尖圭コンジローマの原因、感染率、治療方法は?検査や市販薬の有無も解説

  • 作成:2017/01/20

尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが原因で起きる、性感染症で、性行為を通じて感染します。尖圭コンジローマは、以前は手術による外科的な治療がメインでしたが、近年では薬も登場しています。どのような治療法があるのかを、治療期間や治療費、検査の概要も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は6分です

目次

コンジローマとコンジロームは同じ?

「尖圭コンジローマ(せんけいこんじろーま、Condyloma acuminatum)」は「尖圭コンジローム」と呼ばれることもありますが、両者は同じものです。2003年に施行された感染症法の改正によって「尖圭コンジローム」と表記されていましたが、2013年に「尖圭コンジローマ」に変更されています。したがって現在では尖圭コンジローマという表現に統一されており一般的です。また、尖圭コンジローマに類似した言葉として「扁平コンジローマ(へんぺい)」があります。扁平コンジローマは梅毒に見られる症状であり、陰部や肛門に発疹が生じます。尖圭コンジローマと症状の出現する部位も同様ですが、原因が異なりますので、混同しないように注意が必要です。

尖圭コンジローマの原因とは何?

尖圭コンジローマは性感染症の一つであり、ヒトパピローマウイルス(HPV)の「6型」や「11型」によるウイルス感染症です。性行為や類似した行為によって感染し、性器や肛門周囲に疣(いぼ)ができます。基本的には性活動の活発な世代に発症しますが、医療従事者や両親を通じて幼児に感染することも稀にあります。また、妊娠中に感染している場合は、産道を介する「垂直感染」と呼ばれる形式で感染する可能性もあります。

HPVには複数の種類(型)が存在し、100種類ほどが知られていますが、型によって感染部位や症状が異なります。皮膚感染を起こす型としては、1、2、4型が良性のいわゆる疣(いぼ)を生じ、5、8、47型が皮膚癌の原因となります。

粘膜に感染する型としては、6、11型が尖圭コンジローマで、16、18、31、33、35、45、52、58型は子宮頸がん(しきゅうけいがん)の原因となります。このうち子宮頸がんの予防などに使われるHPVワクチンの対象となっているのが6、11、16、18型になります。したがって、HPVの型の把握が、治療や予後のために重要となります。

尖圭コンジローマの感染経路は性行為

尖圭コンジローマは大部分が性行為やそれに類似した行為、すなわち性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)等が原因で感染します。ヒトパピローマウイルス(HPV)は性的な接触によって皮膚や粘膜の小さな傷から侵入し、皮膚の「基底細胞」と言われる細胞に感染します。その後、はがれ落ちた皮膚とともに、他の部位や他人に感染を広げていきます。したがって性的接触の多い方ほど感染リスクが高くなると言えます。また、症状が現れるまでには3週間から8か月(平均2.8か月)かかるため、パートナーが一定していない方の場合、誰から感染したのか知ることは難しくなります。

予防としてコンドームは有効ですが、広い範囲に感染がある場合には完全に予防することはできません。さらに外陰部にアトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎などがある場合にはその傷を介して特に感染しやすくなるので注意が必要です。性行為以外の感染経路としては、手指などを介して感染することもまれに起きます。

尖圭コンジローマの感染率は?

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)によるウイルス感染症ですが、たとえウイルスに感染していたとしても実際に発症するのは約3%の人にとどまり、多くの場合は感染しても発症しません。実際に発症するかどうかは免疫力によるところも大きく、免疫力の低下している方では発症しやすくなります。

発症するかどかうとは関係なく、尖圭コンジローマに感染している方と性行為を行った場合にHPVに感染する確率は、およそ60%から70%であると言われています。しかし、自覚的な症状がほとんどなく、尖圭コンジローマとして発症しない限り気付かれないことが多いのです。

20代妊婦さんの低リスク型HPV(尖圭コンジローマのウイルスなど)の感染率は10%から13%ほどとされています。また、男性では特に包茎の方では感染率が高く、一度感染した場合に再発しやすい傾向にあります。

男性と女性で感染経路が違うことがある?

