大人、高齢者の水頭症の原因、症状、治療 くも膜下出血が契機?「治る認知症」と呼ばれる理由は?

  • 作成:2016/01/18

子供の病気と思われがちですが、くも膜下出血などを契機として、大人も水頭症を発症することがあります。ただ、大人の水頭症の一部は「治療できる認知症」ともいわれています。大人の水頭症について、専門の医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

この記事の目安時間は3分です

考える女性

大人や高齢者も発症する水頭症

水頭症は、胎児のころに診断されることも少なくないことなどもあり、乳児・幼児の病気であると考えている方は少なくありません。しかし、水頭症は成人でも発症します。

具体的には、乳幼児の水頭症とは異なり、「正常圧水頭症」という形で発症し、原因がはっきりせず高齢者に多い「特発性」と、くも膜下出血や頭部外傷などの病気の後に起こってくる「続発性」のものがあります。

続発性正常圧水頭症は、くも膜下出血や頭部外傷に対して適切な治療を受ければ、水頭症による症状を治療することができます。特発性においても、適切に診断・治療することでその症状を改善させることができ、「治療可能な歩行障害・治療可能な認知症」として注目されています。

大人の水頭症の症状とは?

続発性・特発性正常圧水頭症は共通の症状があります。歩行障害・認知機能の低下(認知症)、尿失禁の3つです。水頭症は「治療可能な認知症」と呼ばれ、水頭症の治療を適切に行えば、認知症の症状は収まります。通常、認知症は記憶障害が生じるだけでなく、反応が遅くなり、自発性が低下します。好きだった趣味などをしなくなり、1日ぼーっとすることが多くなります。また、表情が乏しくなることもあります。

水頭症による認知症はその発症前に、歩行障害が出現することが多いことが知られています。そのため、認知症の症状が出る前の様子を聴取することで、認知症が、水頭症によるものなのか、そうでないかを鑑別することが可能です。水頭症による認知症であると分かれば、治療を行うことで認知機能を改善させることが可能となります。

くも膜下出血が契機の場合も

続発性正常圧水頭症の原因の一つとして、くも膜下出血もあります。くも膜下出血が起こると、脳で作られる髄液の流れや吸収が障害されます。結果、脳室という部分や脳の外側に髄液が過剰にたまり、水頭症を生じることがあります。

具体的には、くも膜下出血が発症してすぐに起こるタイプを「急性水頭症」、くも膜下出血後、1ヶ月ほど経過してから起きる「遅発性水頭症」に分けることができます。くも膜下出血を発症した後、歩行障害・認知機能の低下(認知症)、尿失禁が生じれば、続発性正常圧水頭症を疑い、治療を行うことが望まれます。

大人の水頭症の治療 手術は合併症の考慮が必要

治療は内科的治療と手術的治療に分けることができますが、現在水頭症に有効な内科的治療は存在しません。一方、正常圧水頭症の手術は治療成績が良く、大人の水頭症のうち、続発性正常圧水頭症の場合には劇的に回復することが多いです。

水頭症の手術治療は、水頭症の原因によって選択されます。水頭症の多くは脳室系に閉塞があるか、髄液の吸収が低下していることが原因となっています。そのため、過剰にたまってしまう髄液量を減らしたり、調整する必要があります。具体的な手術方法としてはシャント手術、ドレナージ、内視鏡的第三脳室底開窓術と呼ばれる方法が選択されます。

特発性水頭症の場合でも、約70%程度で外科治療の効果が得られます。ただ、手術には脳の損傷や脳血管疾患、感染症のリスクが存在します。したがって、合併症を考慮した上で、最終的に治療方針を決めることとなります。


【水頭症関連の他の記事】

赤ちゃんの水頭症の3つの原因、確率、診断、特徴 先天性以外は?
胎児水頭症とは?エコーで判明?障害が出る?遺伝でなる?基準や背景にある病気も解説
水頭症の手術治療とリスク シャントやそれ以外の方法、感染症の危険性などを解説
水頭症の後遺症、予後、寿命への影響は、リハビリの効果 放置すると半数が死亡


大人や高齢者の水頭症についてご紹介しました。もしかして水頭症かもしれないと不安に感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、ご活用ください。

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師