もしかして更年期障害?~更年期の気になる症状と対処法~
- 作成:2022/08/09
「最近疲れやすい、顔が赤くなりやすい、汗が出てくる…」 「こんな症状で産婦人科を受診してもいいの?」 と思っている女性は多いかもしれません。 更年期障害は個人差が大きく、ほとんど症状が無い方から、仕事や生活に大きな悪影響が出ている方まで様々であり、重症な方では仕事ができなくなって退職される方もいます。 日本において、女性が更年期障害を理由に離職する数は、少なく見積もっても20万人、その経済損失は2000~4000億円もあると推定されています(1)。 このように、更年期障害は多くの女性が困っている病気なのです。 今回は、淀川キリスト教病院産婦人科医の柴田綾子先生が、更年期の気になる症状と対処法について解説します。
この記事の目安時間は3分です
1.更年期障害の症状
更年期障害は、一般的には40代後半から50代に起こり、女性ホルモン(エストロゲン)の低下が原因で起こる「心と体の症状」です(*注釈)。
更年期障害と聞くと「ホットフラッシュ」「汗が出る」「イライラ」などを思い浮かべる方も多いと思います。実は更年期障害の症状には他にもたくさんあり、「腟の違和感」「夜寝られない」「肩こり」「関節の痛み」「気分の落ち込み」なども更年期障害のことがあります。
更年期障害の症状には以下のようなものがあります。
1 ホットフラッシュ
顔や上半身のほてり、汗をかきやすい、のぼせ、顔が赤くなる
2 全身の症状
疲れやすい、めまい、動悸、頭痛、肩こり、腰痛、関節痛、冷え
3 精神的な症状
眠れない、イライラする、不安が強くなる、気分が落ち込む
4 デリケートゾーンの症状
腟や陰部の乾燥、違和感、チクチクした感じ、性交痛、頻尿
このような症状で困っているときは、更年期障害の可能性があります。ぜひ一度産婦人科へご相談ください。
*注釈:医学的な「更年期障害」とは、閉経の前後5年(合計10年)の間に起こるエストロゲンの低下による症状で、日常生活に支障があるものを指します。
2.更年期障害の対処法
更年期障害かも?と思ったとき、自分でできる対処法がいくつかありますのでご紹介します。
- 服や部屋の温度を調整する
更年期障害の場合、急に体が熱くなったり、寒く感じたりすることがあります。体温調節がしやすいように重ね着をすることや、ホットフラッシュで寝苦しくならないように寝室を涼しく温度設定をするのがお勧めです。 - 大豆製品やサプリメントをとる
大豆に含まれるイソフラボンがホットフラッシュに効果があると報告されています。日頃から大豆製品(納豆・豆腐など)を多めに食べたり、大豆イソフラボンが含まれるサプリメントを試したりしましょう。 - 漢方
個人の相性にもよりますが心身のさまざまな症状に効果が期待できます。更年期障害では、当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸・女神散・温清飲・温経湯などの漢方が使われることが多いです。薬局での購入や、産婦人科・内科・漢方薬局で相談してみてください。 - デリケートゾーンのケア
更年期のデリケートゾーンの症状はGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)と呼ばれ、多くの女性が困っています。まずは保湿として、使っている化粧水や乳液を陰部の皮膚に塗ることや、デリケートゾーン専用の保湿剤でケアしてみてください。症状が改善しないときは、産婦人科でエストロゲンの腟剤を処方してもらい、ご自身で挿入することで治療ができます。重症の方は自費での治療となりますが、腟の粘膜をレーザーで焼き、新しい細胞の新生を促す治療も行うことが可能です。
3.産婦人科を受診するタイミング・検査・治療
- 受診するタイミング
更年期の症状がひどく「ご自身が困っているもの」は更年期障害である可能性が高いです。
生活や仕事に影響が出て困っているなら、ぜひ一度産婦人科を受診してご相談ください。 - 検査について
更年期障害の診断では、血液検査の女性ホルモンの採血は必須ではありません。
更年期の女性ホルモンは「大きくゆらいでいる」ため、採血の値だけでは更年期障害の診断はできないとされています。女性ホルモンの採血をするかどうかは、医師と相談して決めてください。 - 治療
症状に応じて漢方やホルモン補充療法をおこないます。ホルモン補充療法では、女性ホルモンの内服薬・貼付剤(シール)・ジェルなどを使って、エストロゲンを補います。ホルモン補充療法は、ホットフラッシュを改善する効果が高いと言われています。
更年期障害で困っている女性はたくさんいます。もし「更年期障害かも?」と思ったら、
お近くの産婦人科へぜひご相談ください。
もっと詳しく知りたい方へ
・日本産科婦人科学会 更年期障害
・日本産婦人科医会 女性の健康Q&A 更年期
・日本女性医学学会 更年期障害についてのYouTube
参考文献
1. JILPTリサーチアイ 第70回 働く女性の更年期離職 周 燕飛 2021年11月5日
2. The British Menopause Society & Women’s Health Concern 2020 recommendations on hormone replacement therapy in menopausal women. Post Reproductive Health 2020, Vol. 26(4) 181–208
2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。
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