がまんせず、無理をせず、相談を‐産婦人科医からのメッセージ

  • 作成:2024/09/12

「月経(生理)痛はがまんするもの」「月経時に痛みがあるのは当たり前」と思っていませんか?それは思い込みで、痛みをやわらげるためのさまざまな選択肢があります。それはわかっていても、「こんなことで産婦人科(婦人科)を受診してもよいのだろうか」「内診はこわい」と思って受診をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。本記事では、そんな月経に伴う諸症状に悩む方に、産婦人科医である柴田綾子先生からのメッセージをご紹介します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は6分です

がまんせず、無理をせず、相談を‐産婦人科医からのメッセージ

月経(生理)に関する勘違いや誤解は多い

「月経(生理)痛はがまんするもの」「月経に痛みがあるのは当たり前」という思い込みは多いのですが、実は間違いです。多くの月経痛や月経中の症状は、低用量ピル 、黄体ホルモン製剤、女性ホルモン剤 、漢方などで軽くすることができます。女性は一生のうちで月経を300~500回経験するといわれています。1回1回は「軽い症状だからがまんしよう」と思っていても、それがこれから100~200回も続くとしたら、どうでしょうか。日本の研究でも月経痛がひどい女性の方が生活の質が低いことがわかっています。ご自身に合うお薬や治療法を見つけることができれば、その後の月経が軽くなり、生活や仕事、勉強、趣味などにもっと力が発揮できるかもしれません。

月経困難症の可能性がある症状

月経中の症状には個人差がありますが、月経中におなかや腰の痛みが強くなり、市販の鎮痛薬(痛み止め)で効果が不十分な場合は月経困難症の可能性があります。そのほかに、月経中に、頭痛、吐き気、イライラや気分の落ち込みが強いときも月経困難症の可能性があります。

これらの症状をがまんしていると、部活や勉強、仕事に悪影響が出たり、子宮内膜症や子宮筋腫が隠れていて、将来不妊の原因になってしまうことがあります。

「これくらいの痛みなら受診しなくてもよいのだろうか」とがまんせず、ぜひ一度産婦人科(婦人科)へご相談ください。

受診するか迷うときはチェックリストも参考にしてください。

自分でできる対処法

実は、月経痛などの月経中の症状は、睡眠不足(7時間未満)、夜ふかし、ストレス、やせすぎ(BMI<18.5)などでも悪化することがわかっています。月経中 は8時間以上の睡眠をとり、ストレスの多いイベントを避けたり、リラクゼーションやアロマ、お風呂などでくつろいだりすることがおすすめです(月経中であっても、本人の体調が大丈夫ならお風呂に入るのは問題ありません)。

多くの女性が月経痛で困っている

内閣府の調査では、20代女性の64.2%、30代女性の51.8%が月経痛(腰痛、腹痛、頭痛等)があると回答しています。

がまんせず、無理をせず、相談を‐産婦人科医からのメッセージ

出典:男女共同参画白書 平成30年版

日本の中学生・高校生へのアンケート調査でも、女子生徒の71%が勉強や運動に影響を与えている症状として「月経痛」を挙げています。

月経痛で困っている女性は多いのです。

月経中の痛みや症状は、「ただの月経痛」として軽く考えられがちですが、実際には女性の生活の質や人生に大きな影響を与える問題として考えていく必要があります。

産婦人科(婦人科)の受診に不安がある方へ

「こんなことで産婦人科(婦人科)を受診してもよいのだろうか」「内診はこわい」と思う女性も多いと思います。月経に関する症状で困っているときは、産婦人科(婦人科)にぜひ受診してください。月経中でも診察はできますので受診は可能です。

産婦人科(婦人科)は「お産などを扱う産科」と「子宮や卵巣の病気を扱う婦人科」に分かれているところもあります(産婦人科として両方を扱っているところもあります)。

まずは、ホームページなどを確認し、月経痛(月経困難症)や低用量ピルなどを扱っているか、確認するのがおすすめです。また、内診を希望しない場合は、予約するときや問診票に「今回は月経痛の相談を希望。内診は希望しません」など、あらかじめ記入しておくこともできます。

月経痛など、月経中の症状の多くはやわらげることができます。
がまんせず、無理をせず、産婦人科(婦人科)にぜひ相談してください。

参考資料
1.広島大学. 月経痛が重度な女性ほど生活の質が低いことが判明 ~日本人女性における月経痛の重症度別での生活の質の比較検討〜2023年3月16日
2.筑波大学. 月経に伴う精神的・身体的症状に関連する要因を分析.2023.01.11
3.内閣府.男女共同参画白書 平成30年版
4.NPO法人 日本子宮内膜症啓発会議.

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

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