妊娠初期の肌荒れ、ニキビ、蕁麻疹、抜け毛と対応法

  • 作成:2016/10/11

妊娠初期はホルモンバランスが崩れるため、肌に影響がでます。肌荒れ、ニキビ、蕁麻疹、抜け毛との関連性と対応方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は6分です

目次

妊娠初期と肌荒れの関係

妊娠中は肌荒れに悩む人が多くいます。これには女性ホルモンの変化が深く関係しています。女性は妊娠すると黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌量が増えます。生理の周期を整えたり、妊娠を維持するためには必要なホルモンですが、一方で便秘や肌荒れを引き起こす原因となり、美肌を気にする女性たちの間では評判の悪いホルモンです。

妊娠初期の肌荒れの症状としては、乾燥・かゆみ・ニキビがあげられます。特に「肌がカサカサに乾燥する」との声が多く、ひどくなるとかかずにはいられないほどのかゆみにおそわれます。これを「妊娠性皮膚掻痒症(にんしんせいひふそうようしょう)」と言います。

原因はホルモンバランスの変化と考えられていますが、メカニズムの完全な解明にまでは至っていませんので、とにかく保湿を心がけましょう。皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下して、わずかな刺激にも過剰反応してしまいます。入浴後には、ワセリンやプロペトなどでしっかり保湿するようにしましょう。

その他、紫外線を避けることや、洗顔をしすぎないようにすることも大切です。肌が荒れてきたからと言って、あわてて新しい化粧品に手を出すことはあまりおすすめできません。新しい化粧品が体質に合わない場合、症状が悪化するおそれがあります。

妊娠初期とニキビの関係

妊娠中は肌トラブルを気にされる方が多く、特に妊娠初期にはニキビに悩む女性が少なくありません。これには、女性ホルモンと生活習慣が関係しています。

・女性ホルモン
ニキビは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加するためにできやすくなります。プロゲステロンは妊娠を継続するために必要なホルモンですが、皮脂の分泌を促し、角質を厚くする作用があります。ニキビは皮脂で詰まった毛穴にアクネ菌が繁殖することで起こりますから、プロゲステロンが増加する時期はニキビができる環境が整いやすい時期だと言えます。

妊娠初期のニキビは、中期になると改善することが多いと言われています。これは、卵胞ホルモン(エストロゲンが)増加するためです。エストロゲンは、プロゲステロンとは逆に皮脂の分泌をおさえ肌に良い影響を与えます。妊娠15週から20週になると、エストロゲンの作用がプロゲストロンの作用を上回るようになるため、ニキビが治るようになります。

・生活習慣
このように、ホルモンバランスが深く関わっているニキビですが、生活習慣によってもできやすくなります。妊娠初期はつわりの時期と重なり、食生活が偏ることもニキビ悪化の原因となります。また、妊婦の半数がなるという便秘もニキビを招きます。ストレスや睡眠不足もニキビの大敵です。

妊娠初期のニキビは、中期以降は改善することが多いので、焦ってなおそうとせず穏やかに待ちましょう。使い慣れない化粧品やサプリメントを使用することで、逆に悪化することもあります。石鹸を使った洗顔はなるべく少なめにし、ぬるま湯などで洗いましょう。メイクのための化粧品は、使用をなるべく控えるのをおすすめします。

妊娠初期と蕁麻疹などのかゆみの関係

妊娠中に蕁麻疹(じんましん)になる人は少なくありません。もともと蕁麻疹になりやすい体質の人は悪化し、今までにいちどもなったことがない人でも発症することがあります。蕁麻疹はよく知られているように、強いかゆみを伴うため、ストレスや不眠の原因となります。

蕁麻疹とは、赤くてまだらもようの「紅斑(こうはん)」や、ぶよぶよと盛り上がった「膨疹(ぼうしん)」が突然体にできることです。湿疹との大きな違いは、数時間から1日程度で消えることです。通常は食べ物や薬、物理的刺激が原因とされていますが、妊娠中の場合は疲労や精神的ストレスとの関係が指摘されています。

