産婦人科医からのメッセージ
- 作成:2025/01/08
「更年期障害」という名前や、どんな症状が出るかについて、なんとなく知っている方は多いのではないでしょうか。しかし、いざ自分にそれらしい症状が出ても、更年期のせいなのかがわからず、忙しさもあって、病院にいかずがまんしている、という声はよく聞かれます。本記事では、更年期に現れる症状の対処に悩まれる方に向けた、産婦人科医である柴田綾子先生からのメッセージをご紹介します。
この記事の目安時間は6分です
更年期障害は、恥ずかしいことではない
「更年期症状かもしれない、そうなのかわからない」
「更年期症状かもしれないけど、我慢できるからそのままにしている」
「更年期症状かもしれないが、どうしたらいいか分からない」
このような思いから、突然現れた体や心の不調を、原因がわからないままがまんしている方はいませんか?
更年期障害は、多くの女性が経験する症状であり、恥ずかしいことではありません。もし、上記のような思いを抱えている方がいらっしゃったら、ぜひ産婦人科へご相談ください。女性の更年期は約10年間あり、更年期障害を我慢することで生活や人間関係、仕事への悪影響が長期間続くことになります。更年期障害の治療をおこなうことで、症状が軽くなれば、その後の生活がより快適に過ごせるようになります。
更年期障害の症状は個人差が非常に大きい
一般的に更年期とは、45歳から55歳くらいの間をさします。女性は、この時期になると、卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することによって、月経が不規則になってきます。
【更年期とは】
閉経前5年間と閉経後5年間をさします。閉経とは「1年以上月経が来ていない状態」のことで、”月経が1年間来なくなってから“1年前の最後の月経のときを「閉経」と診断します。閉経の年齢は一人一人異なります。そのため、更年期の年齢も一人一人違います。閉経の平均年齢は約50歳のため、一般的な更年期の年齢は45~55歳頃です。
そして、この時期に生じる不快な症状を「更年期障害」と呼びます。更年期障害の症状は、個人差が非常に大きく、軽いものから日常生活に支障をきたすほどの重いものまでさまざまです。更年期の症状は、心や体のさまざまな部分におこるため、自分の症状が更年期によるものと気づかないまま体や心の不調に悩まされ続け、中にはそのせいで対人関係が悪化したり、仕事に支障を来している方も見かけます。
更年期障害について知っておくことで、うまくこの時期を乗り越えやすくなります。下のような症状がある方は更年期障害の可能性があります。
【更年期障害の主な症状】
ほてりや発汗(ホットフラッシュ)
突然顔や体が熱くなったり赤くなったりして、汗が噴き出す「ほてり」。これにともなって、動悸などを感じる方もいます。
体のだるさや疲労感
特に理由もなく体がだるい、疲れやすいと感じることがあります。エストロゲンの低下による更年期障害だけでなく、貧血や甲状腺機能低下症など別の病気が隠れていることもあります。
関節痛や筋肉痛
更年期に関節や筋肉が痛むことがあります。肩こり、腰の痛み、指の関節の痛みなどが起こることがあります。これはエストロゲンが関節や筋肉に影響を与えていることが原因とされています。
頭痛・めまい
頭重感(頭が重い感じ)や軽いめまいを感じることがあります。エストロゲンが低下することで自律神経症状が出ることが原因の一つとされています。
不眠
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めてしまうなどの睡眠障害も、更年期によく見られる問題です。ほてりやホットフラッシュが夜に起こり、
不眠の原因になっていることもあります。
精神的な変化
イライラや気分の落ち込み、不安感、集中力の低下など、精神的な変化も多くの女性が経験します。これらの症状は、ホルモンバランスの変化だけでなく、家庭や仕事のストレスが影響していることもあります。
デリケートゾーンの乾燥
デリケートゾーン(腟や会陰など)の皮膚が乾燥しチクチクしたり、痛みを感じることがあります。性行為痛や頻尿などの症状がでて、生活に支障をきたしたり、萎縮性腟炎といって性器出血が起こることもあります。
自分に合う治療を見つけ、より快適な生活を
40代~50代になって急に心や体の不調が出てきて戸惑いを感じる方も多いと思います。更年期障害は、女性ホルモンが低下することで誰にでも起きる病気です。薬局などの市販薬やセルフケアなどでの対応もありますが、産婦人科を受診することで治療の選択肢が広がり、ホルモン補充療法などご自身にあった治療法をみつけることで、より快適にこの時期を乗り越えることができます。更年期の症状で困っているときは、産婦人科に相談してください。
2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。
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