お薬の素朴な疑問「なぜ睡眠薬は30日分までしか処方してもらえないの?」
- 作成:2022/04/19
医薬品の中には「麻薬及び向精神薬取締法1)」という法律で管理されているものがあり、睡眠薬や抗不安薬、癌の痛み止めなどがこの法律で対象となる薬剤に該当します。これらの薬は、「保険医療機関及び保険医療養担当規則2)」によって1回に処方できる量に上限が設けられています。そのため、不眠などの症状で病院を受診して、睡眠薬を一度にたくさんもらおうとしても、最大で30日分までしか処方されない場合があります。
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Q:毎月睡眠薬をもらうために病院を受診するのが億劫です。
睡眠薬を30日分までしか処方してもらえないのはなぜですか。
A:法律で、処方できる日数に制限が設けられているためです。
処方日数の上限を守ることは保険診療ではマスト
麻薬や向精神薬の取り扱いについて定められた法律が「麻薬及び向精神薬取締法」です。麻薬や向精神薬は「依存性が高い」など服用に際しての懸念点があるため、一般的な薬よりも取り扱いに注意が必要です。そのため、保険衛生を守ることを目的として「麻薬及び向精神薬取締法」によって、一般的な薬とは別の”特別扱い”をする必要があります。
そして、この法律に記載されている医薬品に対して、具体的な扱いのルールを記載しているのが「保険医療機関及び保険医療養担当規則」という規則です。この規則には、保険診療を行う上で守らなければならないことが定められていますが、その中に、「処方日数の上限」があります。医療保険を使って診療を受けて薬を処方してもらう際には、このルールを守らなければなりません。
この「処方日数の上限」は薬によって異なりますが、14日、30日、90日の制限が設けられているものがあります。睡眠薬にもいろいろな種類があるため、全ての睡眠薬が30日分までしかもらえないというわけではありません。14日分しか処方できないもの、90日分まで処方できるもの、そもそも麻薬及び向精神薬取締法に記載されていないために特に制限のないものもあります。
「他の薬は60日分処方されているのに、睡眠薬だけ30日分しか出してもらえない……」と、違和感や疑問を抱く方は多いと思いますが、これは国の保健衛生を適切に維持するために必要な措置、法律上で決められたルールであると理解しましょう。
※麻薬や向精神薬のほかに、発売されて間もない新薬にも処方日数の制限があります。そのため、いつももらっている薬に新薬が追加される場合、同じ日数が処方されないことがあります。
「特別な事情」があれば、30日分まで処方してもらえることも
処方制限が14日の医薬品であっても、”特別な事情”があれば最長30日まで処方してもらえることがあります。”特別な事情”に含まれるのは「海外旅行」「年末年始」「ゴールデンウィークなどの長期休暇」です。つまり、海外に行くので病院を受診できない場合や、病院が休診の間に薬が無くなってしまう恐れがある場合などが該当します。ただし、30日分以上の日数を処方してもらうことはできないので、必要な薬が足りなくなればその都度病院で診察を受けて処方してもらうしか方法がありません。
一言に睡眠薬といっても、種類によってはこれらの投薬制限が設けられていない医薬品があります。治療を進めるにあたって、医師が変更をしても問題ないと判断できれば、投与制限のない医薬品に変更することもできます。診察の際に医師に相談するか、薬をもらう調剤薬局の薬剤師に相談してみましょう。
睡眠薬だけじゃない!睡眠状況の改善のためにできること
不眠の症状を治療する際は、睡眠薬だけに頼らず、薬と合わせてふだんの生活習慣や環境も見直してみましょう。
なかなか寝つけないという人は、夜遅い時間の食事や、就寝前にお茶やコーヒなどのカフェインを取りすぎることをなるべく避けましょう3)。
お風呂に入ることで体を温めて心身ともにリラックスした後は、寝床でのスマートフォンなどの光刺激をなるべく避けてゆっくりと体を休めるのがおすすめです4)。また、夜は明かりを少し暗くして、アロマなどのアイテムを使って気持ちを落ち着かせることも良いでしょう。
仕事が終わって寝る前くらいは、ゲームをしたりスマホを見たりと好きなことをする時間に使いたいという方は多いと思いますが、不眠症を解消していくために自然に眠りにつけるような環境を少しずつ作ってみてはいかがでしょうか。
いざ寝ようと思っても寝つけなかったり、満足に睡眠が得られないと、「次の日も仕事があるのに」と焦りも生まれますし、とても辛い状況ですね。習慣や環境を少しずつ整えて、処方された薬をうまく使いながら不眠の改善を目指しましょう。
1) 麻薬及び向精神薬取締法
2) 保険医療機関及び保険医療養担当規則
3) Ann Intern Med. 2015 Aug 4;163(3):191-204.
4) 健康づくりのための睡眠指針 2014
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