妊娠初期に起きるイライラ、うつ状態とストレス解消法 

  • 作成:2016/10/11

妊娠初期には、精神的に不安定になることが少なくなく、イライラが治まらない方も少なくないようです。うつ病につながる可能性もあります。妊娠初期のおすすめのストレス解消法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は3分です

目次

妊娠初期とイライラの関係

妊娠初期はささいなことでイライラしたり、極端に怒ったり落ち込んだりします。妊娠中は身体的な不調だけでなく、このような精神的な不調も見られます。原因にはホルモンによる作用と環境の変化が挙げられます。

・ホルモンの作用
妊娠初期に多く分泌される「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は、つわりなど様々な症状をもたらしますが、情緒不安定も引き起こすと考えられています。詳細なメカニズムまでは解明されていませんが、月経前にイライラや不安を感じるのと同じ理屈だと考えられます。

・環境の変化
環境的要因もあります。流産への不安、周囲からのプレッシャー、仕事とのバランスのとり方など、妊娠初期は何かと気ぜわしい時期でもあります。特に初めての妊娠では顕著です。もともとホルモンバランスのために情緒不安定な状態にあるので、ささいなことも含めて環境によるストレスを受けやすいのです。

妊娠中にイライラすると胎児に悪影響はあるのでしょうか?一部情報では胎児が発育不良で低体重になる、生まれてから喘息やアレルギーになりやすい、注意欠陥多動性障害(ADHD)になるといった説もありますが、いずれも直接的な因果関係が立証されているわけではありません。少なくとも、一時的なイライラがすぐに胎児に影響するわけではありません。ただし、母体の健康を害するほどの精神的不安定さがあるのであれば、何らかの対処が必要でしょう。精神的不安定の程度がひどいようならば、かかりつけの医療機関に相談してみましょう。

妊娠初期とうつの関係

女性は男性よりもうつ病にかかる人の割合が高く、5人に1人は一生のうち一度はうつ病になると言われています。特に妊娠期や出産後はそのリスクが高くなります。妊娠・出産時はストレスになる出来事が重なりやすく、ホルモンの変化により脳の抵抗力が低下するため、ものの見方が過度に悲観的になりがちです。この時周囲や本人が適切に対応しないと、自殺や虐待など最悪な事態に陥ってしまいます。

妊娠中に以下のような症状がある場合は、うつ病を疑ってください。

・激しく落ち込む、希望が持てない
何にも興味がわかない
外出がおっくう
・食欲がない、もしくは食べ過ぎる
・眠れない、眠りが浅い
いつもイライラし、焦燥感をおぼえる
涙もろくなる
・集中力が低下し、ミスが増える
・死ぬことについて考えてしまう

うつ病は、つらいと思った時に早めに専門家に相談することが大切です。心療内科もしくは精神科を受診してください。治療には、心理療法と薬物療法があります。心理療法にはカウンセリングのほか認知行動療法や対人関係療法が取り入れられ、妊産婦のうつ病に効果があることが確認されています。また、薬物療法は抗うつ剤などの服用が一般的です。妊娠中の薬の服用には注意が必要ですが、副作用を確認した上で服用の方法や量に気をつけていれば問題ない薬が処方されると考えてよいでしょう。

妊娠中は、妊娠週数にかかわらず、うつ病の発症のリスクがあります。妊娠初期は、生活の変化への戸惑い、妊娠・出産への不安、つわり症状のつらさ、眠気やだるさにより思うようにことが進まないことへのいらだちなど、気分の落ち込みを引き起こす要素が多数存在します。

うつ病にならないためには、とにかく一人で解決しようとせず、周囲のサポートを得ることが大切です。妊娠中は周囲の誤解や無理解が多い時期でもありますが、配偶者、家族、友人や知人、かかりつけの産婦人科、精神保健福祉センター、自治体窓口など、相談できる先を持っていると、予防や治療に大きく役立ちます。

妊娠初期のストレスおすすめの解消法

妊娠中に限らず、人がストレスをまったく受けずに生活することは不可能です。しかし、過度のストレスは心身に悪影響を及ぼすため、うまく解消させることが大切です。妊娠初期にオススメのストレス解消法を以下にまとめてみました。

適度に運動する
運動がストレス解消に役立つことはよく知られています。運動をすると、精神を安定させる「セロトニン」が分泌され、不安や抑うつ状態を解消します。また、血行が促進され、新陳代謝がよくなります。食欲増進や睡眠が促されるため、生活リズムが安定します。よって、ストレス解消にはメリットが多い運動を強くおすすめします。妊娠中の運動に対してはつい慎重になりがちですが、医師に止められていなければ運動することは問題ありません。ただし、「適度に」「定期的に」「有酸素運動」をすることが重要です。いつも決まった時間にウォーキングやマタニティスイミングをするなど、無理のない範囲で積極的に取り入れるようにしましょう。

とにかく話を聞いてもらう
人に悩みや愚痴を聞いてもらうことによって、気持ちがすっきりすることはよく知られています。話をすることによる効果はさまざまで、共感してもらうことにより孤独感がなくなり、安心感を得ることができます。また、自分で話をするうちに問題点や迷いが整理でき、頭の中がすっきりします。ただしあまり相手に負担をかけすぎてもいけませんから、気兼ねがある時は専門家を活用するほうが良いでしょう。話すことが苦手な人は、文章にしてみて、頭を整理するのも一案かもしれません。

食べたいものを食べる
妊娠中は体重管理や食事制限が大きなストレスになっていることが少なくありません。妊娠中に食べてはいけないものの情報が多数みられますが、量さえ管理すればあまり神経質になる必要はありません。「あれはダメ」「これもダメ」が続くと精神的に負担がかかります。もちろん肥満はよくありませんので、何事も限度が大切です。体重については、定期健診がありますので、活用するようにしましょう。

思いっきり泣く
泣くとスッキリするというのは単なる気分の問題ではなく、きちんとした根拠のあることなのです。人がストレスを感じるのは、脳から分泌される「プロラクチン」や、副腎皮質刺激ホルモンの「ACTH」、副腎皮質ホルモンの「コルチゾール」といったストレス物質が体内で増加するためです。涙は、それらの物質を排出し、苦痛を和らげる効果があります。人に相談した時や、お風呂に入った時など、思いっきり泣ける環境があればぜひ活用してください。泣くきっかけがえにくい場合は、映画や本、音楽などで気分を高めて泣くことも効果的です。気分転換に何かを鑑賞するときは、泣けるものを選んでみるのもよいでしょう。

妊娠初期のイライラ、うつやストレス解消法などご紹介しました。妊娠初期に今までと違った体調の変化があり、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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