妊娠初期の鼻水、口内炎、痰、咳、くしゃみ、喉の痛みと対応法 鼻血も解説
- 作成:2016/10/10
妊娠初期には、鼻、口、喉にも影響が出る場合があります。鼻水、鼻血、痰、喉の痛みなどといった症状が起きるメカニズムと、対応方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
妊娠初期と鼻水、鼻血の関係
妊娠2カ月から5カ月ごろにかけて、鼻水・鼻詰まりなどの鼻炎症状が出ることがあります。感染症やアレルギーでもないのに、妊娠に伴って鼻の症状が出ることは昔から知られており、「妊娠性鼻炎」と呼ばれています。出産後2週間ほどで消失するのが特徴です。
・鼻水、鼻炎
妊娠中は花粉やほこり・タバコの煙の刺激を受けやすくなり、くしゃみや鼻水などのアレルギー反応をおこします。アレルゲンに対して過敏になるのはホルモンバランスの変化で自律神経が乱れているためと考えられていますが、詳しいことはまだ分かっていません。
対策としては、市販の「鼻孔拡張テープ」や鼻内生食洗浄は安全性が高く有効です。経口ステロイド剤(飲むタイプのステロイド剤)などの薬も妊娠中には使えないこともありませんが、マスクの着用、掃除の徹底、外出の自粛などでアレルゲンを遠ざけることが大切です。
・鼻血
妊娠中に鼻血が出やすくなるのも、ホルモンバランスの変化によるものと考えられています。卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の濃度が高まると、体内の血流量が増加し、鼻粘膜がうっ血するため、鼻血が出やすくなります。「うっ血」とは静脈に血液がたまって滞っている状態で、腫れて柔らかくなっている状態なので、少しの刺激で出血してしまいます。また、妊娠中は血液量が増加して薄くなっている状態なので、血がとまりづらく、出血が目立つということもあります。
鼻血を止めるには、小鼻をつまんでうつむき加減(「考える人のポーズ」に似ています)で安静にしていれば、10分程度で止まります。それでも出血が止まらない場合は、高血圧など別の病気が考えられますので、いちど受診されることをおすすめします。
妊娠初期と口内炎の関係
口内炎とは、口の中の粘膜にできる炎症の総称です。口内炎にはウイルスや細菌が原因の「ウイルス性口内炎」、外傷などがきっかけとなって起こる「カタル性口内炎」のほか、「アレルギー性口内炎」、「ニコチン性口内炎」があります。しかし、もっとも多いのは、原因が分かっていない「アフタ性口内炎」です。
妊娠初期にみられる口内炎は、アフタ性口内炎であることが多いとされています。アフタ性口内炎は、体調がすぐれない時にできやすく、免疫力の低下、ストレスや栄養障害、口腔内の粘膜の損傷が原因と言われます。いずれも妊娠初期になりやすいものです。
口内炎を治すには、口の中を清潔に保つことが大切です。歯磨きやうがいを徹底しましょう。また、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCがしっかり摂れるよう、食事の内容に気をつけて下さい。あとは十分な睡眠を摂り規則正しい生活をすることで、免疫力を高めるようにします。
口内炎の薬として有名なのは、「ケナログ」という口内に使う塗り薬ですが、ステロイド剤を含む第2類医薬品なので、可能な限り自己判断による使用は避けたいところです。産婦人科でもケナログは処方してもらえるので、口内炎が気になる方は、一度相談してみるとよいでしょう。
妊娠初期と痰の関係
あまり一般的ではありませんが、妊娠初期にやたらと唾液が出る症状に悩まされるケースがあります。これは「よだれつわり」の一種だと考えられます。
つわり中に唾液の量が増えることは比較的よく知られており、妊娠初期から中期にみられます。「唾液過多症」と呼ばれることもあります。多い人はつばを飲み込み過ぎてお腹が張るほどだと言います。原因は消化器官の機能低下、身体の冷え、ストレスなど諸説ありますが、はっきりとは分かっていません。非常に不快な症状ではありますが、母体や胎児への深刻な影響は指摘されていません。飲みこめずにタオルで拭いたり吐き出したりしている人は、脱水症状にだけは注意しましょう。
