ジカ熱が「日本で拡大の可能性低い」わけと、大人への重大な影響
- 作成:2016/02/28
「ジカ熱(正式には、ジカウイルス感染症)」について、2016年2月25日に、神奈川県内の10代男性の感染、発症が確認されました。ただ、国は、「現時点で国内での感染拡大リスクが薄い」との見解を示しています。感染拡大の可能性が低い理由などにつて、医師監修記事で、解説します。
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なぜ「感染リスクは高くない」
2016年2月に国内で感染が確認されたにも関わらず、ジカ熱の感染拡大について、国などが「日本では大きな拡大はない」としている理由は、感染を介する蚊の活動時期が最も大きな要因です(ジカ熱の基本的な情報は、『ジカ熱とはどんなもの?妊婦が注意すべき理由』で解説しています)。ジカ熱の感染を媒介する蚊は2種類おり、そのうちヒトスジシマカは日本でも生息しています。ただ、ヒトスジシマカの日本での活動時期は、5月中旬から10月下旬とされています。したがって、「蚊が活発に活動する時期(5月以降)になるまで、感染が多発するとは考えられない」(国立感染症研究所、以下感染研)という見解になっています。なお、ヒトスジシマカの行動範囲は、約50メートルから100メートルと言われていて、ヒトスジシマカが遠くまで行く可能性は極めて低いと言えます。
性交、輸血での感染リスクは?
それでは、他の経路で感染はしないのでしょうか。ジカ熱の感染経路としては、現時点において、蚊を介した感染のほか、輸血と性交(セックス)が疑われています。国立感染症研究所によると、性交を通じた感染は海外で確認されており、輸血については「ジカ熱の原因となるウイルスと同タイプが輸血によって感染する」(感染研)ため、リスクとして挙げられています。
性交を通じた感染の実態は、現時点では不明な点が多いですが、ジカ熱は、症状の現れない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」が8割を占めるといわれています。知らないうちに他人にうつしてしまうこともありますので、流行地域に行って帰国した方や、流行地域から来た方には注意が必要となり、国は「(帰国後)28日間の安全な性行動、性行為の自粛」、性交をする場合はコンドーム着用を推奨しています。他の性感染症を防ぐ意味でも、コンドームは、可能な限りつけたほうがよいといえるでしょう。
輸血による感染リスクについては、「(帰国日から献血まで)4週間程度の期間を開けることで、輸血の血液から感染する可能性はほとんどない」(感染研)とされています。
また、ジカ熱の症状は、発熱や頭痛などですが、感染研は、「重病感がないのが特徴」としています。流行地域から帰国した際は、軽い症状にもできるだけ注意したほうが良いでしょう。
なぜ、ジカ熱は今話題なのか?
ジカ熱の患者が国内で感染されたのは、実は今回が初めてではありません。ジカ熱の患者は、2013年、2014年にも国内で確認されており、2016年2月の患者は4人目となります。3人目まで大きな話題にならなかったのは、妊婦がジカ熱に感染した場合、子供に知能の発達の遅れを特徴とする「小頭症」を発症するリスクとの関係がわかっていなかったからです。研究が進んだ現在では、ジカ熱への感染と小頭症の発症リスクは「きわめて可能性が高いと言える」(感染研)と言えるまでになっています。
母体から胎児にうつって重大な障害をもたらす感染症は、風疹をはじめとして少なくありません。ただ、ジカ熱が話題になっているのは、「ワクチンなどで予防ができず、もともと多くの人が持っているウイルスが原因となる(免疫力の低下で発症するような)病気ではない」(感染研)とみられているからです。感染しないように細心の注意を払うことは大きな意味があります。
大人は、神経の病気になることも
また、ジカ熱との関連が疑われる病気として、手足のしびれで運動機能に障害の出る「ギラン・バレー症候群」という神経の病気があります。こちらは、胎児ではなく、母親、男性も含めた、成人全員に起きる可能性のある病気です。ギラン・バレー症候群とジカ熱の関係については、現時点では「統計的に、ジカ熱患者に、ギラン・バレー症候群の患者が多くなっている」というレベル、つまり「関係がありそうだ」というレベルにとどまっていて、しっかりとした因果関係が判明しているわけではありません。「小頭症」のリスクも含めて、世界保健機関(WHO)なども対応に乗り出しており、感染拡大や病気の詳細の解明が待たれる状況です。
ジカ熱の感染拡大の考え方などについてご紹介しました。ジカ熱の流行地域からの帰国して、不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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