しばしば蕁麻疹と間違えられる妊娠中の皮膚トラブルとしては、以下の4つが挙げられます。共通しているのは妊娠をきっかけとして発症することと、出産とともになくなることです。

妊娠性痒疹(ようしん)
皮膚に小さな盛り上がりである「丘疹(きゅうしん)」や硬くて比較的大きな盛り上がりの「結節(けっせつ)」ができます。妊娠3カ月から4カ月ごろから発症しやすくなり、手足を中心に広がりますが、ひどい場合には全身におよびます。2回目以降の妊娠に起こりやすいと言われています。

妊娠性掻痒(そうよう)
目立った湿疹や発疹がないのに、強いかゆみを伴うものです。妊娠後期によくみられます。湿疹はごく薄く、まったく見られないこともあります。とにかくかゆみが強いのが特徴です。「妊娠性皮膚掻痒症」と呼ばれることもあります。

妊娠性疱疹(にんしんせいほうしん)
妊娠初期から後期まで、12週以降であればいつでも発症する危険性があります。発疹は平らまたはやや隆起した赤い点として始まりますが、やがて水泡(水ぶくれ)になることもあります。腹部に生じることが多いのですが、掻くなどして悪化すると全身に広がることもあり得ます。

PUPPP(pruritic urticarial papules and plaques of pregnancy)
妊娠後期に蕁麻疹のような症状が下腹部を中心に広がる皮疹です。経産婦(出産経験のある女性)より初産婦の方がなりやすい傾向があります。日本語訳がまだないためこのような名称になっています。

いずれも出産後に改善するのが大きな特徴です。しかし妊娠期間は長いので、それまでは副腎皮質ステロイド系の塗り薬によって対処します。たいていのかゆみや湿疹はよくなりますが、PUPPPには効かないこともあるようです。患部が全身に広がっている場合は内服薬(飲み薬)を使用することもあります。

妊娠初期と抜け毛の関係

妊娠中や出産後の抜け毛の多さに驚くことはよくあります。シャンプーや整髪の際に大量に毛が抜けるのを見ると、誰でもぞっとするものです。特に産後は抜け毛に悩む人が非常に多いと言います。

妊娠や出産に伴う抜け毛は、女性ホルモンのバランスに深く関係します。妊娠を維持するために分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)には、発毛を促し、毛髪の寿命を長くする作用があります。そのため、妊娠中は抜け毛が減り、プロゲステロンが急激に低下する産後に一気に毛が抜け始めるという現象が起こります。これまで抜けなかったものが抜けるだけなので、あまり気にする必要はありません。

プロゲステロンの分泌が増える妊娠中は、基本的に抜け毛が少ないと言われています。体毛が急に濃くなったと感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、一部の人は逆に妊娠して抜け毛が多くなったと感じることもあるそうです。抜け毛は女性ホルモン以外にもさまざまな要素がからんでおり、急激なホルモンバランスの変化によるヘアサイクル(毛周期)の乱れ、ストレス・栄養の偏り、睡眠不足、たばこ・お酒、肩こり、貧血・血行不良、運動不足などによっても抜け毛は起こります。妊娠初期はつわりなどで生活が一変することもあり、その影響であることも考えられます。

抜け毛を気にする女性は多いと思いますが、あまり気にしすぎるとストレスの増加につながります。また、慣れない育毛剤などに手を出して悪化させてしまっては、元も子もありません。頭髪には規則正しい生活とバランスのとれた食事、十分な睡眠、血行を促す運動が欠かせません。まずは、生活スタイルの見直しを行うことに力を入れましょう。

妊娠初期の肌荒れ、蕁麻疹、ニキビ、抜け毛などと対応方法などご紹介しました。妊娠初期に今までと違った体調の変化があり、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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