カンジダ症の原因と感染経路 性行為やキス?「薬の使用」「膀胱炎」との関係も解説
- 作成:2017/01/20
カンジダ症は良く知られているように性感染症の1つですので、性行為(セックス)で感染することがあります。ただ、薬が原因となって症状が出ることもあります。カンジダ症の原因について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
- さまざまな症状が出るカンジダ症
- カンジダの男女共通の症状 口の症状とは?
- カンジダ症、男性特有の症状
- カンジダ症、女性特有の症状
- カンジダ症と間違いやすい病気
- カンジダ症の原因となる菌はどんなもの?
- カンジダ症の感染経路 性行為でうつる?
- カンジダ症の発症、ストレスや疲労の場合も
- カンジダ症と薬・膀胱炎の関係とは?
- カンジダ症は自然治癒する可能性がある?
- カンジダ症の放置リスク
- 病院を受診するタイミングは?
- カンジダ症は何科へ?
- カンジダ症は治療で完治する?再発する?
さまざまな症状が出るカンジダ症
カンジダ症は、「カンジダ」という真菌の感染によって成立する、真菌感染症の一種で、性行為や免疫力の低下によって、症状が現れることが知られています。カンジダ症では、様々な症状が見られます。
カンジダは、皮膚や腸管だけでなく、女性の生殖器周辺に存在していますが、通常はカンジダ症の症状が現れることはありません。しかし、糖尿病で血糖のコントロールが悪い場合や抗癌剤で治療中の癌患者、エイズ患者といったように免疫力が低下している人や妊婦さんは、カンジダ症の症状が現れやすくなります。カンジダ症は、免疫力が低下している人に発症する性行為感染症(一般的に「性病」と言いいます)の一つされています。
なお、こちらの原稿では、性病としてのカンジダ症の症状について解説します。性病以外のカンジダ症の症状は、『カンジダ症で口内炎?喉や舌に影響?アレルギーも悪化?皮膚炎にも?性病以外の症状を解説』で解説しています。
カンジダの男女共通の症状 口の症状とは?
カンジダ症は性病であるため、男女ともに発症しうる病気です。性病による症状は性行為に関わる部位、つまり性器や口腔などに出現します。特に、口腔内の症状は、男女ともに共通してみられます。
具体的には、口腔内に痛みを伴うクリーム状の斑点が出現したり、舌の表面に厚い苔(こけ)状のものができたりします。他にも、口の端の部分がひび割れる(口唇炎<こうしんえん>)や舌が赤くなり、痛みを伴い、平滑になるといった症状が現れます。また、口の症状が出ると、食事が困難になるため、体重減少が見られることもあります。
カンジダ症、男性特有の症状
男性はカンジダ菌を保有していても、症状がほとんど出ません。しかし、糖尿病で血糖値が高くなっていたり、エイズなどの免疫力の低下している患者、包茎の方には症状が現れることがあります。
カンジダ症には、男性特有の症状もあります。具体的には、「陰茎の亀頭がかゆくなりただれる」「亀頭が赤くなり、白い物が出る」「亀頭に小さな水疱(水ぶくれ)ができる」といった症状があります。また、カンジダ症はまれに尿道炎を起こし、痛みを伴い、尿道から膿が出ることもあります。
カンジダ症、女性特有の症状
女性の場合は、原因となる菌の「カンジダ」が、自身の生殖器周辺に存在していることもあり、風邪や疲労、ストレスなどによる免疫力の低下でも症状が出ます。特に、女性のカンジダ症は、腟と外陰部で同時に症状が現れやすいことが知られています。
女性特有の症状も存在します。具体的には、外陰部や腟のかゆみや痛みを生じます。他にも、ヨーグルト状のおりものが増加したり、おりものがにおいが強かったり、性交時の痛みなども生じます。また、女性の性器と尿道は近いため、排尿障害なども生じやすいことが知られています。
カンジダ症は一度治っても、免疫力が低下すれば再び症状が現れるため、予防が非常に重要となります。
カンジダ症と間違いやすい病気
また、外陰部のかゆみや発疹や発赤そしておりものの異常においては、カンジダ症に大変間違われやすい疾患も少なくありません。以下のようなものがあります。
・性器ヘルペス
・接触性皮膚炎
・皮膚そう痒症
・ビダール苔癬
・外陰部パジェット病
・腟トリコモナス症
・細菌性腟症
・子宮頸管炎
・骨盤内感染症
他の病気の可能性を確かめたり、診断確定を受け、適切な抗真菌薬の治療を開始するためにも「腟内や外陰部のかゆみや発疹や発赤」「独特なおりものの異変」があった場合は病院を受診してみましょう。
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カンジダ症の原因となる菌はどんなもの?
