妊娠初期の過ごし方 お風呂や服の注意点は?抱っこや重いものはダメ?
- 作成:2016/09/13
妊娠初期は、妊娠の状態になれるために、体に変化がおきます。行動で気をつけるべき点や、入浴や抱っこが良いのかどうかを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
- 妊娠初期の行動で気をつけること、注意点の考え方
- 妊娠初期の行動の注意点
- 妊娠初期は安静にすべき?
- 妊娠初期に、外出、旅行、自動車、自転車はだめ?
- 妊娠初期の入浴について
- 重いものをもっても大丈夫?抱っこは?
- ぎっくり腰 胎児や出産への影響は?
- 妊娠初期の服装で気をつける点
妊娠初期の行動で気をつけること、注意点の考え方
妊娠初期は、胎児がその基本的な体を作っている大切な時期です。また、ホルモン分泌が通常とは大きく変化しており、情緒も不安定になるなど母体も大変な時期です。その時期には、外部からの様々な要因による影響も大きいと考えられており、母体と胎児の体内入るものへの注意や、感染症対策などを徹底しながらも、色々と気をつけることが重要になります。基本的には、いわゆる「健全な生活」を過ごしてもらい、できるだけ無理をせず、リラックスして過ごすことが一番です。
妊娠初期の行動の注意点
まず、たばことアルコールは、妊娠初期の妊婦にとって、「百害あって一利なし」と言えます。
たばこの煙は、可能な限り吸わないように気をつけてください。たばこには、強力な血管収縮作用があり、喫煙者以外にも受動喫煙者(漂っている煙を吸っているだけの方)にも、影響があります。この作用によって、子宮への血液循環量が減少し、胎児の発育が遅延します。実際の調査では、喫煙者では、新生児の体重が1割以上小さくなることが報告されています。また、タバコの煙には発がん性物質や放射性物質が含まれており、赤ちゃんの出産後にも母子ともに健康に悪影響をもたらすものです。家族や周囲そして公共の場においても喫煙者には禁煙を勧め、煙の近くには絶対に近寄らないようにしてください。
アルコールも厳禁です。アルコールは体内へ入ると「アルデヒド」という毒物に変化し、細胞そのものを傷つけていきます。特に、胎児の脳の発育に影響がある事がわかっており、常習的な飲酒者では、小脳症という、脳の成長が非常に悪い赤ちゃんが産まれることがあります。また、少量のアルコールも、胎児の成長への影響は否定できませんので、避けた方が良いでしょう。ただし、ケーキ等に含まれている少量のアルコールは、熱等によって蒸発している事が多く、過度に心配する必要はありません。
食べ物にも注意が必要です。まず、添加物や保存料の多い食品、カフェインなどの摂取に十分気をつけてください。添加物や保存料について、健康人に対しては影響はほぼ無いとされていますが、妊娠に対してどのような影響があるかわかっていない物が多く、具体的に何を避ければ良いかは難しいといえます。知らずに多くを取ってしまう可能性があるものについての影響を避けるためには、気をつけておくと良いでしょう。
通常の自然食品の中にも、気をつけてほしい物があります。
生肉は、妊娠期間中は避けてください。肉には、トキソプラズマという寄生虫が混入している事があります。これに感染すると、胎盤を通って胎児の脳や眼へ感染し、「精神発達の遅れ」「視力障害」「脳性まひ」などの先天性障害を生じる可能性があります。肉は、十分な加熱を行った上で食べるようにsいてください。なお、「生ハム」は加熱されていませんし、「肉のたたき」や「ローストビーフ」なども内部は加熱されていませんので、生肉と考えてください。また、ガーデニングなどで土を触ると、トキソプラズマの芽胞が手につく事がありますので、十分な手洗いを行ってください。
