HPVワクチンは何歳まで効果があるの?費用は?どこで打てるの?
- 作成:2022/01/27
2021年11月26日に厚生労働省の委員会で話し合いが行われ、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの積極的勧奨(ワクチン接種を勧めること)が再開しました。 2022年4月からは、無料でワクチンが打てる方(現時点では12~16歳の女性)には、郵送で案内が届く予定です。また、2022年から数年間は16~24歳の女性(1997~2005年度生まれ)もHPVワクチンが無料で接種できる予定です。 今回は、淀川キリスト教病院産婦人科医の柴田綾子先生が、HPVワクチンの効果や費用、どこで打てるのかなど、よくあるご質問を解説します。
この記事の目安時間は6分です
1.HPVワクチンを打ったほうがいい人はどんな人?
HPVワクチンの効果が高い人
1)性行為体験前の9歳以上の男性・女性
2)性行為の経験のある26歳以下の男性・女性
HPVワクチンの接種を希望する方は「何歳でも」自費で接種することができます。研究で子宮頸がんや異形成(子宮頸がんの前段階)を予防する効果が報告されているのは、45歳未満になります。45歳未満の方であれば、HPVワクチンの接種することで、子宮頸がんのリスクを減らす効果が研究で認められています(1)。
さらにHPVワクチンの効果が高いのは、26歳以下にワクチンを接種した場合となりますので、26歳以下の方は、ワクチン接種を強くお勧めします。アメリカCDC(Centers for Disease Control and Prevention)でも26歳以下の男女にはHPVワクチンが勧められています(2)。
子宮頸がんの主な原因となるヒトパピローマウイルスは16型・18型で、現在国内で承認されているHPVワクチンはそれぞれのウイルスに対抗できる2価・4価・9価の3種類があります。
*2価…HPV16型・18型の2つの型に対するワクチン
*4価…2価と、良性の尖圭コンジローマの原因となるHPV6型・11型の4つの型に対するワクチン
*9価…4価と、HPV31型・33型・45型・52型・58型の9つの型に対するワクチン
国内では12~16歳の女性(小学6年生から高校1年生相当)は無料でHPVワクチン(2価、4価)を接種することが可能であり、17歳以上の女性とすべての年齢の男性は、HPVワクチンを接種する場合、自費でも対応となっていました。
2021年12月23日に厚生労働省は、16~24歳の女性(1997~2005年度生まれ)にもHPVワクチンを無料で接種できるようにしようと決定しました(これは2022年4月以降に開始される予定です)。
2.性行為をしてしまったらHPVワクチンは効果が無いの?
性行為の経験がある方でもHPVワクチンの効果はあります。ただしHPVワクチンは、「初めての性行為をする前」に打つ方が一番効果が期待できます。
性行為をすれば、多くの方はヒトパピローマウイルスに感染します。HPVワクチンは、すでに自分に感染しているウイルスを治療したり排除したりすることはできません。そのため性行為後の場合は、HPVワクチンの効果が少し下がると言われています。
スウェーデンからの報告では、子宮頸がんのリスクは、16歳未満にHPVワクチンを打った方では、88%リスクを減らせる。17~30歳にHPVワクチンを打った方では、53%リスクを減らせると報告されています(3)。
*HPVワクチンを接種しなかった方と比較したリスク減少
3.HPVワクチンの費用は?
日本では十分な抗体をつけるために3回接種が勧められています。
*2価(サーバリックス)と4価(ガーダシル®)…1回約1.5~1.7万円
*9価(シルガード®9)…1回約3.3~3.6万円
※注意:自費のため施設によって異なります。
4.男性がHPVワクチンを打ったときの効果は?
男性は、4価(ガーダシル®)が適応になっています。男性の方がHPVワクチンを打つことによって、肛門がんや喉のがん、尖圭コンジローマにかかるリスクを減らすことができます。また、男性がHPVに感染しないことで、パートナーの女性へHPVを移さないようにすることもできます。
5.HPVワクチンの副作用は?
HPVワクチンは新型コロナウイルスのワクチンと同じように「筋肉注射」で行います。50%以上の方で注射を打った翌日に皮膚の腫れ、赤み、痒み、発熱、頭痛などが出ることがありますが、数日で改善します。
厚生労働省の調査では、HPVワクチン接種後に「何らかの体調不良や異常」があった方は1万人あたり9人、そのうち重篤と判断されたものは1万人あたり約5人でした(図:厚生労働省「HPVワクチンに関するリーフレット」より)。
手足の力が入りにくい、感覚の異常などの症状が出た方は1%未満で、ほかの予防接種やワクチンと比較して大きな差は出ていないと考えられています。
6.HPVワクチンはどこで打てるの?
1)12~16歳の女性で無料接種(定期接種)を希望する方
お住まいの自治体のHPで「定期接種をしている施設」を探して、電話で予約をします。
定期接種の場合は2価(サーバリックス)か4価(ガーダシル®)のHPVワクチンになります。
※定期接種できる施設は各自治体で決められています。
2)17歳以上の女性、すべての年齢の男性、9価(シルガード®9)を接種したい方
ご自身にてインターネット等で検索し、施設に電話をかけて予約します。ワクチンの在庫が限られているため、予約なしで受診すると当日にワクチン接種ができないことがあります。
※2022年4月以降に開始される16~24歳の女性の無料接種の方法は現在議論中です。
<HPVワクチンの検索サイト>
- 女性医療ネットワーク「子宮頸がん検診やHPVワクチンに関する相談可能な医療機関リスト」
- 予防医療普及協会「HPV9価ワクチン 医療機関リスト」
- MSD製薬「子宮頸がん予防情報サイト もっと守ろう.jp」
産婦人科医からのお願い
日本では1年間に約1万人の女性が新たに子宮頸がんにかかり、約2900人の方が子宮頸がんが原因で亡くなっています(4)。現在、12~16歳の女性は無料でHPVワクチンを接種でき、2022年4月からは16~24歳の女性も無料で接種できるようになる予定です。この機会にHPVワクチンの接種について、ぜひ検討してみてください。
参考資料
1)コクラン.子宮頸がんおよび子宮頸部前がん性病変の予防を目的とするHPVワクチン接種. 9 May 2018
2)米国疾病予防管理センター(CDC):HPVワクチン. November 16, 2021
3)最新学術情報.YOKOHAMA HPV PROJECT. HPV ワクチン接種と浸潤性子宮頸がんのリスク低下~スウェーデンからの最新情報~
Lei J, et al. HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer. N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1340-1348. doi: 10.1056/NEJMoa1917338. PMID: 32997908.
4)国立がん研究センター.がん情報サービス.子宮頸がん
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