、我々にはありがたかったです。

注射が苦手な長男とのワクチン接種。事前の準備から大変でした。
もう体も大きいので、暴れられたら本人も医療者もお互いに危険です。なるべく、落ち着いた状態で受けるにはどうしたらいいかを考えつつ、必要性も本人の理解度に合わせて説明し、大規模接種会場に向かうことになりました。

実際の接種については次回に続きます。

外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti

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