妊娠初期と睡眠 眠気が増す?不眠になる?うつぶせ、仰向けどちらが良い?

  • 作成:2016/07/20

妊娠初期には、ホルモンのバランスが崩れるなどして、日中眠いという方もいれば、逆に不眠になる方もいます。どのようなメカニズムなのかや、対応方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は3分です

妊娠初期は眠くなる?

妊娠と眠気との関係

妊娠すると、「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピンン)」「エストロゲン」「プロゲステロン(黄体ホルモン)」「甲状腺ホルモン」「副腎皮質ホルモン」などと呼ばれる、様々なホルモンの分泌量、そしてバランスが大きく変化してゆきます。そのなかでも、妊娠中とくに初期段階での眠気には、大量に分泌されるプロゲステロンが関係しているといわれています。プロゲステロンは、昼間の眠気を誘発する作用があるといわれていますが、快眠を専門とする医師によると、プロゲステロンには睡眠効果があるとされています。

実際に医師が処方している睡眠薬は、脳の「ガンマ・アミノ酪酸(らくさん)」という神経伝達物質の作用を促進し、催眠作用を引き起こしているのですが、体内で分泌されているプロゲステロンにおいても、プロゲステロンが分解して「アロプロゲステロン」という成分を作り出した際に、睡眠薬と同じようにガンマ・アミノ酪酸の作用を強めているようです。驚くべきことに、この「アロプロゲステロン」という成分は、「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれる睡眠薬と同じ強さを持っているとのことです。日中でも眠いという症状は妊婦にとっては当然の症状だということが理解できます。

不眠になる?

妊娠中、日中とにかく眠くて仕方がないという妊婦が多いなか、不眠や睡眠障害になる方もいます。妊娠中の不眠や睡眠障害のはっきりとした原因はまだわかっていませんが、妊娠初期の場合、分泌される様々なホルモンの急激な変化に母体が対応できないのではないかといわれています。また、「エストロゲンが減少し、プロゲステロンが増加する」という通常とは異なるホルモン状態のため、「自律神経失調」と似た状態になります。さらに強い症状が出ると、うつ状態になる方もあります。そのため、イライラ感、不安感、そして不眠などを引き起こします。これが結果的に、睡眠障害、何度も目を覚ましてしまう、といった症状を引き起こしてしまうと考えられています。また、妊娠初期の頻尿も夜中に何度も目を覚ましてしまう原因の一つと考えられています。

眠れないときの対応策

なかなか眠れない、何度も目を覚ましてしまう場合には、まず寝るときの体勢を変えてみましょう。横向きで寝ると眠りやすいといわれています。また抱きかかえられるもの、いわゆる抱き枕を使われてみてはいかがでしょうか。それが無くても、例えばクッションでも掛け布団や毛布でも、自分の体形にあったちょうどよい大きさで、少しふわっとしながらも丁度良い弾力があり、圧力をかけても完全に押しつれない程度の硬さを選んでください。横になった際、それを両膝の間に挟んでお腹の下に置き、抱きかかえるようにして寝てみてください。意外に眠気を誘ってくれる方が多いようです。

規則正しい生活スタイルと日中や夕方の適度な運動も効果的です。散歩が理想ですが、自宅でヨガやストレッチなどでもよいでしょう。自分の毎日スケジュールに合わせて実践してください。そして寝る前の1時間前から、テレビを見たり、スマートフォンやタブレットなどを使用しないようにし、部屋の照明を少し落としてのんびりと過ごす様に心がけてください。テレビやスマートフォン、タブレットなどの液晶ディスプレーのバックライトに含まれている「ブルーライト」という光の刺激が、脳の興奮を引き起こしてしまうことがわかっているためです。最近のスマートフォンやタブレットには、ナイトモードというブルーライトを抑える機能がついている物もあり、積極的に利用してみましょう。眠れないからといってベッドサイドで端末を操作することはやめておきましょう。

身体を温めること、とくに入浴はオススメしたいのですが、注意したい点は、入浴直後は交感神経が優位になっているため興奮状態となりますので、できれば体の熱やほてりがおさまった時点(入浴前の体温が適切です)にベッドに横になってください。 そして、よく言われているのが、無理して眠ろうとしないこと、これも対策です。眠ろうとがんばってみたところで、脳が準備できていなければ寝ることはできません。そういったときには無理して眠ろうとせず、自分が一番リラックスできること、例えば本を読むなど、なるべくゆったりとした気持ちになれるような環境を整えてみてください。

妊娠中の眠る姿勢 うつぶせや仰向けは?

妊娠中は、仰向けだと息が苦しくなる、気分が悪くなる、こういった方もおられます。これは、「仰臥位(ぎょうがい)低血圧症候群と」いって、妊娠後期で起こる症状です。胎児と羊水によって子宮が大きくなりまた重量もあるため、仰向けになると急激な血圧低下を引き起こすことがあるためです。血管抵抗の減少等の全身の循環状態の変化や、迷走神経の異常反応が原因と言われています。うつ伏せの状態でも同じことがいえます。妊娠中は横むきとくに左側を下にして眠る姿勢が最適といわれています。是非実践してみてください。

妊娠初期の睡眠関連の問題についてご紹介しました。妊娠が判明して以降、睡眠の問題を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師