更年期障害だと思っていたら、別の病気のことも!40代以降の不調は医師に相談を
- 作成:2025/01/08
更年期症状はつらいけれど、がまんしようと思えばがまんできる…。そう感じている人も多いのではないでしょうか。しかし、エストロゲンの低下によってリスクが高まる病気や、更年期症状と似ていてまぎらわしい病気もあります。本記事では、更年期にかかりやすい病気や、更年期症状とまぎらわしい病気について紹介します。
この記事の目安時間は6分です
「病院に行くほどでもない」「がまんできる」という声が多いものの…
厚生労働省の意識調査で、更年期症状のある女性が医療機関を受診するまでの期間を尋ねたところ、「すぐに受診した(1か月未満)」「1か月程度してから」「3か月程度してから」を合わせた割合は、40 歳代と50 歳代ともに約10%でした。一方で、「受診していない」割合は、40 歳代と50 歳代ともに約80%でした(回答者数2,409 人)1)。
また、症状があっても受診しない理由については「医療機関に行くほどのことではないと思うから」の割合が最も高く、40 歳代と50 歳代ともに約70%。次に多いのは「がまんできるから」という回答で、40 歳代と50 歳代ともに約20%でした(回答者数1,949 人、複数回答)1)。症状がありながらも、受診をためらったり、我慢したりしている人が多いことがわかります。
しかし、更年期は女性の体が大きく変化するライフステージです。エストロゲンが低下することによって、更年期障害以外にもさまざまな病気にかかりやすくなります。
以下は、更年期に注意すべき疾患です。
- 甲状腺機能異常症
更年期は甲状腺機能異常症(亢進症/低下症)になりやすい年代です。閉経後の女性の約2.7%が治療の必要な甲状腺疾患があると考えられています(2)。甲状腺機能異常症では、月経異常や血管運動神経症状(のぼせ、ほてり、ホットフラッシュなど)、抑うつ傾向など、更年期症状と似た症状が出ることがあります。 - 動脈硬化
エストロゲンには血管を広げたり、コレステロールの代謝を促したりするはたらきがあります。更年期に入ってエストロゲンが低下すると、血液中のコレステロール値が上がり、動脈硬化のリスクが高まります。動脈硬化になると心筋梗塞や狭心症、脳血管障害などなどが起こりやすくなるといわれています。 - 骨粗しょう症
健康な骨は、破骨細胞によって吸収され、骨芽細胞によって新しく作られるという代謝を繰り返しています。しかし、エストロゲンが低下すると破骨細胞による吸収のスピードが速くなり、新しい骨の形成が追い付かなくなっていきます。その結果、骨密度が低下し、骨粗しょう症のリスクが高くなります。若い頃に比べて3cm以上身長が縮んでいる場合は、一度検査を受けてみるといいでしょう(3)。 - 子宮体がん
エストロゲンの影響を受けて発症する子宮筋腫や子宮内膜症は、閉経するとおさまることが多いです。一方、代わりに増えるのが、子宮体がんです。子宮体がんに多い自覚症状は出血です。更年期の不正出血と見分けが難しいので注意が必要です。 - 乳がん
乳がんは、エストロゲンにさらされることによってリスクが高まります。閉経後は卵巣から分泌されるエストロゲンの量は低下しますが、肥満の場合は脂肪細胞でエストロゲンが作られ、乳がんのリスクが高まると考えられています。
「そのうち治る」の自己判断は禁物
ほかにも、更年期症状と似ていてまぎらわしい病気があります。例えば、めまいはメニエール病、ホットフラッシュはカルチノイド(腫瘍)の可能性もあります。体の不調を感じたときは、「更年期のせい」「そのうち治るだろう」と自己判断したりがまんしたりせず、一度、医師に相談してみることをおすすめします。
参考文献
1)「更年期症状・障害に関する意識調査」 基本集計結果(2022 年7月 26 日)
2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/24/4/24_885/_pdf
3)一般社団法人 内分泌学会 閉経後骨粗鬆症
2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。
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