カンジダ症の原因となるのは「カンジダ」という、真菌の一種です。カンジダは、皮膚や腸管、女性の生殖器周辺に存在しています。カンジダが繁殖して皮膚や粘膜に炎症を起こすとカンジダ症になります。ただ、健康な人であればカンジダ症の症状が起こることはありません。
カンジダ症の症状が現れるのは、風邪、ストレス、寝不足、疲労などで体力が落ちた時、あるいは糖尿病で血糖値が高くなっていたり、エイズや抗癌剤の使用患者さんといったように免疫力が低下している方です。それ以外には、風邪、膀胱炎、淋菌、クラミジアなどの治療で抗生物質を服用した後などにも、カンジダ症になることがあります。
カンジダ症の感染経路 性行為でうつる?
カンジタは、皮膚や腸管といった部位に存在する、常在菌の一種で、性行為(セックス)と関係なく、女性のうち約10%が、腟内にカンジタ菌を保有していると言われています。体力の低下、腟環境の変化、抗生物質の連用(連続使用)などによって、腟内や外陰部で増殖します。その結果、カンジダ症が発症すると、性器部分のかゆみや痛みといった症状が生じます。また、口腔内でカンジダが繁殖すると、口の粘膜に痛みを感じます。
また、カンジダ症は性行為によって感染し、悪化することがあるとされています。カンジダ症の自覚症状がある時に性行為を行ってしまうと、症状を悪化させてしまうだけでなく、パートナーに感染させてしまう場合があります。したがって、自覚症状がある際にはセックスは控えた方が良いでしょう。
また、口腔内にカンジダ症の症状が出ている場合、パートナーにカンジダをうつしてしまう恐れがあるため、自覚症状があるならキスも控えた方が良いでしょう。
カンジダ症の発症、ストレスや疲労の場合も
上記のように、カンジダは性行為などの接触で感染することは知られています。たしかに、カンジダの主な感染経路はセックスを含めた接触ですが、カンジダは「常在菌」の一つであり、もともと人間の体内に存在していることもあります。
「常在菌」は通常、体に害を与えることはありませんが、何らかの理由で体力が低下する、免疫力が低下する、といった体内の環境が変化することで、体に害を与えることがあります。カンジダも同様で、風邪や疲労、ストレスによる体力の低下、糖尿病で血糖コントロールが悪い場合やエイズなどによる免疫力の低下があると、口腔内の痛み等の症状を生じます。
つまり、カンジダ症を発症したからといって、直前のセックスを含めて接触に原因があるとは言い切れません。
カンジダ症と薬・膀胱炎の関係とは?
カンジダは常在菌ですが、いろいろな原因によってカンジダ症としての症状をきたしうる真菌です。具体的には、「薬の治療」「膀胱炎」といったような、性病とは、一見関係ないような行為、病気がカンジダ症に関係していることがあります。
皮膚のかゆみから膠原病の治療まで、幅広く使われる「ステロイド」は、カンジダ症を発症させうる薬の1つです。ステロイドとは、免疫力を抑制するという作用があります。少量のステロイドを使用しても免疫力が著しく低下することはありませんが、大量にステロイドを使用すると著しく免疫力が低下し、その結果カンジダ症を生じることがあります。他にも、「免疫抑制剤」という種類の薬でも同様のメカニズムでカンジダ症を生じることがあります。
一方、カンジダ症は、口腔内の痛みや性器部の痛み以外にも、膀胱炎の症状を起こすことがあります。というのも、性器と尿道は物理的に近いため、何らかの理由で、尿道内にカンジダが侵入して膀胱炎を引き起こすことがあるためです。
以上の通り、カンジダ症は様々な原因により発症し、様々な症状をきたしうる病気だと言えます。
カンジダ症は自然治癒する可能性がある?
