淋病の原因と感染経路 妊娠 男女ともに不妊に?出産時の胎児へのリスクも解説

  • 作成:2017/02/02

淋病は良く知られているように、性感染症(性病)の1種で、男女ともに不妊につながる可能性があります。放置したときのリスクや予防方法、妊娠中の治療や対応も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は6分です

目次

淋病の原因と感染確率は?

淋病(りんびょう)は、「淋菌」という菌が原因で起こります。セックスをはじめとする性行為で感染する性感染症(STDあるいはSTIといったりもします)の一つです。

淋菌は高温にも低温にも弱く、粘膜から離れると数時間で感染する力を失います。日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅しますので、粘膜以外の普通の環境では生存できません。感染者の体から離れると数時間で感染力はなくなり、消毒剤で簡単に死ぬ弱い菌です。

しかし、粘膜に存在しているときには感染する力は強く、淋菌感染者との性行為(セックス)では30%の確率で相手に感染すると言われます。粘膜などから菌が体内に侵入すると、2日から9日で症状が出現します。

淋病の症状は、男性の場合には尿道の熱っぽさやかゆみから始まり、白黄色の膿や粘液がでます。尿を出す時に痛みが増す、性器が腫れあがる等の症状が出ることもあります。

女性の場合は、感染していても症状が軽く、感染に気づかないことがあります。淋病は抗菌薬を使用し治療しますが、最近では薬が効かない淋菌も増えています。

淋病の主な感染経路はセックス

淋菌への感染は、ほとんどは性行為(セックス)を介して、人から人へ感染します。尿道、のど、直腸でも菌は生存しますので、口、肛門、尿を使った性行為(オーラルセックス、アナルセックス)も感染の原因となります。

まれに、淋菌の含まれた膿や分泌物の着いた手で、目などをこすると結膜炎になることもあります。また、妊娠中に母親が淋菌に感染すると、出産のときに赤ちゃんに感染して、「淋菌結膜」炎という病気になり、最悪の場合では失明することもあります。

淋病は完治する?

淋病は放っておいても治りませんので、治療が必要です。淋病は、きちんと治療を受ければ、完治します。

もし治療せずに放置していると、菌が全身に広がったり、男女ともに不妊の原因となってしまうことがあります。女性では子宮外妊娠の原因になることもあります。治療を受けるのが遅くなると、病気もそれだけ進んでしまいますので、治るのに時間がかかります。

また、治療を開始すると症状が治まり、症状がないと病気が治ったように思いがちですが、完治したわけではありません。治療を中断すると、数カ月後にまた症状が出現することもあります。淋病を完治させるには、独断で治療を中断しないことが大切です。

淋病は再発する可能性がある?

淋病は、一度感染したら、体に抵抗する力ができて二度と感染しない種類の病気ではありません。何度でも感染する恐れがあります。完治した後でも、不用意なセックスなどをして、淋菌に感染すれば、再発の可能性はあります。病気を治療するだけでなく、予防することも重要になります。

淋病の予防方法

淋病を予防する薬はありませんが、性行為の際にコンドームを使用することで、淋菌感染の危険は低くなります。コンドームを使用することで、病原体を含んだ精液や腟分泌液が体内に侵入するのを防ぐことが可能なためです。性器に淋菌感染がある人の10%から30%は、口の中にも菌が認められるとの報告もありますので、挿入の時以外もコンドームを使用しましょう。なお、ピルでは病原体が体に入るのを防ぐことができませんので、淋病の予防に効果はありません。

また、感染を広げないことも、淋病の予防になります。「淋病かもしれない」と思ったら、すぐに病院を受診しましょう。パートナーにも淋菌が感染していることも考えられますので、検査をするときにはパートナーにも検査をしてもらってください。症状が出ていなくても淋菌に感染していることもあり、知らないうちに他の人へ感染を広げてしまう可能性もあります。パートナーが検査を受けて、仮に結果が陰性であったとしても、パートナーも同時に治療を受ける必要があります。不特定多数の人と性行為をしている場合は、特に注意が必要です。

