顔がほてる、気分が沈む、肩がこる…「なんとなく調子が悪い」は更年期症状かもしれません
- 作成:2025/01/08
更年期の症状が現れ始める年齢は40代後半から50代まで、人によって異なります。また、更年期に関連する症状は100種類近くあるといわれ、その重さも人によってさまざまです。そのため、「なんとなく調子が悪いのは更年期のせいかもしれない」と思っても、自信がもてずそのままにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 更年期症状は症状に応じた適切な治療により軽減することが期待できます。 ここでは、更年期に現れる具体的な症状やその原因、治療選択肢などについてご紹介します。
この記事の目安時間は6分です
更年期は閉経前後の5年間。40代前半から差し掛かる人も
女性のライフステージの中で、女性ホルモンの分泌が盛んな「性成熟期」と、閉経を迎え女性ホルモンの分泌が減少する「老年期」の間の時期のことを「更年期」といいます。
一般的には「閉経前の5年間と閉経後の5年間を合せた10年間」を指します。日本人の平均閉経年齢は約50歳なので、45~55歳頃が更年期にあたる女性が多いといえますが、閉経の年齢は個人差が大きいので、40代前半から更年期に差し掛かることもあります。
「エストロゲン」は女性の全身を守っている
女性の体は一生を通じて「女性ホルモン」の影響を受けています。女性ホルモンの代表格「エストロゲン」(卵胞ホルモン)は、排卵や月経などに関わるはたらきのほか、女性らしい体形を作ったり、皮膚や骨、血管などを健康に保ったりと、女性の全身を守っています。
エストロゲンの量は、女性のライフステージごとに大きく変化します。更年期にさまざまな症状が発現するのは、エストロゲンの量が大きくゆらぎながら低下していく時期だからです。
ライフステージ別のエストロゲンの変化を見てみましょう。
エストロゲンは8,9歳の思春期を迎えるころに分泌され始め、初経を迎えます。10代後半で性成熟期になるとピークを迎えて安定し、エストロゲンがさかんに出る時期になります。そして、「更年期」になると大きくゆらぎながら減少し、閉経を迎えると急激に減少します。老年期になるとエストロゲンの量はさらに減少します。
更年期は、エストロゲンが減少するだけでなく、仕事や家族関係などの環境変化、人間関係など心理的ストレスも重なりがちな時期です。それらが重なり合った結果として、血管運動神経症状(ホットフラッシュ、発汗など)、精神症状(不眠、イライラ、抑うつなど)、泌尿器・生殖器症状(頻尿、性交痛など)、身体症状(関節痛、疲れやすい、めまいなど)など、体や心にさまざまな症状が生じることがあります。更年期に起きる不調のうち、ほかに明らかな病気が原因ではない症状を「更年期症状」と呼びます。
更年期症状はとても多様で、100種類ちかくもあると言われています。また、個人差が大きく、ほとんど気にならない人もいれば、いくつもの症状が重なる人、常になんとなく調子が悪い「不定愁訴」の状態の人もいます。更年期症状によって日常生活に支障を来している状態を「更年期障害」と言います。
〈主な更年期症状〉
- 血管運動神経症状
突然、上半身がカッと熱くなって汗をかき、顔がほてったり、のぼせたりする「ホットフラッシュ」が代表的です。通常1~3分ほど持続し、脈拍が増加して動悸を伴います。ほてりがおさまると体温が低下し、冷えを感じることもあります。症状の現れ方は個人差が大きく、全身がほてる人もいれば、頭のぼせだけ、顔のほてりだけという人もいます。夜中に汗びっしょりになる「寝汗」が顕著な人も。
軽度の場合は2~3年ほどで自然消失しますが、10年ほど続く場合もあります。さまざまな研究報告から、日本人女性の40~50%が経験すると考えられています1)。 - 精神症状
不眠、イライラ、不安感、倦怠感、抑うつ気分など。エストロゲンの低下に加えて、環境変化や心理的ストレスなども原因となります。不眠は特によく見られ、更年期から閉経後の日本人女性のうち、およそ半数が経験すると言われています。なかなか寝付けなかったり、夜中に目が覚めたり、朝早く覚醒してしまったりして、日常生活に支障をきたします。家庭内や仕事での人間関係のストレス、介護などの精神的負担に加えて、不安感や抑うつが、漠然とした「老い」への不安や、子育てが終わったことによる喪失感(からの巣症候群)、仕事で役割を終えたことによる孤独感からくることもあります。また、物忘れや集中力の低下など、認知機能低下が目立つ人もいます。 - 泌尿器・生殖器症状
泌尿器症状(頻尿、尿失禁など)と性器の症状(膣の乾燥・萎縮、かゆみなど)、性の症状(性交痛、性欲減退。オーガズム障害など)があります。いずれもエストロゲンの低下が原因です。 - 身体症状
肩こり、疲れやすさ、頭痛、腰痛、関節痛、息切れ、めまい、動悸、頭痛、吐き気など。つかみどころがなく、なんとなく具合が悪い「不定愁訴」の状態もよくあります。
エストロゲンの低下と精神心理的要因が原因とされていますが、多くの女性が更年期に感じる症状です。
日本人に多い更年期症状は関節痛、脱力感、頭痛
日本の40~60代の女性2886人を対象に行ったアンケート調査によると、頻度の高い更年期症状は関節痛、脱力感、頭痛で、およそ半数が訴えていました。約30%でホットフラッシュ、夜間の発汗、手足の冷え、イライラ、不安の症状を認め、5人に1人の割合で、(手足の)しびれ、早朝覚醒、不眠の症状がありました。
この研究では、更年期症状は閉経前後で変化していくことが報告されています。45~54歳の女性において、不安、脱力感、関節痛などは、閉経後になると減少する傾向があります。一方、ホットフラッシュ、夜間の発汗、手足の冷え、しびれなどは、閉経後になってもあまり発生頻度が変わらず、症状によっては閉経後でも持続する可能性があります。
いずれにしても更年期障害は個人差が大きく、ほとんど気にならない人もいれば、いくつもの症状が重なる人、常になんとなく調子が悪い人もいます。もし、「最近疲れやすいけれど、年を取ってきたから仕方がない…」とがまんしているとしたら、じつは更年期症状かもしれません。
更年期障害は女性ならだれしも経験する可能性がありますが、下記に該当する人は症状が現れやすいと言われています。
【更年期障害が現れやすい人の特徴】
- 早期の閉経
- 肥満
- 喫煙習慣
- 運動不足
- ストレスの多い環境
- 大きな環境変化
- 真面目な性格
更年期症状は、婦人科(産婦人科)で治療することができます。不足した女性ホルモンを薬で補うホルモン補充療法や、漢方療法、抗うつ薬・抗不安薬など、いくつかの選択肢があります。「この歳だからしょうがない」と諦めず、一度、医師に相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献
1) Shiwaku K, Yamane Y, Sugimura I, Hayashi M, Nojiri M, Matsushima S, Koyama W. Vasomotor and Other Menopausal Symptoms Influenced by Menopausal Stage and Psychosocial Factors in Japanese Middle-Aged Women. Journal of Occupational Health. 2001;43(6):356-364.
2)ホルモン補充療法の正しい理解をすすめるために 日本女性医学学会
2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。
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