水頭症の手術治療とリスク シャントやそれ以外の方法、感染症の危険性などを解説

  • 作成:2016/01/14

水頭症では、脳の中にたまった脊髄液を通常の範囲内に戻すために、「シャント手術」が行われることがあります。シャント手術をおこなうと、体の別の場所に脊髄液が流れるようになります。ただ、軽くない問題が起こるリスクがあるのが事実です。シャントの内容や手術のリスクについて、医師監修記事でわかりやすく解説します。

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水頭症の治療とは?「シャント」は手術?

何らかの原因によって脳脊髄液の循環や吸収障害、産生過多が起こる結果として、脳室の異常拡大を生じたものが水頭症という病気です。脳室の異常拡大によって、頭蓋内圧は上昇し中枢神経が圧迫されます。最悪の場合、脳幹が圧迫されるため、水頭症で死に至る場合もあります。

水頭症の治療では、脳室内の余分な脳脊髄液を生理的範囲内に戻すことが目指します。1つの方法として、水頭症に対する「シャント手術」というものがあります。「シャント手術」とは、シャントチューブを体内に設置する手術です。その結果、チューブを通して脳脊髄液を腹腔など、脳以外の他の空間に流して、脳脊髄液量の正常化を図ります。

シャント手術の詳細 手術は約1時間

シャント手術は全身麻酔下で、約1時間程度かかりますが、脳神経外科的手術としては特別難しいとされる手術ではありません。シャント手術はシャントチューブを繋げる空間によって、主に以下の3つに分けられます。

・脳室からお腹の中へ脳脊髄液を流す「脳室-腹腔シャント」
・脳室から心臓のそばの太い静脈へ流す「脳室-心房シャント」
・腰の背骨の中にある脳脊髄液をお腹の中へ流す「腰椎(ようつい)-腹腔シャント」

日本では、脳室-腹腔シャントが最もよく行われています。

シャント手術のリスク なぜ感染症のリスク?

一般的な外科手術では手術中に問題が起こるリスクが最も高いのですが、シャント術では、手術後に問題が生じる可能性が高いとされています。

具体的なシャント術の合併症としては、脳脊髄液が過剰に流れてしまうことによる硬膜下血腫や感染症が知られています。感染症は他の外科手術でも生じる可能性がありますが、シャントチューブなどの異物を体に入れるシャント手術の場合、特に起こる可能性が高くなります。通常脳脊髄液が存在する髄腔内というのは、菌が存在しない場所です。髄腔内が、菌がいるお腹と常に交通している状態になるため、感染症を起こしやすい状況になってしまいます。その結果、高熱を伴う「敗血性ショック」という病気になってしまう恐れがあります。

シャント手術のリスク 硬膜下血腫とは?

またシャント手術を行った患者には硬膜下に血腫ができやすいです。硬膜下血腫に関連する症状はさまざまで、頭痛や麻痺(まひ)、昏睡といった症状が現れます。硬膜下血腫は治療をしないと、脳幹を圧迫し、呼吸不全(呼吸ができない状態)などにつながる恐れがあります。

シャント以外の手術方法

水頭症の治療はシャント手術が主ですが、シャント手術以外にも「内視鏡下第三脳室底開窓術」や「ドレナージ術」などと呼ばれる方法が用いられることもあります。

「内視鏡下第三脳室底開窓術(ETV)」では、脳室の閉塞が原因となる水頭症に対して、頭の中の圧力の上昇を軽くする目的で行う手術です。内視鏡下第三脳室底開窓術は、閉鎖されている道を迂回させるため、脳内に新たな道を作ります。具体的には、内視鏡を用いて脳室の壁に小さな穴を開け、余分な脳脊髄液を正常な脳脊髄液腔に流れるようにします。

一方、ドレナージ術は、脳脊髄液が入っている空間から体外にチューブを出し、余分な脳脊髄液を排出する方法です。ドレナージ術は全身麻酔ではなく、局所麻酔で簡単に行うことができ、ドレナージの管もすぐに抜去することができます。しかし、ドレナージ術は外界と通じているため、菌などを原因とした感染症になる恐れがあります。ドレナージ術はあくまで一時的に行われる治療と考えてよいでしょう。

さらに、水頭症の中には、腫瘍や血腫によって生じるものもあるため、腫瘍や血腫の治療を先に行うことがあります。その後、脳圧が下がることがなければ、水頭症に対する治療を行い、頭の中の圧力が下がるようにつとめます。


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水頭症の手術治療やリスクなどについてご紹介しました。子供の水頭症に不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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