卵の殻には、サルモネラ菌がついている事があります。感染すると強い下痢が起こり、流産や早産を引き起こす可能性があります。新鮮に流通している物では生卵でも心配ありませんが、できれば十分に洗ってから調理を行い、保存状態によっては加熱して召し上がってください。
刺身や握りすしなど生の魚も、新鮮な物でしたら全く心配ありません。ただし、妊娠中は免疫力が低下しているため、通常ならば何の症状も出さない場合でも、強い下痢等になる事があります。生の貝類、特にカキは、ノロウィルスの感染を起こす事があり、妊娠中は避ける事をお勧めします。
また、大型の魚では、水銀を含んでいますので、大量に食べる事は避けておきましょう。水銀は、自然状態で排出する事が難しく、胎児の脳神経系の発達障害を起こす事があります。特にキダイ、キンメダイ、マカジキ、メカジキ、ミナミマグロ、クロマグロ(本マグロ)、メバチ(メバチマグロ、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラなどは水銀量が多いため、1週間に1回程度までにしておく事をお勧めします。つまり、栄養素の偏りを防ぐためにも、同じ魚ばかりを食べ続けないように注意されればいいでしょう。
ビタミンAにも注意が必要です。国立健康・栄養研究所のデータに「妊婦さんがビタミンAを7,800ug/日以上摂取すると、胎児に奇形を起こす可能性が高くなる」と報告されています。これは、レバーやウナギに多く含まれています。レバーは鉄分や葉酸などの栄養素が含まれた優れた食材です。妊娠中は貧血になりやすいので、「貧血予防にレバーをたくさん食べた方が良い」と思っている妊婦さんも多いようですが、豚レバーや鶏レバーでは、50gを食べれば、ビタミンAはその量に達してしまいます。また、ウナギも500gでその量に達します。毎日大量に食べ続けるのでなければ影響は無いと考えて良いので、食べる量に注意されれば良いでしょう。
海藻も注意が必要なものがあります。コンブ等にはヨウドが多く含まれ、過剰に摂取すると、胎児の甲状腺機能低下症を引き起こすと言われています。毎日食べ続ける様な食事は、避けておきましょう。また、ヒジキはカルシウム、カリウム、リン、鉄などを多く含んだ栄養豊富な食材ですが、「無機ヒ素」という物質を多く含んでいます。過剰摂取には注意が必要で、厚生労働省は、体重50kgの成人の場合、「1日4.7g(乾燥)以上のひじきを毎日継続的に食べなければ問題ない」としています。週に2回くらい適量を食べる程度であれば問題ないでしょう。
加熱殺菌していないナチュラルチーズには「リステリア菌」が含まれています。妊婦さんがリステリア菌に感染すると、胎児にも感染する可能性があり、流産や早産を引き起こしたり、新生児の髄膜炎や敗血症などの原因になることがありますので、注意が必要です。プロセスチーズは、加熱されている物が多いので、その心配は要りません。
カフェインについても注意が必要です。1日カフェイン100mg以上を摂取してる場合に流産する人が多くなるという調査があり、また、カフェインには「胎児の中枢神経を興奮させる作用」があり、子宮内での胎児発育遅延の危険性が高くなります。どうしてもコーヒーや紅茶を飲みたくなったら、1日カフェイン100㎎以内にしておきましょう。これは、ドリップコーヒーでカップ1杯、緑茶・紅茶でカップ3杯に相当する量です。この程度の量におさえておくことをオススメします。また、いわゆる栄養ドリンクには、多量のカフェインやアルコールを含んでいる物があります。これも注意が必要です。
この様に、日常の食べ物にも注意が必要です。気をつけてください。食中毒の恐れがあるもの(生鮮食品など)、添加物や保存料や添加物が多い食品、カフェインなどの摂取に十分気をつけてください。
妊娠初期は安静にすべき?