医学的には、カンジダ症が自然治癒する可能性はほとんどないと考えられています。それはカンジダ症の発症原因が「カンジダ真菌」というカビの一種の異常増殖だからです。カンジダ真菌は、主に、消化器、腟、口腔、咽頭(のど)などの粘膜、さらに健常な皮膚であっても、主に腋窩(えきか、わき)や陰股部(いんこぶ)などに常にいます。
カンジダ真菌そのものは、「常在菌(常に存在する菌)」であり病原体とはいえませが、異常増殖することで症状を引き起こします。そのため、カンジダ症の治療には異常増殖したカンジダ真菌を死滅させることが必要となります。
カンジダ症の放置リスク
なにもせず症状を放置し、医薬品などの薬を使用しないままでいると、異常増殖した真菌はそのまま居座り続けますので、当然症状の悪化や不快感が継続します。カンジダ症に似た症状の出る別の病気である可能性もが懸念されることもあるため、「自然治癒する」と信じて放置するようなことは避けてください。
病院を受診するタイミングは?
日本では約20%の女性がカンジダ症を経験しているといわれています。カンジダ真菌が異常増殖するきっかけとして、以下のようなものが考えられています。
・風邪、疲労、ストレスなど免疫力が低下している
・生理前などでホルモンバランスの変化がある
・抗生物質を使用している
・妊娠中
・きつい下着や陰部が湿気をおびやすい服装を身に着けている
・HIVウィルスに感染している
・糖尿病
カンジダ症の特徴的な症状は「腟のかゆみ(内部とその周辺)」「おりものの異変(粘度の高い、白い、カッテージチーズ状、おから状、ヨーグルト状のようなおりものの量が多い)」「腟の異変(腟内がヒリヒリする、腟に刺激感がある、腟が焼けるような熱をおびている、腟や外陰部の発疹や発赤がある)」「排尿時に痛みがある」「性交時の痛み」などです。
製薬会社による啓発活動や婦人科では、症状がひどくならないためにも「腟内や外陰部のかゆみや発疹や発赤」そして「独特なおりものの異変」この2点がみられたらカンジダ症を疑い、病院(婦人科や産婦人科)を受診するタイミングとしています。
カンジダ症は何科へ?病院の検査はどんなもの?
カンジダ症を疑ったら、まず婦人科を受診しましょう。独特なおりものが通常よりも多く出るという特徴があるため、診断は比較的容易といわれています。
病院の検査では、まず問診を実施、腟や外陰部の症状を視診した後、内診台(ベッド)に横になり腟内に腟鏡を挿入して腟の内部を診ます。その際に腟内の分泌物を採取し培養検査あるいは顕微鏡検査によってカンジダ真菌の増殖を確認することで、確定診断となります。分泌物の採取には、細長い棒のようなものを使用します。
カンジダ症は治療で完治する?再発する?
カンジダ症の原因となる「カンジダ」は真菌の一種ですので、治療には、抗真菌薬が使用されます。抗真菌薬配合(イミダゾール系のエンペシド、フロリード、アデスタン、オキナゾールなどを使用)の腟錠(腟の内部へ挿入する錠剤)と外陰部へ塗る軟膏やクリームが処方され、約1週間程度の継続的に使うこととなります。
カンジダ症は、適切に抗真菌薬を使用すれば完治します。しかし、真菌が異常増殖する環境が整えば再発を繰り返します。
再発防止のためには、真菌が異常増殖する環境要因をなるべく排除した生活を送ることが大切です。睡眠や食事などに気をつけながら体力をつけ免疫力をつける、ストレスをためない、陰部を締め付けるような下着を身に着けない、など自分でコントロールできる部分はしっかり管理しておきましょう。また、妊娠中もカンジダ症を発症しやすいため、腟、外陰部、そしておりものの異常を感じたら、すぐに産婦人科を受診してください。
カンジダ症の症状、原因についてご紹介しました。もしかしてカンジダ症かもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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