医師に聞く「体に良い習慣」~生活習慣病でも、健康に長生きするために
- 作成:2023/04/14
高血圧症をはじめとする生活習慣病では、運動や食事などの生活習慣の改善に取り組むことが、疾患のコントロールにつながります。今回は、老年医学の専門家である山田悠史先生に、「食事がマンネリ化してしまって……」「お酒を飲んでもいい?」といった日常生活のお悩みについて相談に乗っていただきます。信頼できるかかりつけ医を見つけるために、医師との上手なコミュニケーションの取り方のコツについてもお聞きします。
この記事の目安時間は3分です
さまざまな病気の予防につながる運動、週1回でも続けることで効果がある
山田先生のご著書『健康の大疑問』には、「1日1万歩程度のウォーキングが健康を守ることにつながる可能性がある」と書かれていましたが、高血圧症の人にも効果がありますか?
運動はさまざまな病気のリスクを下げる効果が期待できますから、どんどんやってください。メリットを考えると、やらない手はないと思います。考えられるデメリットはケガくらいです。プロフェッショナルスポーツレベルになると、体への負荷が過剰になる可能性もありますが、一般の方が運動を楽しむ分には何の問題もないでしょう。
運動は「0よりも1」で、やらないよりもやったほうがいいのはもちろん、大事なのは続けること。1日体を動かすだけでは、ほとんど影響がありません。筋トレでもいいですし、テニスでもゴルフでも、何でもいいので定期的に続けることを意識しましょう。
毎日やらないと意味がないと思われる方もいるかもしれませんが、週に1回でも、何もやらない人に比べると効果があると示唆した研究もあります。休日に1時間だけでも、それを続けていれば、数年先の健康につながるでしょう。
先生は何か運動をしていますか?
毎日ジムで走っています。もう習慣になってしまっているので、1日でも行かないと気持ちが悪いくらいなんです。毎日行くと決めてしまえば、「今日は行こうかな、どうしようかな」と悩むことがなくなります。歯磨きと一緒で、習慣にすればやらない方が気持ち悪くなり毎日でも無理なく自然と続けられますよ。
サウナにも運動のような効果はありますか?
サウナが体にどんな影響を与えているのかは、ほとんど明らかにされていません。特に運動との比較ということになるとなおさらです。だから、「サウナに入っているから健康だ」という考え方は、間違っている可能性があります。ただ、血圧の高い方がサウナに入ってはダメというわけではないので、水分摂取に気をつけながら楽しんでいただけたらと思います。
塩分を抑えようと気をつけているのですが、食事がマンネリ化してしまって……。
食事にお困りでしたら、栄養士さんに相談してみるのも良いでしょう。医師に食事の相談はしづらいかもしれませんが、診察時に話していただければ、栄養士さんにつなぐこともできます。アメリカの私の病院では、患者さんからの要望があれば栄養士さんとセッションの時間を設定して、食事のアドバイスをしてもらうようにしています。塩の代わりに香辛料を使うなど、いろいろな工夫によってマンネリを脱出できるかもしれません。
日本のクリニックでも、近隣の病院の栄養相談を紹介してくれるなど、地域で連携をとっているところもありますので、まずは気軽に相談を。
血圧が高い人はお酒をやめたほうがいいですか?
健康上のメリット、デメリットで考えると、飲酒はデメリットのほうが大きい可能性があります。時々「お酒を飲むとよく眠れる」と言って習慣的に飲まれる方に出会いますが、よく知られた肝臓の病気のリスクだけでなく、実は飲む量に比例してがんのリスクが高まるなど、長期的に見るとさまざまなデメリットもあります。もし、睡眠のためにお酒を飲んでいるのであれば、それは別の方法に変えることができます。
ただ、「寝る前の一杯が幸せの時間だ」という人は、それが人生の楽しみですから、「絶対に飲まないほうがいい」とも言えません。人生は健康のためだけにあるわけではないですからね。人との付き合いや、お酒を飲むことを楽しみたいのであれば、それも一つの選択かもしれませんが、過剰な飲酒には注意です。
生活習慣病はチームで治療を
信頼できるかかりつけ医を見つけてほしい
治療についてのこと以外だと、「こんなことを先生に聞いてもいいのかな」と悩んでしまうことも。医師にどこまで相談してよいのか分かりません。
すでに高血圧症の方で、何か心配な症状が出たときには、医師に相談してください。「これは相談してもいいのかな」と悩む必要はありません。悩んだらとりあえず聞いてみる。病院に行かなくても、電話で聞くこともできます。生活習慣病の治療は、患者さんと医師、看護師、薬剤師のチームプレーなので、何かあればチームのメンバーに相談しましょう。
一方で、世間で広まる健康情報については、「迷ったら立ち止まる」というスタンスが大切です。間違った情報が少なくないので、正しい情報かどうかが十分に確認できるまでは、アクションを起こさないようにしましょう。その使い分けが大事です。
そのためにもかかりつけ医を見つけるのが大事ですね。
その通りです。次々とクリニックを変えてしまう人もいますが、医師との関係を築くためには長く診てもらうことも大切です。ただ、患者さんと医師の関係にも相性がありますから、合わないと思えば、無理して通い続ける必要はありません。
そのときに、クリニックで処方された薬を自分の判断でやめてしまうのは、リスクがあるので注意してください。薬を処方するのには必ず理由があるので、まずは医師に一度相談して、薬を中止できるのかを聞いてから判断するようにしましょう。繰り返しになりますが、医療はチームプレーです。
高血圧や糖尿病になっても健康でい続けるためは、信頼できるかかりつけ医の存在が重要です。普段からしっかりとコミュニケーションをとり、気軽に相談できるようなかかりつけ医を見つけられるとよいと思います。
…………………………
全4回にわたって、医療情報の正しい見極め方や、高血圧症に関するさまざまな疑問について、山田先生にお聞きしてきました。先生の著書、『最高の老後』(講談社)、『健康の大疑問』(マガジンハウス新書)にも詳しい情報が書かれていますので、ぜひ参考にしてみてください。
米国老年医学・内科専門医
慶應義塾大学医学部を卒業後、東京医科歯科大学医学部附属病院や川崎市立川崎病院で研修。米国NYのマウントサイナイ・ベスイスラエル病院の内科レジデント、同大学老年医学フェローを経て、現職。その他に、一般社団法人コロワくんサポーターズ代表理事、めどはぶ代表、フジテレビライブニュースαコメンテーターなど。著書に『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(講談社)、『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
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