この症状は帯状疱疹?日常生活への影響は?原因と症状、感染・再発・自然治癒の可能性

  • 作成:2017/01/24

帯状疱疹は、誰にでも起こりうる病気です。他人から移るのではなく、体内のウイルスがストレスなどによって暴れだして発生します。 顔や頭に出るイメージが強いですが、首や足に出ることもあり、痛みだけでなく耳鳴りや排尿障害など全身に影響することもあります。 帯状疱疹になったらどうすれば良いか、日常生活に影響はあるか、再発・自然治癒の可能性はあるかなど、専門医師の監修記事でわかりやすく解説します。

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この記事の目安時間は6分です

目次

帯状疱疹の原因とは

帯状疱疹は、水痘ウイルスによる病気です。「水痘」とは、いわゆる水疱瘡(水ぼうそう)のことで、帯状疱疹と水疱瘡の原因となるウイルスは同じものです。

帯状疱疹は「ウイルスが自分の体の中から出てきて発症する」病気です。大部分の人は、小さいころに水疱瘡にかかります。そして水ぼうそうが治った後も、水痘ウイルスは体の中の神経細胞の中に眠った形で残っているのです。

帯状疱疹の感染・感染経路

「ウイルス性」の病気と聞くと、他の人から感染したものと思ってしまうこともあるかもしれませんが、それは誤解です。小さいころにかり、体に潜んでいたウイルスが原因になるからです。したがって、「帯状疱疹の感染経路」というものは存在しないこととなります。

ストレス・疲れと帯状疱疹の関係

帯状疱疹は、体調がすぐれない時、免疫が落ちてきた時、強いストレスを受けた時、疲れて体力が落ちてきた時などに、眠っていたウイルスが起きてきて、再び暴れだします。眠っていた場所から神経を伝わって、皮膚の表面に出てきて水ぶくれを作ります。

ウイルスは、神経を痛める性質を持っているため、帯状疱疹には痛みが出ます。ウイルスは体に潜み続けるために、ストレスや疲れが引き金となることは覚えておきましょう。

帯状疱疹の自然治癒の可能性

帯状疱疹は、特に免疫(体と入った異物と戦う機能)の力が著しく落ちるような他の病気がなければ、自然にうまく治癒することもありますが、こじれて長引くと痛みが残ったり、傷跡がひどく残ってしまいます。現在はウイルスの増殖を抑える薬があり、病気になった初めの時期に使うとよく効きますから、早めに治療を受けるのが良いでしょう。

帯状疱疹と水疱瘡(みずぼうそう)

繰り返しますが、帯状疱疹は、自分自身の神経細胞の中に眠っていたウイルスが暴れだしてできたもので、他人からうつったものではありません。しかし帯状疱疹になった時には、皮膚の表面の水ぶくれ部分に、水ぼうそうのウイルスが出ています。

帯状疱疹は、既に水ぼうそうになったことのある人に、は感染しませんが、水ぼうそうになったことのない人が、帯状疱疹の水ぶくれの部分を触ったり、水ぶくれ部分に触れていたタオルや衣服を触ると、水ぼうそうになることがあります。いきなり、帯状疱疹になることはありません。

すべての水ぶくれが、かさぶたに変わってしまうと、感染する力はなくなりますから、通常1週間から2週間程度で、感染する心配はなくなります。つまり、

帯状疱疹の再発の可能性

帯状疱疹が再発することは少なく、2回帯状疱疹にかかることはまれです。疲れた時などに何回でも再発するのは単純ヘルペス(単純疱疹)という別の病気の可能性が高いです。

帯状疱疹は顔にも出る?

症状は「全身の左右どちらか」

帯状疱疹は、頭から足の先までどこの部分にでも出てくる可能性があります。もともとウイルスが眠っていた場所は人により決まっており、そこからウイルスが神経を伝わって出てきますから、帯状疱疹の発疹は、神経に沿った分布となります。通常は、体の各部の左右のどちらか一方だけに水疱(水ぶくれ)が出てくることになります。顔や頭だけでなく、首、足、腕も可能性があることとなります。

神経の走っている部分にそって水ぶくれが並ぶという特徴が、帯状疱疹の診断には重要となります。まれに、離れた部位に2カ所出てきたり、左右の両方にできることもありますが、そのような場合は免疫が衰えるような、別の病気が伴っていることが多いようです。

入院が必要な可能性

また症状が強い場合は、局所的な発疹などだけではなく、全身の皮膚のあちこちにパラパラと水ぶくれができることがあります。これは血液中にウイルスが入って全身に運ばれているサインで、入院を考える必要があるケースとなります。

