妊娠初期にレントゲン、歯科治療、カラーリングはNG?注意点は?病院受診時のポイントも解説

  • 作成:2016/04/01

妊娠初期の方で、レントゲン撮影の安全性に疑問を感じる方がいるかもしれませんが、基本的には問題ありません。その理由や歯科治療、カラーリングの安全性も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

平松晋介 監修
ちくご・ひらまつ産婦人科医院 院長
平松晋介 先生

この記事の目安時間は3分です

妊娠初期のレントゲンは問題あり?なし?

妊娠中のレントゲン撮影において一番心配されるのが胎児への影響ですが、「ICRP(International Commission on Radiological Protection 国際放射線防護委員会)」からは、「母体が最小限値を超えた放射線を浴びた場合に限り、胎児への悪影響を与える可能性がある」と報告されています。つまり、「最小限の値」を超えなければ、影響が出ないと解釈できます。

妊娠8週目から25週目(妊娠初期から妊娠中期)に、母体が最小限値以上の放射線を浴びた場合、胎児の中枢神経系に悪い影響を与える可能性が高く、胎児が低IQ(低知能)の状態で、生まれてくる可能性が高いとされています。

定められている放射線量の最小限値とは「100mGy(ミリグレイ)」です。「100mGy」という量は、骨盤部位のCTスキャン3回、もしくは通常の他の部位のレントゲン撮影20回分に相当しています。

ICRPでは、妊娠中にレントゲン撮影を受けたとしても、この最小限値に到達するチャンスには程遠いとしています。このように、通常のレントゲン検査に使用される放射線量は極少量です。妊娠初期におけるレントゲン撮影に関しては過度に神経質にならなくて、問題ないと考えられます。

注意しておきたい点としては、怪我や病気によってはどうしてもレントゲン検査を何度か受けなければならない場合もあります。その際には、「妊娠予定」「妊娠しているかもしれない」「妊娠中」といった自身の状態を、医師と放射線技師にはっきりと伝えておきましょう。通常、レントゲン検査の場合は医師のほうから妊娠の有無について確認をしてくれます。また、胎児への被爆が少なくなる様、下腹部への防御を行ってくれる事もあります。

病院にかかる際に気をつけること

基本的に妊娠中に「病気かな」と思った場合(風邪やインフルエンザや感染症や皮膚炎なども含めて)、かかりつけの産婦人科を受診するようにしてください。産婦人科医は、基本的な医療知識に加え、妊婦と胎児に影響がない処方薬や治療についての専門家です。病気によっては、特別な検査や治療が必要な場合は、産婦人科医が他の診療科を紹介してくれます。自己判断で、内科や皮膚科を受診するのは控えましょう。どのような場合でも、病院にいく時は、母子手帳を忘れずに持参し、担当の医師へ妊娠中である事を伝えてください。その上で処方された薬品等は安全、または、妊娠中でも必要と判断された物ですので、自己判断で量を減らしたり、中止する事は止めるようにしましょう。なお、処方された薬については、処方した医師が責任が持ちますので、疑問があれば処方した医師に問い合わせてみましょう。

産婦人科以外の診療科を受診する際に注意したい点は、病院には様々な病気の患者さんがいる点です。空気感染や接触感染を防ぐために、必ずマスクを着用していきましょう。そして自宅にもどってきたら手洗いとうがいを忘れないでください。

妊娠初期はホルモン分泌の変化が激しくまた免疫力も低下していて、感染症にかかりやすくなっています。過度に心配する必要ありませんが、最低限の心構え(マスクやうがい)は徹底しましょう。

妊娠初期の歯科治療は大丈夫?

原則的に妊娠中に歯科治療を受けてはいけない時期はありません。歯のレントゲン撮影も問題ありません。ただし、妊娠初期は、つわり、ホルモンバランスの変化など、母体に大きな負担がかかりやすいため、歯科では虫歯などの応急処置はしますが、妊娠中期までに積極的な治療をするのが望ましいと考えられています。

妊娠中期以降は、通常の鎮痛消炎剤(痛みや炎症を抑える薬)が使えなくなります。抜歯等の大きな処置は可能ですが、処置後の痛みを抑える事ができないため、処置を行う事が現実的でなくなります。なお、歯科で行う局部麻酔は、妊娠への影響はありませんので、心配はありません。

妊娠初期は歯が悪くなりやすい

妊娠初期は母体の歯が悪くなりやすい環境です。背景として、以下のような要因があります。

・ホルモンバランスの変化により唾液が粘りを増し、食べカスが残りやすくなる
・唾液が酸性に傾くため口内細菌が増えやすくなる
・食事の回数が増えるため口内が不衛生になりがち
・つわりによる胃酸により口内の酸性度が上がり、歯が溶けやすい環境
・つわりの気持ち悪さから歯磨きおこったってしまう
・嗜好の変化により酸っぱいものを好むようになると。口内が酸性に傾く可能性が高くなる

また、ホルモンの分泌が増え、より歯肉炎になりやすくなるといわれているため、歯肉の腫れや出血といた症状が多く起こりますが、毎日歯磨きをしっかり行っていれば問題ありません。ただ、口内を不衛生や不潔な状態にしておくと歯肉炎が歯周病へ進行してしまいます。

妊婦の歯周病は早産のリスクが高まるという海外の研究報告がいくつか発表されています(注意:早産の要因は歯周病だけではありません)。歯に問題がある場合は、妊娠初期は自宅でしっかりケアをし、そして中期になったら積極的に治療を受けましょう。また歯科受診の際にも母子手帳を持参することを忘れないでください。仮に抜歯などで麻酔が使用される機会があっても、母体と胎児に影響ありません。鎮痛剤は産婦人科に相談してから使用してください。最近ではマタニティ歯科といって妊娠中の方を対象にした歯科も存在していますので、インターネットなどで探してみるのもよいでしょう。

妊娠初期のヘアカラーはOK?美容院で気をつけること

妊娠中のヘアカラーは、通常は問題ありません。それまで一度もカラーリングをしたことがない方、もともと皮膚が弱くかぶれやすい体質の方、薬剤に敏感な方は、事前にパッチテストを受けるようにしましょう。それまで使用していて問題なければ、通常は継続しても大丈夫ですが、妊娠中は薬剤に対する体の反応が変化する事があり、かぶれる事があります。症状がひどい場合、大量のステロイド剤を使う必要があり、胎児への影響が考えられます。十分注意したほうが良いでしょう。

妊娠初期は、つわりなどもあり、それまでなんともなかった薬剤の臭いに不快感を覚える場合もありますので、自身の体調をみながら実行してください。医学的にはカラーリングの薬剤が胎児へ影響を与えるということは報告されていませんが、不安な方は製造元、販売元に聞いてみてもよいでしょう。美容院では、妊娠中だと伝え、薬剤を弱めに配合してもらう、あるいはヘアマニキュアにしてみるなどの工夫も考えられます。

妊娠初期のレントゲン撮影や歯科治療などについてご紹介しました。妊娠初期の行動に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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