厳密に言うと「痰」とは、気管から分泌されるうみの性質をもったものを指すので、食道や消化器官からくるものは痰とは呼びません。唾液が粘性を帯びると喉にからみつく感じがするので、痰だと思われる方が多いようです。もちろん痰の可能性も否定できないので、咳など呼吸器系疾患の症状も同時に出ていないか様子を見るようにしましょう。
妊娠初期と咳、くしゃみの関係
妊娠初期に急に咳やくしゃみをするようになった場合は、感染症や水分不足、またはつわりによる胃酸の逆流との関係が考えられます。
・感染症
咳やくしゃみといえば、まずは菌やウイルスへの感染です。妊娠中は免疫力が低下しているので、普段ならかからないような感染症にもかかりやすくなっています。いわゆる風邪であれば1週間もすれば自然に治りますが、それ以上となると他の感染症や気管支炎・肺炎のおそれがありますので、すみやかに受診するようにしましょう。
・水分不足
水分不足が原因となることもあります。妊娠中は体内の水分を胎児や羊水に集めようとする機能がはたらくため、喉の粘膜が乾燥して咳が出やすくなります。妊娠中に肌が乾燥しがちなのもそのためです。こまめに水分補給をすると症状が緩和します。
・胃酸の逆流
また、妊娠中は逆流性食道炎になりやすい状態にあります。胃酸が逆流することによって食道が炎症を起こし、咳の原因となります。逆流性食道炎は腹が大きくなる妊娠中期以降によくみられますが、つわりで嘔吐や胃もたれがある場合、妊娠初期でも発症することがあります。
咳をすることで胎児に悪影響が及ぶことはありませんが、長引くと体力を消耗するため、好ましくはありません。咳を止めるには、原因に合わせた治療を行うことが大切です。市販の咳止め薬も売られていますが、産婦人科に相談する方が良いでしょう。産婦人科では、妊娠中の咳止め薬として「メジコン錠」などの鎮咳剤を処方されることが多いようです。
妊娠初期と喉の痛みの関係
妊娠中は、喉の粘膜が乾燥して炎症を起こしやすくなっているので、喉の痛みには注意が必要です。水分不足のために粘膜が薄くなり、喉の内側を守るバリア機能が低下し、刺激や感染に弱くなっている状態と考えられます。
喉の痛みを緩和するには、うがいの習慣をつけ、室温と湿度を適切に保つことが大切です。うがいの際は水に塩を加えると殺菌効果が高くなります。室温は20度から25度、湿度は60%から80%が最適です。食事は刺激物を避け、大声を出すなど喉を使いすぎないようにしましょう。タバコやお酒も喉に負担をかけます。妊娠中のたばことお酒は、胎児の発育の観点から、避けるべきです。詳しくは、こちらで解説しています。
喉に痛みを伴う病気としては、「咽頭炎(いんとうえん)」と「扁桃炎(へんとうえん)」があります。咽頭炎は喉の粘膜に菌やウイルスが感染することによって起こり、声が出しづらくなったり、咳や痰が出たりします。扁桃炎は口蓋垂(いわゆる「のどちんこ」)の左右にある部分が赤く腫れて白い膿が付いている状態です。38度以上の高熱が出ることが多いのが特徴です。ひどくなると首のリンパ腺に腫れと強い痛みを伴います。咽頭炎・扁桃炎、いずれの場合も病院を受診されることをおすすめします。
市販で手軽に手に入る喉の治療薬としては、スプレータイプの殺菌消毒薬やトローチがあります。ただ、妊娠中は使用不可としているものとそうでないものがあり、説明書を読みこまないと安心して使うことができません。薬剤師に相談するか、医師に処方してもらうのが良いでしょう。気軽に使えるため知らずに使用してしまう人も多いでしょうが、数回使っただけでは胎児にすぐ影響するような量ではないので、過度に心配する必要はありません。
妊娠初期の鼻水、口内炎、喉の痛みなどと対応方法などご紹介しました。妊娠初期に今までと違った体調の変化があり、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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