帯状疱疹の初期症状

帯状疱疹はウイルスが神経を伝わってでてくるときに、すでに痛みがあるということもあります。その場合、はじめのうちは皮膚には全く異常がなく、痛みだけがあるということになります。したがって、皮膚に異常がない時には神経痛として様子をみるのも良いのですが、湿布をはっていたところに赤みや水ぶくれができた時には、湿布のかぶれと決めつけないで、帯状疱疹の可能性を考えて、医療機関を受診しましょう。頭の帯状疱疹の場合、左右どちらかに偏った頭痛となります。頭部の皮膚は見にくいのですが、地肌に赤みが出てきた段階で皮膚科を受診すると診断がつきます。

痛み以外の初期症状

ただ、初期には痛みがほとんどなく、皮膚に赤みや水疱だけができることもあります。「虫刺されと考えて塗り薬で様子を見ていたら、水ぶくれが出てきて広がってきた」という場合は、痛くなくても帯状疱疹であることがありますから、医師に相談しましょう。

痛みのピークは人それぞれ

このように帯状疱疹は当初から痛みがある場合と、当初は痛みが少なく数日から1週間で強くなる場合がありますから、痛みのピークは人によって異なります。通常皮膚症状は約3週間で治癒し、それと共に痛みは和らいできます。しかし、一部の方では、皮膚が治癒した後に痛みが強くなってくることもあります(「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれるもの。別の記事で詳しく紹介しています)。

かゆみや微熱の症状

帯状疱疹の初期には、皮膚に少し赤みがでて、チクチクしたり、少しかゆいということもあります。また軽度の発熱があったり、リンパ節が少しはれていることもあります。その場合、「虫刺されでは」と考えてしまうこともあるでしょう。痛みもなく、水ぶくれもない初期には診断が難しいのが実情で、確定的な診断は、水ぶくれが神経の分布に沿って出てからになります。

難聴、耳鳴り、めまいの症状

帯状疱疹が耳、頬(ほお)、顎(あご)に出てきた時には難聴、耳鳴り、めまいが起こることがあり、耳鼻科の受診が必要になります。先に、難聴、耳鳴り、めまいが起こって耳鼻科で診てもらっているうちに、後から耳の周りに水疱(水ぶくれ)が出てきて帯状疱疹であると診断がつくこともあります。

目や運動神経への影響と症状

まぶたや前額部から鼻筋に帯状疱疹が出てきた時には、目にも症状が出てきて、涙が出たり、まぶしい感じがすることがあります。病気が角膜までに及ぶと後遺症として視力障害が残ることがありますので、目に症状が出てきた時には眼科の受診が必要です。

帯状疱疹では知覚神経にトラブルが起こり、痛みが出るのが普通ですが、まれには運動神経が障害されることもあります。顔面にできた場合、口がうまく閉じなくなるなどの顔面神経麻痺の症状が出てくることがあります。外陰部(女性の性器)近くに帯状疱疹が出てきた時には、溜まった尿を出すことが難しくなることがあります。また腹部の帯状疱疹では、腸の動きが悪くなり、便秘となることがあります。かなりまれですが、腕や足などの動きに障害が出ることもあります。

傷あとを残さないために気を付けること

帯状疱疹では、傷跡が残ってしまうというトラブルにも気をつける必要があります。水ぶくれの時期には、強く発疹の出ている部分を、あまりこすらないようにしてください。患部をこすって、水ぶくれとなって浮いている皮膚の表面をむやみに取ってしまうと、傷の治りが悪くなることがあります。さらに、症状の出ている部分を汚すと、細菌感染が起こってしまうことがあり、患部をきれいにする作業が必要となることがあります。皮膚のトラブルを防ぐために、大きな水ぶくれができた時には、適切な塗り薬を塗ってガーゼなどで保護しておく方が良いでしょう。

かさぶたが長く残る場合は皮膚科受診

帯状疱疹の透明な水ぶくれは、やがて乳白色のような色となり、その後乾いてきて黒っぽいかさぶたに変わります。かさぶたは少しずつ浮いてはがれて、新しい皮膚が再生するということで皮膚は治癒します。

注意が必要なのは、いつまでもかさぶたが残ると、かえって周囲から皮膚が再生する妨げになり、傷の治りが悪くなることです。一般的に皮膚の表面にできた傷が2週間以内に治った場合は、傷跡になることはありません。ただ、傷が2週間、3週間経過しても、大きな黒いかさぶたが残ってしまうと、傷の治りが遅くなり、その後傷跡となる可能性が高くなります。硬いかさぶたが長く残る時には、傷跡が残る可能性を考えて皮膚科を受診するのが良いでしょう。

