淋病の症状と潜伏期間、検査、治療など。「通販で薬」の危険性も解説

  • 作成:2017/02/02

淋病は良く知られているように、性感染症(性病)の一種で、男女ともに性器に症状が出ます。ただ、性器以外にも症状が出るほか、症状を自覚しにくいなどの特徴もあります。 淋病の治療は、病院で注射をしてもらうことが中心となります。市販薬は国内では入手できません。淋病などの性感染症(性病)では、病院に行くことをためがらいがちになりますが、検査なども秘密が厳守されます。検査方法や個人輸入や通販で薬を買う際のリスクなども含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は6分です

目次

淋病の症状が出る部分はどこ?

性感染症(セックスで感染する病気)である淋病(りんびょう)の原因となる「淋菌」という菌は、主に人間の粘膜部(粘液で常にしめった状態が保たれている部分)で繁殖します。したがって、症状が出る部位は、男性器や女性器以外にも、喉や眼や直腸などが挙げられます。

ただ、淋菌は乾燥に極めて弱いため、粘膜部に触れた手や肌を通じて、淋菌に感染する事はほとんどありません。そのため、粘膜部が直接触れあう可能性がある部位の周辺以外にはあまり症状が出ないのです。

特に、喉には、キスやオーラルセックスが原因で感染しますが、症状が出にくく、風邪と区別がつきにくいため発覚が遅れ、知らない間に感染が広がる要因になります。眼に感染するのは、感染している妊婦の産道を通って生まれてくる新生児がほとんどですが、成人にも起こることはあります。

淋病の症状 発熱や痛みがある?

淋病は、感染した部位によって、症状の出方が異なります。症状が進行すると発熱することもありますが、淋病の多くが局所的(部分的)な症状が中心です。

男性器に感染した場合に出る症状は、排尿時や勃起時の強い痛みと尿道から出る白や黄色い膿(うみ)です。放置すると前立腺や精巣に感染が拡大し、精巣の腫れや無精子症を引き起こし、不妊につながる可能性があります。

一方、女性器に感染した場合に出る症状は、性器の異臭や出血、おりものの変化ですが、尿道にも広がった場合には排尿時に痛みがでるようになります。進行すると子宮内膜炎や卵管炎に発展し、不妊症や子宮外妊娠の原因となります。

眼、喉、腸に起きる症状はどんなもの?

眼に感染した場合、結膜炎として症状が現れ、目が赤くなって痛みが出るようになり、目が開かなくなるほどの目やにが出ることもります。

大人や子供の場合はプール熱やはやり目と勘違いされることもありますが、生まれたばかりの赤ちゃんに起こる新生児結膜炎の原因の一つが淋菌によるものです。

喉の場合は腫れや小さな痛みが出るくらいで、「少し喉が痛い」と感じる程度なので、淋病に感染したと分かりません。

腸に感染した場合には、肛門のかゆみや出血などの症状が出ることがありますが、みなさん同じではありません。

淋病は無症状の場合がある?

淋病の厄介な点は症状が分かりにくいことです。症状として分かりやすいのは尿道に感染した場合に起こる尿道炎ぐらいで、喉・女性器・直腸への感染では、淋病とはっきり認識できるような症状が出ません。

「症状が出ないなら大きな問題はない」と考えてしまうかもしれませんが、症状がでなくても感染力はあるため、知らないうちに周囲に感染を広げてしまう原因となります。さらに、症状が出ない間に、淋菌が体内の奥深くに進行していき、不妊症などの重篤な症状に発展することの多い病気です。

「多少痛くてもがまんすれば良い」「違和感があるけど大丈夫だろう」などと思っていると、取り返しのつかない事になるかもしれません。無症状でもパートナーに症状が出た際に発覚する事が多いですが、不特定多数の相手と性交(セックス)をする可能性がある場合には特に注意しましょう。

淋病の潜伏期間はどれくらい?

淋病の潜伏期間は数日から十日程度と言われています。ただ、これは淋病の診断が可能になるタイミングというだけで、潜伏期間をすぎれば必ず症状が出るということではありません。

淋病に関しては潜伏期間を過ぎても分かりやすい症状が出ないことが多く、潜伏期間を優に過ぎても症状が出ないからと言っても安心できないのです。

感染から数日で尿道に痛みを感じることもあれば、感染から半年以上経ってから不妊症の治療で発覚することもあります。

なかなか発見の難しい病気ですが、性感染症はパートナーとともにかかってしまう事の多い病気です。どちらかに怪しい症状が出た時点で診断を受ければ早期発見が可能となります。

また、新生児に感染する可能性がある病気ですので、妊娠に取り組む前に、二人で診断を受けておくのも良いでしょう。

淋病の検査はどんなもの?