淋病は出産で胎児にうつることも

淋病は、性行為(セックス)によって感染する性感染症の一つです。淋病が感染する部位は主に咽頭(のど)・性器・腸などの粘膜部(粘液によって常に湿っている部分)ですが、眼の結膜にも感染します。

性行為によって、眼に淋菌が入ることはほとんどありません。しかし、出産時に産道に感染していた菌が、新生児の眼の「結膜」という部分に感染してしまうことがあります。新生児の結膜に感染した淋菌は「新生児結膜炎」を引き起こし、最悪の場合は失明してしまうことあります。

妊娠中に治療できる?

淋病は症状が出ないことも多いため、定期的に検査を行っておくことが大切ですが、妊娠後に発覚することも多いです。妊娠中の治療は胎児に影響のない抗生物質によって行われますが、治療効果の高い抗生物質が使えないため、出産までに治療が間に合わないこともあります。

治療が間に合わない場合には、帝王切開による出産が選択されることになるでしょう。帝王切開による出産は母体に与える負担が大きくなりますが、淋菌が感染している産道を通らず産むことができるというメリットがあります。

淋病は生理に影響する?

淋病は、初め腟に感染し、放置すると子宮や卵管、卵巣へと広がっていきます。おりものが増えたり、異臭がしたり、不正出血が起きたりという異常はあるものの、感染初期から中期にかけて生理不順などに繋がることもあまりなく、自覚症状が出ないことも多いです。

ただ、淋菌の感染が進んで「骨盤内炎症性疾患」(子宮や卵巣などの骨盤内の臓器に起きる炎症)にまで発展すると、生理が終わった後に鈍い痛みが起きるようになったりすることもあます。また、不妊症につながることもあります(後述)。

生理自体に大きな変化が起きるわけではありませんが、おりものがいつもと違うと感じたら医療機関を受診してみると良いでしょう。

淋病と男性の不妊

淋病は男性にも無視できない影響があります。男性器に淋菌が感染すると、尿道炎が起こり、排尿時や射精時に痛みを感じるようになります。この症状を放置していると、淋菌が精巣上体に炎症を起こすことで精子の通り道をふさぐことがあります。こうなると、「無精子症」と呼ばれる精液に精子が含まれなくなる病気になり、不妊症の原因になります。

ただ、男性の場合、尿道の痛みが強く出るため、排尿時の痛みに気付いて医療機関を受診して、淋病が発覚する事が多いです。気をつけたいのは、急に痛みが無くなってしまった場合です。痛みがないのに感染が進んでいるケースもあるため、痛み以外に尿道から精液に似た白っぽい膿のようなものがでたり、精巣上部が腫れ出したりするようであれば、痛みがなくても早めに病院に行きましょう。

淋病と女性の不妊

淋病による不妊症は、男性よりも女性における方が危険です。女性の淋病は症状に気付きにくく、症状が進行してしまいやすいのです。女性の場合、腟に感染しても痛みなどの症状が出ず、子宮に進行したとしてもおりものの量や臭いに変化が出る程度であり、感染に気づきづらいです。

気付かないまま淋菌が、卵管や卵巣にまで広がっていくと注意が必要です。淋菌が卵管で広がると卵管炎が起こり、精子の通り道をふさいで受精を妨げ不妊症を引き起こすだけではなく、仮に受精できたとしても、受精卵が子宮に届かず卵管などで着床し子宮外妊娠になってしまうことがあります。

また、子宮内膜炎がおきると、早産や流産が起こりやすくなり、妊娠したとしても無事に出産できる可能性は低くなるのです。

分かりやすい症状が出れば良いのですが、なかなか気づきにくい上に不妊症の原因になるため、淋病は女性にとっては非常に怖い性感染症だと言えるでしょう。

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淋病と妊娠、不妊の関係についてご紹介しました。「何らかの性病かもしれない」と不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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