帯状疱疹の検査と診断を知ろう

帯状疱疹の受診科について

帯状疱疹は皮膚に発疹の出る病気ですから皮膚科を受診しましょう。

ただ、帯状疱疹が耳、頬、顎(あご)に出てきた時には難聴、耳鳴り、めまいが起こることがありますから、耳鼻科の受診が必要になります。

眼の周りや額部分から鼻筋にかけての帯状疱疹では、目にも症状が出てきて、涙が出たり、まぶしい感じがすることがあります。目の角膜に病気が広がると、後遺症として視力障害が残ることがありますから、目に症状が出てきた時には眼科にもみてもらうことが必要です。

帯状疱疹の検査について

帯状疱疹は、発疹がまだ十分に出ていない最初の時期には、虫刺されや、湿布のかぶれ、単純ヘルペスなどとの区別が難しいことがあります。しかし、通常、帯状疱疹の診断は、症状がどのように変化していくかを見ることで可能ですから、診断のための検査はあまり行われません。

技術的には、血液検査を3日から4日の間隔をおいて2回実施して、帯状疱疹であるかどうかの確認を行うこともでき、またウイルスの存在の有無の検査も行うことができます。しかし検査結果が判明するころには、症状がはっきりしてくることで、診断がつくことが予想されますから、診断のための検査の意義は乏しいということです。

ただ、水ぶくれ部分を少しとって、すぐに顕微鏡の検査を行い、ウイルス性の水ぶくれであるかどうかをその場で確認することはよく行われます。

初診時の血液検査について

とはいえ、初診の時に、健康状態を把握するために血液検査を行うことは合理的です。帯状疱疹は免疫が落ちるような病気があると重症化します。また、治療に使うウイルスの増殖を抑える薬は、腎臓が悪い時には減量して処方することになっています。したがって初診の時に腎臓の機能や一般状態を把握するために検査を行うのです。

帯状疱疹の薬を知ろう

帯状疱疹の治療薬(飲み薬・塗り薬)

帯状疱疹の原因は体に潜んだ「水痘ウイルス」という種類のウイルスです。帯状疱疹の治療で主に使われるのは、ウイスルの増殖を抑える薬です。以下のような薬が開発されています。

・飲み薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)
・点滴(アシクロビル、ビダラビン)
・塗り薬(ビダラビン)

通常飲み薬が処方されることが多いのですが、重症の場合では入院して点滴を行います。軽症の場合や、全身に対して効果のいきわたる飲み薬を使うことができない場合、塗り薬を用いることがあります。ただ、塗り薬の治療効果は、飲み薬より明確におとります。

いずれのウイルスの増殖を抑える薬も、通常は1週間使います。水ぶくれが、すべてかさぶたの状態になれば、ウイルスの増殖を抑える薬の効果は期待できませんので、他の治療に切り替えていきます。なお、ウイルスの増殖を抑える飲み薬は市販されていませんから、病院を受診する必要があります。

3種類の飲み薬

アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルの3種類の飲み薬は、いずれも腎臓から排出される薬剤で、腎臓の悪い人は、減量が必要となります。薬剤の血中濃度が高くなりすぎると、頭痛、興奮、幻覚、痙攣(けいれん)などの神経精神症状が出てきます。自宅で薬を飲んでいる際に、頭痛などの症状が現れた場合は、一旦使用を中止して、再度医療機関を受診しましょう。

服用時の注意点(頭痛・ヘルペス治療)

なお、頭部に帯状疱疹がある場合には、頭痛は薬の副作用ではなく、帯状疱疹の症状そのものである可能性がありますから、治療は担当医師の指示に従ってください。

また3種類の飲み薬は、帯状疱疹だけではなく、「単純疱疹(単純ヘルペス)」という病気にも使われる薬ですが、帯状疱疹の際は、単純ヘルペスの時より、多めの薬が必要となります。単純ヘルペス治療のために使用している人は、服用量を間違えないように注意が必要です。

塗り薬を使う目的

塗り薬は、基本的に、局所的な症状を改善する目的で使用されます。時期に応じて、痛みを抑えるだけでなく、細菌感染を抑えたり、黒いかさぶたを取り除いたりする目的や、できた傷を早く治す目的でも、それぞれ合った薬が使われます。