淋病は、「淋菌」という菌が原因で起こる病気です。淋病の検査では、尿や分泌物に淋菌が含まれているかどうかを検査し、診断します。

淋病検査は、男性は朝一番の尿や、2時間程度、排尿しない状態から採った尿を検査します。尿がたまった状態で排尿しないと、尿に、淋菌に感染した部位からの分泌物があまり含まれていないため、間違った判定が出ることがあるためです。

女性の場合は、膣から採った分泌物を調べます。また、喉の淋菌感染が疑われる場合は、喉の周辺の粘膜を綿棒でこすって取り、淋菌の有無を調べます。

なお、採取された分泌物や粘膜、尿の中の淋菌の存在を調べるには、「SDA」「PCR」といった、淋菌が持つDNAを調べる検査で確認します。淋菌と同じDNAがあれば、「淋菌が存在する」という判定になるわけです。

「淋病の検査なんて行きにくい」は危険

淋病などの性感染症(性病)では、病院へ行きにくいと感じがちですが、病気を放置するのは危険です。医療機関では、検査の秘密は守られます。思い当たる症状などある場合は、すぐに受診しましょう。

また、保健所などで匿名・無料の性感染症検査を行っていることもあります。お住まいの自治体のホームページなどを確認してみてください。通販などで検査キットも購入できますが、確実な診断を受けるには、医療機関の受診が必要です。

淋病の治療の基本

淋病は適切な治療をすれば治ります。治療には抗生物質(抗菌剤)を、できるだけ早い時期に注射をします。注射をするのが基本ですが、注射が難しい時は、「セフィキシム」という飲み薬を使用することもあります。この場合、薬剤の効果を確認するため追加の検査を行う事があります。

抗生物質は色々な種類があり、特に近年では抗生物質が効かない淋菌(耐性菌)が多くなっているため、特に淋菌に効果がある薬剤を使用する必要があります。

淋病の治療と薬 注射で治る?

日本の専門医師でつくる「日本性感染症学会」の治療ガイドラインによれば、淋病の治療として、抗生剤を筋肉注射や静脈注射する方法が推奨されています。

「セフトリアキソン(商品名ロセフィン)」などの「セファロスポリン系抗生物質」と呼ばれるものを、状態によって1日から7日にわたって、投与します。1回のみの注射で治ることも多く、外来での治療になります。

「セフィキシム」などの飲み薬を処方されることもありますが、症状がなくなったからといって自己判断で内服を中止せず、きちんと処方された量を飲みきる事が大切です。途中で服薬を中止すると、淋菌が再び勢いを盛り返してしまい、なかなか治らないことがあります。

治療後に再検査する場合も  担当科は?

淋病が治っているかどうか確認するため、抗生剤を投与した後に再検査を行うことがあります。また、血液に淋菌が入り込む「菌血症(きんけつしょう)」となり、全身に広がってしまった場合は、入院して治療を行う事があります。

性感染症を担当する科は、主に産婦人科、泌尿器科、皮膚科、性病科などになります。病院に行く前に確認してみると良いでしょう。

淋病には市販薬はある?

淋病を治療できる市販薬はありません。淋病の治療に使う薬剤は、医師からの処方が必要なもので、薬局で手軽に購入できる薬ではありません。淋病の治療には、医療機関を受診して、診断を受けた上で薬を処方してもらう必要があります。

通販で薬を買うリスク

インターネット通販の中には、海外の淋病治療薬を個人輸入できるサイトもあります。しかし、淋菌に十分な効果のある薬剤とは限らない場合もある上に、適切な薬剤を使用しないと、淋菌が薬に対して強くなり、薬が効きにくくなってしまうこともあります。

また、薬の量も自分で判断することになると、量が多すぎたり少なすぎたりすることもあり、副作用が出ることも懸念されます。通販は手軽に薬剤を購入できますが、リスクを伴うという点に注意する必要があります。

また、他の人に処方された薬をもらって、やみくもに内服するのも健康に影響がある場合があります。恥ずかしく感じるかもしれませんが、医療機関は秘密をまもってくれます。病院で診察を受けた上で、薬を処方してもらうようにしましょう。

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淋病の症状、検査から治療についてご紹介しました。「何らかの性病かもしれない」と不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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