子宮頸がんはH P Vワクチンで予防できる 定期検診で早期発見を
- 作成:2021/11/12
子宮の入り口付近にできる子宮頸がんは、子宮がん全体の80~90%を占めます。最近は20~30歳代の若い世代に増え、ワクチンや定期検診への取り組みが求められています。
この記事の目安時間は3分です
“ありふれたウイルスH P V”が起こす子宮頸がん
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(H P V)の長期間の感染が主な原因です。H P Vは、生活の中に存在するありふれたウイルスで、性交渉で感染します。女性も男性も、多くの人が一生に一度は感染するといわれています。
通常は、感染しても免疫機能によってウイルスは排除されます。しかし、ウイルスが排除されずに感染が長引くと、細胞ががん化して子宮頸がんを発症するのです。20〜30歳代後半という若い世代や、妊娠・出産の回数が多い人ほどかかりやすいともいわれています。
子宮頸がんの初期には、症状がまったくないのがほとんどです。ある程度進行すると、月経時以外の出血、臭いの強いおりものなどの典型的な症状が現れます。
20年前に比べ、若い世代の子宮頸がんが2~3倍に増えていることもあり、厚生労働省では20歳からの検診を推奨しています。婦人科検診に抵抗がある人は少なくありませんが、検診を受けることで子宮頸がんの早期発見につながるばかりでなく、子宮筋腫や卵巣の異常など、他の婦人科の病気がわかるきっかけにもなります。
証明されているH P Vワクチンの効果
H P Vには様々な型があります。日本のデータでは、子宮頸がんの40〜50%はH P V 16 型、20〜30%はH P V 18 型が原因だとわかっています 。また、H P V 16・18 型は、感染後がんに進むスピードが速いこともわかっており、感染した女性は感染していない女性に比べて200〜400 倍も子宮頸がん発症の危険度が高いといわれています。
H P Vには感染を予防するワクチンがあります。現在、日本国内で厚生労働省が承認している H P V ワクチンは、2価 ワクチンと4価ワクチンの2種類で、2価ワクチンはH P V 16・18 型に対するワクチンです。4価ワクチンはH P V 16・18 型に加え、H P V 6・11 型(尖形コンジローマという病気の原因になる)に対するワクチンです。
ワクチン接種を広く進めたオーストラリア、イギリス、アメリカ合衆国などでは、ワクチン接種に取り組んだ世代で、接種した人も接種しなかった人もH P V 16・18 型の感染率が低下したという調査結果が出ています。ワクチン接種率が高くなると感染している人の数が減り、接種していない人もウイルスにさらされ感染する機会が激減したということ。
H P Vワクチン接種を早くから積極的に取り入れた国々では、近い将来、子宮頸がんや H P Vが原因の他の病気で死亡する人が大きく減ると予想されています。
ワクチン抑制で懸念される子宮頸がんリスク
2019年5月、W H Oは「世界的な公衆衛生上の問題:子宮癌の排除」の行動を呼びかけました。ワクチンと検診、治療を推し進める内容です。それに応えた世界の国々で、H P Vワクチンが認可されました。 2020年3月の時点で、90 か国以上で予防接種プログラムが実施されています。
日本でも2010 年度から公費助成が始まり、2013 年4月には予防接種法に基づき、H P Vワクチンは定期接種になりました。しかし、接種後に激しい全身の痛みや運動障害など、様々な副反応が報告され、2013 年6月、厚生労働省から接種の積極的勧奨の一時差し控えが発表されました。今年10月1日に厚生労働省は積極的な接種推奨を再開する方針を示し、再開に向け議論を進めています。
このような背景が影響して、 1994〜1999 年度生まれの女性のHPV ワクチン接種率は約70%でしたが、2000 年度以降生まれの女性では接種率が激減。とくに2002年度以降生まれの接種率は1%未満です。
2000年度以降に生まれた女性は、ワクチン導入前の世代と同程度の子宮頸がん発症リスクに戻ると予想されています。日本産科婦人科学会では、子宮頸がんのリスクを減らすために国が積極的勧奨を再開し、対象年齢を過ぎた女子にも接種の機会を与えてほしいと提言しているのです。
参考
厚労省ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
日本産科婦人科学会 子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
WHO 世界的な公衆衛生上の問題「子宮頸がんの排除」日本語翻訳版
http://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/WHO-slides_CxCaElimination.pdf
国立がん研究センターがん対策情報センター
https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
日本医師会 知っておきたいがん検診 子宮頸がん検診 子宮頸がんとは
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/cervix/what/
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