尖圭コンジローマの主な感染経路として男女ともに性行為、あるいはそれに類似した行為(性器と口、性器と肛門を介するもの)が挙げられます。2003年の「感染症発生動向調査」(国立感染症研究所)では、男性3281人、女性2925人とやや男性に多く、年齢もほぼ同じ範囲に集中していました。

男性の方が多い理由として、性器が表に出ているため発見しやすいのに対して、女性の場合には、腟内部などにできれば発見しにくいという点が挙げられます。また、男性どうしの性行為では肛門や肛門周囲に疣が発生する場合があります。このように尖圭コンジローマの発生部位に違いが見られる場合はありますが、感染経路としては基本的に男女とも同じです。予防にはコンドームの装着が有効なケースもありますが、感染の範囲が広い場合にはコンドームでも予防できないことがあるので注意が必要です。

また、女性ではHPVワクチンを打っておくことも有効です。このワクチンはウイルス感染する前に接種することが重要であり、子宮頸がんの原因となるHPV16,18型、尖圭コンジローマの原因となるHPV6,11型の4種類を防ぐことができます。

尖圭コンジローマは完治するが、再発率高い

尖圭コンジローマは完治可能な病気ではありますが一般に再発率が高く、治療後3カ月以内におよそ25%の患者が再発すると言われています。その理由としてヒトパピローマウイルス(HPV)は見た目で分かる疣(いぼ)だけでなく、周囲の皮膚にも潜伏感染しているため、いぼを取り除いたとしてもなかなか完全に治療するのが難しいことが挙げられます。手術や薬物療法によっても完全にはヒトパピローマウイルス(HPV)を体内から排除することはできません。

通常、HPVの感染から尖圭コンジローマを発症するまでには、3週間から8か月(平均2.8か月)かかるとされていますので、治療終了後も3カ月間程度は再発がないか経過を見ることが重要で、「最低でも約半年間1度も再発が無い」という場合に完治したと考える方がよいでしょう。特に包茎の方は感染率が高く、一度感染した場合に再発しやすいとされています。

また、HPVに感染している方は、患者自身が完治したとしてもパートナーがHPVに感染している場合には再び感染する危険性があります。

したがって治療後3か月間は医療機関を受診し、再発がないかどうかを確認する必要があります。また、再発を防ぐためには免疫力を高めておくことが重要であり、ウイルスの活動性を抑えて症状が出にくくすることが大切です。したがって、疲れやストレスを溜めないことや、体力を低下させないようにすることが再発を予防する上で重要となります。感染が起きた場合には、パートナーも医療機関を受診し、必要であれば治療することも大切になります。

尖圭コンジローマの他の記事


尖圭コンジローマの検査はどんなもの?

尖圭コンジローマの症状は、「カリフラワー状:と表現されるような特徴的な形態であるため、一般に特別な検査を行わなくても、症状の出た部分を見て、診断が可能です。子宮頸部などで症状の広がりを判定するためには、「コルポスコピー」という、病変を酢酸で処理した後に特殊な顕微鏡のような機械で観察して調べる検査をします。さらにヒトパピローマウイルス(HPV)には多くの型が存在しています。尖圭コンジローマは低リスク型のHPV6型と11型がほとんどですが、中には高リスク型のウイルスが症状を引き起こす場合もあり、感染した型を確定することも重要となります。

さらに詳しく組織学的な診断を行うには、外来で病変のいぼを少し切り取る小手術を行い、採取した組織から可能であればHPVのDNAの有無や、型を判定していきます。低リスク型の場合には悪性化することはありませんが、がんなどの原因となる高リスク型HPVが見つかった場合には、治療後も注意深く経過を観察する必要があります。可能性を確かめるべき重大な病気として、ボーエン様丘疹、性器ボーエン病、腟前庭部乳頭腫、扁平コンジローマ、老人性疣贅(ユウゼイ)、外陰がんなどと呼ばれる病気があります。不安な場合は、医師らに確認してみるとよいでしょう。

尖圭コンジローマに使う薬

以前までは液体窒素やレーザーといった外科的な治療が主流でしたが、尖圭コンジローマの治療薬として世界で広く使われている薬が日本でも2007年に保険適応となりました。それが「ベセルナクリーム5%(一般名:イミキモド)」と言われる薬です。ベセルナクリームは塗り薬であり、1日1回、週3回、就寝前にぬり、4か月間使用できる薬です。

ベセルナクリームは「IFN-α(インターフェロン-アルファ)」というタンパク質を介して、ヒトパピローマウイルス(HPV)の増殖を抑制し、免疫を活性化させる作用があります。治療には長期間を要し、最低8週間以上続けて使用します。

注意点として、尿道や腟内、子宮頸部、直腸、肛門内には使用できません。そのため、尖圭コンジローマの発生している場所によっては塗り薬だけでは治療困難で、外科的な治療が必要になります。副作用としては塗った部分が赤くなる、ただれる、皮膚がはげる、痛みなどがあります。

この他の薬物療法としては10%程度の「ポドフィリン」という種類のアルコール溶液をぬるタイプのものがありますが、日本では発売されておらず、毒性が強いため妊婦には使用できません。したがってポドフィリンアルコールを使用する場合には保険は適応されませんので、自費診療となります。

尖圭コンジローマに市販薬がある?