なお、すべての水ぶくれが、かさぶたに変わった状態では、抗ウイルス薬の塗り薬の効果は期待できません。

痛みを和らげるための飲み薬

ウイルスの増殖を抑える薬以外も使うことがあります。帯状疱疹の痛みを和らげるための薬があり、通常は飲み薬が用いられます。

炎症や痛みを抑えるため、最初は一般的に用いられる「非ステロイド系」と呼ばれる消炎鎮痛剤が処方されることが多いのですが、「トラマドール」や「プレガバリン」などと呼ばれる、神経に作用して痛みを和らげる薬剤も用いられます。

トラマドールやプレガバリンの内服中はめまいや眠気がすることがありますから、車の運転など眠くなると危険である作業はしないようにしてください。

薬局で買える薬(市販薬)

「非ステロイド系」の消炎鎮痛剤は市販薬としても販売されおり、ウイスルの増殖を抑える治療中に、痛くなって来た場合は薬局で相談することも可能です。「帯状疱疹の痛みを緩和したい」と伝えれば、薬局にいる薬剤師が適切な薬を紹介してくれるでしょう。

なおウイルスの増殖を抑える薬、痛み止めの内服薬には上に述べた副作用以外に、他の薬剤同様、全身的アレルギー症状、薬疹、肝機能障害などの副作用が現れることがありますから、気になる症状が出てきた時には、医療機関を受診して、医師に相談しましょう。

入院が必要なケース

帯状疱疹について、入院も通常は必要なく、病院でもらったウイルスを抑える薬をのみ、皮膚に塗り薬を塗って対応することになります。

顔面と頭部の帯状疱疹では顔面神経麻痺、めまいや激しい頭痛が生じた場合のことを考えると、可能であれば入院して点滴治療をするのも合理的です。激しい頭痛は帯状疱疹の症状が強い時にも起こりますが、抗ウイルス剤の血液中の濃度が高くなりすぎても生じます。入院していると、どちらが起きているのか判断しやすく、かつ速やかに対応できます。

また、病気の部分が広範囲であったり、全身の皮膚に水ぶくれが散発的に出ているような場合では、何らかの病気を合併していることも考えられるので、検査、経過観察と治療を兼ねて入院することが望ましいでしょう。

元々他の病気があってステロイドや抗癌剤、免疫抑制剤などをつかっている場合も、帯状疱疹が重症化することがありますから、やはり入院して点滴治療としたほうが安全です。

薬以外の治療法(ペインクリニック)

痛みがひどくなって来て、内服薬で様子をみておくのが難しい場合には、ペインクリニックなどで「神経ブロック」という注射を行って、痛みを抑える治療もあります。また、低出力半導体レーザーや近赤外線をあてて痛みを和らげるという治療も行われています。気になるようなら、医師に相談してみるとよいでしょう。

帯状疱疹の時に運動は良い?

帯状疱疹時の運動・ダイエット

帯状疱疹になったからと言って、日常生活を制限する必要はありませんが、激しい運動は避けましょう。食事はバランスよく栄養を取りましょう。極端なダイエット中に帯状疱疹を発症した時には、一旦そのダイエットは休んで栄養を取るようにしてください。

ただ重い糖尿病があると、帯状疱疹も重症化することがありますから、糖尿病のある方は糖尿病を悪化させることがないように、糖尿病をみてもらっている医師の指示に従ってください。

帯状疱疹時の飲酒

帯状疱疹になった場合、アルコールは全く飲んではいけないということはありませんが、体力や免疫を損なうような飲酒はしないようにしてください。

帯状疱疹時の入浴

入浴については、してはいけないということではありませんが、水ぶくれがあるときは、症状の出ている部分をこすらないようにしてください。入浴後は処方された軟膏などを塗ったり、ガーゼなどをあてて、患部を保護してくだい。

なお、帯状疱疹はウイルスによる病気で、急性期(症状の激しい時期)には、患部にウイルスが出ていますから、公共の温泉やプールなどは避けましょう。

帯状疱疹後神経痛(後遺症)と温泉

痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」については、暖めると痛みが和らぎ、また自宅にこもっていると痛みの自覚がひどくなることが多いようです。帯状疱疹後神経痛の時期には感染の心配はありませんので、温泉施設などを積極的に利用して、温めながら体を動かすのも良いことです。

