ライ症候群の原因、症状、治療、予防 「子供に大人の風邪薬」が危険
- 作成:2016/06/01
ライ症候群は、水疱瘡やインフルエンザの治療中の子供に発症する症状で、対応が遅れると死亡したり、後遺症が残る可能性があります。メカニズムはよくわかっていない部分もありますが、多くの大人の風邪薬に含まれているアスピリンが発症に関係していると考えられています。状態が急変している場合は、遠慮なく救急車を呼びましょう。ライ症候群の原因、症状、治療などについて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
ライ症候群の原因は?
「ライ症候群」とは、インフルエンザや水疱瘡(水ぼうそう)に幼児が感染した際に起こる非常にまれな症候群(症状の総称)で、アスピリンを併用する事で、発症すると考えられています。命にかかわるような重篤な症状を引き起こすものの、詳しいメカニズムについては解明されておらず、インフルエンザや水疱瘡を発症した幼児に対するアスピリンを投与することを止めたら発症が激減したため、「アスピリンが原因だろう」と推測されている状態です。
インフルエンザと水疱瘡以外の感染症にアスピリンを使った場合には起こらず、まれに大人のインフルエンザや水疱瘡患者にアスピリンを使用することでも起こります。ただ、大人の場合、子供ほど重篤な症状にならないことがほとんどです。
脳と肝臓の状態が急変
さらに、原因は分かっていないものの脳と肝臓の状態が急変するのが特徴で、細胞内で糖を分解してエネルギー生成を行う「ミトコンドリア」の状態にも異常が見られます。他にも様々な異常が発生し、体のエネルギーになる血糖やケトンが減ることなども分かっています。これらの変化が同時多発的に起こるということもあり、ライ症候群は極めて危険な病気だと言えるでしょう。
ライ症候群の症状と治療は?
ライ症候群の症状では、インフルエンザや水疱瘡の感染症による発熱や喉の腫れといった諸症状が現れた5日から7日後に激しい吐き気と嘔吐、けいれんに意識障害がおこります。その後、早期に治療を行わなければ昏睡状態となり、最終的には死に至ります。
ライ症候群で最も恐ろしいのは脳が腫れる「脳浮腫」と「肝機能異常」で、治療ではこの二つを抑えこむ事が重要です。また症例の15%程度(とくに4歳以下の小児)において肝機能の異常により血糖値が下がるケースがあり、血糖値が下がった場合はブドウ糖を投与して回復させます。脳が腫れすぎた場合は、脳に集まった水分を逃がすために「マンニトール」などと呼ばれる浸透圧調整剤を投与して脳の腫れを小さくします。また、呼吸困難を起こしていれば人工呼吸器が必要になりますし、肝機能異常により血中のアンモニア量が増えすぎれば血液透析が必要になります。これらの対応が遅れれば命に関わります。
いったんライ症候群を発症すると状態は急激に悪化していくので、遅くとも痙攣(けいれん)が出た時点ですぐに救急治療が可能な病院に搬送する必要があるでしょう。適切に治療が行われたとしても死亡することがあり、生存したとしても脳に後遺症が残ることもあるので、ライ症候群を起こさないようにするのが最も大切なことです。
ライ症候群の予防と再発可能性 風邪薬に注意
ライ症候群の発生メカニズムが解明されていないこともあり、再発するかどうかについても分かっていない部分が多いです。ただ、インフルエンザや水疱瘡に対して「アスピリン」や「ジクロフェナク」という種類の解熱鎮痛剤を投与した場合にライ症候群を発症するということが近年は分かっているため、子供のインフルエンザや水疱瘡ではアスピリンやジクロフェナクを原則として与えないということがライ症候群の予防のために定められています。気をつけたいのは、アスピリンやジクロフェナクが解熱鎮痛剤として用いられており、大人用の風邪薬などには高い確率でこれらの成分が含まれているということです。また、インフルエンザや水疱瘡の初期症状は風邪に酷似しているため、風邪だと思って大人の風邪薬を与えるとライ症候群を起こしてしまう可能性があります。 小児科で処方される薬にアスピリンやジクロフェナクが入っていることありませんし、国内の子供向けの市販薬にもアスピリンやジクロフェナクは入っていることはありません。病院で子供にアスピリンやジクロフェナクが処方されなくなってから劇的に症例は減りましたが、未だにライ症候群を発症する子供がいるのは大人用の薬を子供に与えてしまっていることが原因だと考えられます。風邪のひき始めに市販の風邪薬を飲む習慣のある方も多いですが、子供には子供用の薬を飲ませるということを徹底しましょう。
ライ症候群は何科で治療する?
ライ症候群はインフルエンザや水疱瘡がきっかけとなるので内科ですが、子供に多い病気なので小児科が良いでしょう。少なくとも、これらの病院で子供に対してアスピリンが処方されることはないはずです。しかし、不注意などでライ症候群を発症すると急に症状が進行していく上に重篤な症状を併発します。容体の急変が起きた場合には内科や小児科を探すのではなく、救急車を呼んで救急病院に搬送して下さい。対応が遅れると治っても脳に後遺症が残ることがあります。子供の将来に大きな影響を及ぼすことがないように適切な対応が必要です。
ライ症候群についてご紹介しました。子供の容体に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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