妊娠初期は、特別に安静にする必要はありません。激しい運動はできるだけ避けたほうがよいといわれていますが、適度な運動はリラックス効果もあり、通常の人同様に大切ですので安静にしすぎず、毎日ウォーキング、ヨガ、妊娠前からずっと行っている運動などは是非継続してください。
精神的な興奮も、血管を収縮させる可能性が高く、避けられた方が良いでしょう。妊娠中はどうしてもイライラしている事が多い様ですが、気分をまぎらわせる様なお茶の時間を作ったり、散歩をしてみたり、アロマを使ってみたり、色々と工夫してリラックスした生活を心がけられる事をお勧めします。
妊娠初期に、外出、旅行、自動車、自転車はだめ?
妊娠中の日常生活については、出血等が無ければ、ほとんど制限はありません。外出も、特に制限はありません。旅行等も、全身状態が良ければ、特に問題はありません。ただ、流産等に備えて、健康保険証は必ず持っていきましょう。また、母子健康手帳や妊娠初期検査の結果などをもらっていれば持っていかれると良いでしょう。
自動車の運転等も特に制限はありません。ただ、徐々にお腹が大きくなってくるため、運転が難しくなる方もありますので、注意しておきましょう。自動車に乗る時には、後席でも必ずシートベルトを着けておきましょう。「妊婦は着用が免除されている」と誤解されていますが、特に妊婦では絶対に必要です。ベルトを着ける時には、シートに深く腰掛け、必ず腰骨にかかるように着け、お腹にはかからない様にしておきます。お腹にかかっていると、事故の際には子宮を傷つける事もあり、非常に危険です。
自動二輪車(バイク)の運転は、避けておかれる事を強くお勧めします。元々事故率が高い上に、事故が起こった場合に運転者の傷害率は極めて高いです。特に妊娠中は、腹部の打撲によって、母子ともに危険な状態になる事も少なくありません。
自転車は、特に問題ないと考えていいでしょう。ただし、妊娠後期になるとお腹も大きくなり不安定になるため、転倒する事も考えられます。不安定だと思われたら、避けられる事をお勧めします。
市販薬の自己判断による使用も避けるべきです。妊娠中のつらい症状や気になる症状が出た場合は、薬局の薬剤師に相談するか、かかりつけの産婦人科に伝え、処方された薬を服用するようにしましょう。
母子感染対策は重要です。母子感染は胎児へ影響を与えるリスクが高いので絶対に注意してください。日常生活での手洗いうがいはもちろんのこと、定期的な妊婦健診を、必ず受診するようにしましょう。母子感染する疾患には、以下のようなものがあります。
・風疹
・水疱瘡(水ぼうそう)
・性器ヘルペス
・HTLV-1感染症
・B群溶血性連鎖球菌
・性器クラミジア感染症
・サイトロメガロウィルス感染症
・トキソプラズマ感染症
・B型肝炎
・HIV/AIDS
・梅毒
・りんご病
詳しい情報は妊婦健診の際などに産婦人科の医師らから十分知識を得ておきましょう。
妊娠初期の入浴について
妊娠中は入浴でも気をつけたい点があります。一番気をつけたい点は湯船の温度設定です。母体は胎児に優先的に血液(血中の鉄分や酸素)を送っているため、高温の湯船につかることで全身の血管が拡張し、のぼせやすくなり、一過性の低血圧症(いわゆる貧血)やめまいを起こしやすいといわれています。そのため、通常の温度よりぬるめにつかるようにしましょう。理想の温度は37から38度のようです。
入浴時間にも注意が必要です。妊娠初期はホルモン分泌の変化が激しくバランスがとれにくい上、子宮そのものが熱の影響を受けやすく、高温によって子宮の血流が良くなりすぎ、子宮収縮運動が激しくなる可能性があるといわれています。理想の時間は10分間程度のようです。
また冬場は脱衣所と浴室の温度差が激しいため、脱衣による急激な血液循環などを避けるためにも、入浴前に脱衣所を温めておくとよいでしょう。そして浴室のタイルは石鹸や洗髪剤の付着によって滑りやすくなっていますので転倒に十分注意してください。一般的な入浴剤の使用は特に問題ありません。
重いものをもっても大丈夫?抱っこは?