帯状疱疹時の仕事・出勤・出社

また、帯状疱疹が出ても、通常仕事を休む必要はありません。衣服やガーゼでおおうこができない部分に、水ぶくれができている場合は、原因となる「水ぼうそう(水痘)ウイルス」が出ています。水ぼうそうになったことのない人が触ると、感染するリスクがありますから、勤務先に相談するようにしましょう。水ぶくれの部分を衣服やガーゼでおおっておけば、通常感染のことを心配する必要はありません。

帯状疱疹とヘルペスの関係を知ろう

帯状疱疹・ヘルペス・水疱瘡の関係

説明の前に、混乱しないように以下の点を理解するとよいでしょう。

・帯状疱疹と水疱瘡の原因は同じ「水痘ウイルス」です。
・「水痘ウイルス」に初めて感染すると、水疱瘡を発症し、帯状疱疹にはなりません。
・帯状疱疹は、体に潜んでいた「水痘ウイルス」が原因で発症します。
・いわゆる「ヘルペス」は、帯状疱疹や水疱瘡とは、原因となるウイルスの種類が違うため、別の病気です。

帯状疱疹とヘルペスの違い

帯状疱疹は「帯状ヘルペス」とも呼ばれますが、単純ヘルペスとは別の病気です。

「単純ヘルペス」は、「単純ヘルペスウイルス」と呼ばれるウイルスによる病気で、一度感染すると、体調が悪い時などに何回でも同じ部位に再発します。単純ヘルペスは、よく口唇に見られますので、その部位にできたものは「口唇ヘルペス」と呼ばれます。また外陰部(性器周辺)にできるタイプは「外陰部ヘルペス」「性器ヘルペス」と呼ばれ、性行為で感染します。

一方、帯状疱疹は、水疱瘡(水痘、すいとう)のウイルスと同じウイルス(そのまま「水痘ウイルス」と言います)による病気です。大部分の人は小さいころに水ぼうそうにかかります。そして、水ぼうそうが治った後も、水痘ウイルスは体の中の神経細胞の中に眠った形で残っているのです。その後、体調がすぐれない時、免疫が落ちてきた時、強いストレスを受けた時、疲れて体力が落ちてきた時などに眠ったウイルスが起きてきて再び暴れだします。眠っていた場所から神経を伝わって、皮膚の表面に出てきて水ぶくれを作ります。これが帯状疱疹です。帯状疱疹は、再発することは多くありません。

帯状疱疹とヘルペスは、原因となるウイルスが違うほか、再発する確率の高さが違うわけです。

水疱瘡の予防接種と予防効果

水ぼうそうには、予防接種が開発されています。小児期に水ぼうそうになって、治療がうまくできないと重症の合併症を起こす可能性があること、小児期の水ぼうそうを、抗ウイルス剤で治療すると早期に帯状疱疹となる事例があること、小児期の水痘ワクチン接種が、後の帯状疱疹発生頻度を低下させるという報告もあることなどを考えると、水ぼうそうの予防接種を受けておく方が良いと考えられています。

そのため2014年10月から水ぼうそうも定期接種(国や自治体が接種を強く勧める予防接種)化されました。水痘ワクチンの1回の接種により重症の水疱瘡をほぼ100%予防でき、2回の接種により軽症の水疱瘡も含めてその発症を予防できると考えられています。

帯状疱疹の予防接種

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで生じたものですから、大人が水ぼうそうの予防接種を受けると、帯状疱疹にならずに済むかもしれません。実際にアメリカではそのような臨床研究(医療の現場で、患者の協力を得て行われる研究)があり、予防接種により帯状疱疹の発症頻度、帯状疱疹後神経痛の発生、重症例が、それぞれ50%以上減少したということを発表されています。その結果を受けて、米国食品医薬品局は2006年に帯状疱疹ワクチンを承認しています。

日本の水痘ワクチンは、米国の帯状疱疹ワクチンと同じものであり、同程度の力があります。したがって、日本の水ぼうそうのワクチンによって、加齢等により低下した水ぼうそうのウイルスに対する免疫が増強されますが、現時点では、水ぼうそうのみの対応したものとされてきました。ただ、2016年3月に、50歳以上の方限定で、水疱瘡の予防ワクチンが、帯状疱疹の予防に使えるようになりました(下記リンクから、『帯状疱疹の予防ワクチン承認 50歳以上限定で』の記事をご参照ください)。ただ、帯状疱疹の予防のために水疱瘡のワクチンを広く使っている医療機関もありますので、希望する場合は個別に相談してみるのが良いでしょう。

帯状疱疹とヘルペスの関係や予防接種の考え方などについてご紹介しました。帯状疱疹の予防接種などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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