胎児水頭症とは?エコーで判明?障害が出る?遺伝でなる?基準や背景にある病気も解説
- 作成:2016/01/07
胎児水頭症は、胎児が母親の胎内にいる時期、つまり出生前にわかる水頭症のことを指します。何らかの別の病気を伴うことが多く介助が必要になる子供も多いのが実情です。一部、遺伝と関係しているとされる水頭症もあります。胎児水頭症の種類やエコー検査で判明するかなどについて、医師の監修した記事でわかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
胎児水頭症とは何か?
「胎児水頭症」という病気があります。医学的には「胎児」は妊娠第8週目以降の母親のおなかの中にいる子を指します。そして、水頭症は脳や脊髄(せきずい)周囲に存在する脳脊髄液の循環が何らかの原因で障害されたり、脳脊髄液が何らかの原因で多く作られるほか、脳脊髄液が吸収されないまま髄液が過剰となり、その通り道である「脳室」という部分に圧力がかかり拡大し、神経障害をきたす病気です。
胎児期に診断される水頭症を胎児期水頭症と呼んでいます。成人の水頭症では、頭痛や吐き気など症状を訴えますが、胎児期には、成人のような症状を訴えることはできません。出生後に頻繁に嘔吐する、眼球の運動障害が出る、頭のサイズ(頭囲)の拡大や、大泉門(頭の頭蓋骨のない部分)が膨らむといった症状が見られます。
2010年の日本産婦人科医会先天異常モニタリングのデーターベースによると、先天性水頭症は10番目に多い先天異常であることが分かっています。その数はダウン症の子の約半数であり、10000人あたり約8人とされています。
胎児水頭症の半数以上は胎内で判明 基準は?エコーでわかる?
検査技術の進歩により、現在の胎児水頭症の診断の半数以上は、胎内で診断されています。診断で使われる装置が、「胎児超音波診断装置」と呼ばれるものです。水頭症は脳室(頭蓋骨内の空洞部分)が拡大するのが特徴ですから、装置を用いて脳室の拡大の有無を確認して診断します。
基本的には「側脳室三角部」という部位の長さを測って、10㎜以上であれば「脳室拡大の疑いあり」、15mm以上であれば「かなり拡大している」ということになります。超音波(エコー検査)を用いれば簡単に「スクリーニング検査(可能性があるか、ないかを確かめる検査)」をすることもできます。
胎児期に胎児超音波診断装置を用いて、胎児が胎児水頭症かどうかを調べることを「出生前診断」と言います。胎児期の段階で、水頭症の有無を確認しておくことで、生まれてすぐの赤ちゃんに対して、早期に適切な対処をすることができます。
水頭症と障害の関係は?背景の病気よって違う?
水頭症を持った赤ちゃんが生まれてくると、水頭症による障害があるかどうかが気になると思います。
通常、胎児期水頭症は単一の病気でなく、他の疾患が含まれていることがあります。例えば、以下のようなものがあります。
・「脊髄髄膜瘤(せきずいじまくりゅう)」と呼ばれる病気に併発する水頭症(瘤とは、「こぶ」のこと)
・「二分頭蓋」「ダンディーウォーカー症候群」「全前脳胞症」という病気に合併して起こる水頭症
・「X連鎖性遺伝性水頭症」など先天性の疾患に合併する水頭症
・胎児期頭蓋内出血、トキソプラズマ症やサイトメガロウィルス感染など二次的な疾患に伴う水頭症
どの疾患に伴った水頭症かによって、障害の程度は異なりますし、また出現する症状も異なります。ある全国疫学調査によれば、介助無しで日常生活を送ることが可能な方は、全体の約30%であり、全面的に介助が必要となる方や死亡する方も約20%いることが分かっています。
残念ですが、胎児期に水頭症と診断された場合、水頭症に合併した疾患の治療を行いますが、介助が必要のない生活を送るのは非常に難しいのが現状です。ただ、約30%の方は介助なしでも日常生活を送ることが可能という結果です。診断された場合、適切な治療を行える環境を整えておくことは非常に重要なことです。
水頭症は遺伝する?
小さいころから症状がある場合、医学的に、その病気は遺伝しうる可能性を考えます。実際、先天性水頭症の一部には遺伝性の明らかなものがあり,このうち「X染色体劣性遺伝性水頭症」と呼ばれる種類の病気の頻度が高いことが知られています。X染色体劣性遺伝性の水頭症は男の子にのみ発症する水頭症で、母親が原因となる遺伝子を持っていれば50%の確率で発症します。他にも遺伝する水頭症が報告されていますが、X染色体劣性遺伝性水頭症ほど多くありません。
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胎児水頭症についてエコー検査、障害、遺伝との関係をご紹介しました。胎児が水頭症かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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