妊娠初期における重い荷物の持ち運びや抱っこについて、産婦人科からの特別な注意は出ておらず、医学的な面からも問題視することはありません。ただ、妊娠初期はホルモン分泌の変化やつわりなどに母体が慣れようとしている一番不安定な時期ですので、重い荷物の持ち運びなどがストレスに感じるようであれば、無理して重い物を運んだりすることは避けましょう。ちなみに、妊娠11週未満での早期流産は、胎児そのものの問題が原因の事が多く、重い物を持った等でリスクが高くなることはありません。
また、抱っこそのものは、妊娠後期であればお腹を圧迫する感じがあるため、身体的につらい場合もありますが、抱っこしたから妊娠や出産に影響が出るということは全くありません。
ぎっくり腰 胎児や出産への影響は?
妊娠中には、女性ホルモンが多く分泌されている事によって、関節を支えている靭帯が緩むため、腰痛を訴える方が多くおられます。また、妊娠初期にぎっくり腰を体験される方がいらっしゃいます。妊娠初期だけではなく、妊娠後期や産後になるにつれて、その可能性は高くなってきます。ぎっくり腰とは、「急性腰痛症」の俗称で、椎間捻挫や椎間板ヘルニアなどを含んでいます。このきっかけは、重いものを持とうとした瞬間の体勢によって腰に負担がかかってしまった場合や、くしゃみなどといわれています。
「ぎっくり腰になったかも」と思ったら、すぐに安静にし(横になるのがベストです)患部をアイスパッドなどで冷やしてください。ぎっくり腰にはこの2点の応急処置が大切です。ぎっくり腰は安静にするより、動ける範囲で動き、普段通りに生活をしたほうが回復が早いといわれています。ベッドから起きるときの動作に気をつける、寝るときにクッションなどを用いるなどの工夫をしてください。深刻でない場合は、通常数日から1週間程度で回復します。ぎっくり腰は患部を温めるとよくないため、ぎっくり腰発症後の痛みの強い間の入浴は避けられた方が良いでしょう。
日ごろからぎっくり腰にならないためにも、適度な運動や体操を取り入れ背筋を鍛えておくことや、腰に負担がかかる様な無理な姿勢をとらないように注意することが大切です。妊娠初期のぎっくり腰が胎児や出産へ与える影響はありませんが、足のしびれ等を伴い椎間板ヘルニアが疑われる場合、あるいはぎっくり腰というよりは極度の腰痛と出血と下腹部痛が伴っている場合は、安静にして様子をみるのではなく、できるだけ早めにかかりつけの産婦人科を受診してください。
妊娠初期の服装で気をつける点
できれば妊娠が判明した時点からお腹を冷やさないように工夫してください。腹巻は多くの妊婦さんが重宝しています。下着も、締め付けるよりは伸びやすいもののほうが楽です。マタニティ下着も妊娠初期から売られていますので、ベビー用品店などを見てみるのもよいでしょう。
妊娠初期は、まだお腹の膨らみが目立ってきていませんが、徐々に腰回りがきつく感じてくる方もいらっしゃいます。ウェストがゴム素材のズボン、やゆったりめのデザインもよいですが、レギンスやチュニック、ワンピースも体に楽で、かつ可愛くおしゃれに着られます。
もちろんマタニティウェアを妊娠初期から着ても問題なく、つわりで苦しいときなどでも気分が紛れます。マタニティウェアは、締め付け感が少ない、長く着られる、そして自分の気にいったデザインや柄を選んでみましょう。夫や友達そして家族といっしょに買い物に出かけて選んでも楽しいです。なお、転倒の危険の高いハイヒールは避けましょう。
妊娠初期の過ごし方などについてご紹介しました。妊娠中の生活に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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