ギランバレー症候群の原因、症状、検査 脱力が特徴?膝で何がわかる?初期症状はある?
- 作成:2016/08/22
ギランバレー症候群の原因は、まだ十分に解明されていませんが、ほとんどが「カンピロバクター」という菌への感染が原因と考えられています。特徴的な症状や、診断基準を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
ギランバレー症候群とは?
ギランバレー症候群は、末梢神経に異常をきたす病気です。人の神経系は「中枢神経系」と「末梢神経系」から成り、中枢神経系とは脳と脊髄のことです。対して、末梢神経とは手や足、目や耳、皮膚などの感覚器官、また各臓器にある神経のことです。この末梢神経に異常が生じて、動けなくなったり、感覚がなくなったりする障害が出ることを「ニューロパチー」と呼びます。ギランバレー症候群はニューロパチーの1つです。
どの年齢層でも発症しますが、男性のほうが女性より多く、日本の統計では、男女比率は3対2で、10万人に1.15人が発症するとされています。一年を通して発症率はあまり変わりません。
ギランバレー症候群の原因 カンピロバクターも関係
ギランバレー症候群の約7割で、感染から約4週間以内に、前駆症状として、上気道感染、下痢(腸感染)などの症状が先行してあらわれます。先行感染の主要な病原体は、「カンピロバクター(Campylobacter)」「サイトメガロウイルス」「EBウイルス」などが特定されていますが、ほとんどの先行感染病原体は不明のままです。ギランバレー症候群の原因は完全に解明されたわけではありませんが、ウイルスや細菌の感染が引き金となって、免疫系が神経細胞を破壊するメカニズム(「自己免疫」と言います)が考えられています。
人の免疫系は、本来ならば、自分とは異質のものに対して「抗体」という武器のようなものを作り、異物を排除する仕組みです。しかし、感染した微生物の持つ成分が、人が本来持つ成分とたいへん似ている場合、作られた抗体は人自身が持つ成分にも反応して、自分の細胞を壊してしまいます。これが「自己免疫」です。
カンピロバクター感染によるものでは、菌が持つ成分と人の神経細胞が持つ「ガングリオシド」という物質成分が、たいへんよく似ている(専門的には「分子相同性」といいます)ために起きるのではないかと推定されています。
カンピロバクターは鶏や豚などの家畜の腸に住んでいる菌で、食肉から人へ感染します。十分に熱のとおっていない肉などを食べることで感染し、腹痛や下痢、発熱の症状が出ます。多くの場合、感染による腸炎の予後は良好ですが、数日後から3週間くらいまでにギランバレー症候群を発症することがあります。
ギランバレー症候群の症状 初期症状がある?
ギランバレー症候群は、典型的には、先行感染の1週から4週後に手のひらや足底のびりびり感で発症し(感染者に症状がある割合 50%以上)、同時または少し遅れて脱力をきたします。よって手足のしびれ、または脱力が初期症状です。初期の脱力は下肢(足部分)に多く、発症から数日以内に、駅の階段が上りにくい、速く歩けない、など歩行障害(同54%)を自覚します。脱力が足だけでなく、腕に同時に出現する場合(同32%)もあります。
症状は徐々に進行し、筋力低下の程度、範囲ともに拡大し、多くの場合では2週以内、遅くとも4週以内にピークに達します。重症化すると呼吸筋マヒにより人工呼吸器が必要になったり、重い後遺症が残ったりすることもあります。1ヶ月以内に症状がピークを迎えたあとは、徐々に回復に向かうのが一般的です。
ギランバレー症候群の検査
ギランバレー症候群の診断は、典型例では病歴と症状とその確認で十分可能です。健康な人の膝(ひざ)や肘(ひじ)などの腱をハンマーで軽くたたくと、正常であれば反射的に腕や足が持ち上がる「腱反射(けんはんしゃ)」が行われます。ギランバレー症候群では運動神経の機能低下により腱反射の消失が見られます。
ただ、「脳脊髄液検査」、「電気生理学的検査」、「血液検査」を行うことがあります。これは、他の病気の可能性を排除して、診断するために有用です。
「脳脊髄液検査」;細胞の数に比べてタンパク質だけが増えている「蛋白細胞かい離」という状態がみられ、他の病気との区別に役立ちます。
「電気生理学的検査」;神経伝導検査が中心ですが、伝導速度の低下または伝導ブロックがみられます。他の病気との区別、診断の確定の両方に有用です。
「血液検査」;「抗ガングリオシド抗体」という抗体の値が上昇しているかを調べます。診断に迷う場合などに実施されます。
ギランバレー症候群の診断基準
ギランバレーの診断の基準には、(1)診断に必要な特徴、(2)診断を強く支持する特徴、(3)診断に疑いを持たせる特徴、(4)診断を除外する特徴、があります。とくに、診断の確定に重要な(1)と(2)を紹介します。
①診断に必要な特徴; (A)両手足(4肢)のうち2肢以上の進行する筋力低下、および(B)深部反射(腱反射)の消失、の2つが必ずあることが診断のために必要です。
②診断を強く支持する特徴;(A)臨床的な特徴:4週までにピークがある症状の特徴的な進行、比較的に左右対称な障害がみられること、軽度の感覚障害、顔面神経麻痺(約50%)をはじめとする脳神経障害、などが挙げられています。(B)診断を強く支持する髄液所見:前述した髄液蛋白の増加が1週以降にみられる。(C) 診断を強く支持する電気生理学的検査:通常、正常の60%以下の伝導速度(神経を電気が伝わる速度)の低下がある。(A)、(B)、(C)を診断の参考にします。
(3)診断に疑いを持たせる特徴、または(4)診断を除外する特徴がある場合には、他の病気を除外するために、さらに検査が追加されます。
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ギランバレー症候群の原因や症状についてご紹介しました。もしかしてギランバレー症候群かもしれないと不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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