尖圭コンジローマは適切な治療をしても再発することがあり、放置していても自然治癒することはなかなか難しいのが現状です。したがって早期の発見と治療が大切となりますが、性病ということもあり病院に行くことに抵抗のある方も多いかと思います。ただ、ベセルナクリーム(一般名:イミキモド)を購入するには医師の処方箋が必要となります。

医師の処方箋なしで購入する方法としては、海外からの個人輸入が挙げられます。こうした方法で購入することは可能ではありますが、危険性もあるため注意が必要です。特に安価で購入できるものは製造過程が不明確であったり、安全性や衛生面での信頼性も分からないため、個人輸入をおすすめはできません。

また、副作用として正常な皮膚がただれて、はれるといったこともあり、治療効果を判定する上でも病院を受診しながら処方された薬を使用することが、安心であると言えます。

尖圭コンジローマの治療で手術をすることがある?

尖圭コンジローマの治療には薬物療法と並ぶ主たるものとして外科的な治療が挙げられ、こちらのほうが古くから行われています。外科的治療にもいくつか種類がありますが、代表的なものとして尖圭コンジローマの(いぼ)部分を直接切除する方法、液体窒素で凍らせて取り除く凍結療法(後述)、電気メスと呼ばれる器具で焼いて切除する焼灼術(しょうしゃくじゅつ)、CO2レーザーによる摘出術などがあります。

基本的にはいぼ周囲に麻酔をかけて、電気焼灼やレーザー治療によって、いぼを一つずつ切除することになります。特に、CO2 レーザー治療は、治療による周辺組織への損傷が少ないことや、治療効果が高いことから非常に優れているとされています。しかしながら、尖圭コンジローマは疣だけでなく周囲の皮膚にもすでにウイルスが存在しています。したがって1度の治療で完治するわけではなく、継続して治療を続けることが大切です。

液体窒素による治療はどんなもの?

液体窒素を用いた凍結療法はマイナス195℃の超低温に冷やした液体の窒素を、いぼに押し付けて凍結させる方法です。局所麻酔はせず、綿棒などで液体窒素を押し付けて凍らせることで、いぼを壊死させて除去します。重症度や病変の大きさによって回数が増えるため、小さな尖圭コンジローマに対してはより有効な治療法です。ただし、再発する可能性が、他の外科的治療法(焼灼術、レーザー治療)に比べて高いことが欠点として挙げられます。

尖圭コンジローマの治療費

尖圭コンジローマの治療は症状や重症度、再発が多いことからも治療期間が長くなることがあります。また、塗り薬などの薬物療法や液体窒素、レーザーを用いた外科的治療というように治療法も多岐にわたるため、治療費も大きく異なります。目安としては保険証があり、3割負担の場合で、数千円から数万円程度の範囲です。

あくまで参考ですが、塗り薬を用いた治療で1週間の薬代が2000円程度、レーザーや液体窒素を用いた外科的治療の場合、1回あたり男性で3000円から4000円、女性で7000円程度の費用がかかるそうです。

この他の初診の場合は初診料や必要な検査費用が必要になります。医療機関を受診する際には、ご自身の病状に合わせてどの治療法が最適なのか医師と相談し、保険適応の有無、費用などについて納得した治療を受けるようにしましょう。

尖圭コンジローマの治療期間

尖圭コンジローマは、外科的治療によっていぼを切除したとしても、周辺の皮膚にもウイルスが潜伏しているため完治させることは難しく、およそ25%の患者が治療後3か月以内に再発すると言われています。さらに塗り薬のベセルナ(一般名:イミキモド)も通常8週間から16週間ほど継続して治療を続ける必要があります。したがって、潜伏しているウイルスによって再発する期間を考慮し、治療を受けてから半年程度再発がない場合に治療が完了したと考えられます。

性病に関連するその他の記事


尖圭コンジローマの検査から治療についご紹介しました。「何かの性病かもしれない」と不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師