妊娠初期の飲酒・喫煙のリスク、飲み物の良し悪し 少しならOK?室外や換気扇利用でもダメ?カフェイン摂取量の目安は?
- 作成:2016/04/12
「妊娠初期の酒やたばこはダメ」ということは広く知られていますが、生活習慣であるがゆえに、やめてない人もいるようです。「少しくらいなら」と思ったり、他人が言っているのを聞くかもしれませんが、本当に少量なら問題ないのでしょうか。妊娠中におすすめの飲み物を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
妊娠中の飲酒が胎児に与える影響
妊娠中のアルコール摂取が胎児に悪影響であることはよく知られています。しかし、現実には妊娠中の女性の8.7%は飲酒しています(2010年厚生労働省調査)。「少しなら大丈夫」と飲んでしまう人が多いようですが、本当に妊娠中の飲酒は「少しなら大丈夫」なのでしょうか?
2015年10月、米国の小児科学会(小児科医の専門団体)は「妊婦のアルコール摂取は一切ダメ」という声明を出しました。妊娠初期に限らず妊娠中のあらゆる段階における飲酒は、「胎児性アルコール症候群」のリスクを高めるということです。胎児性アルコール症候群とは、母体のアルコール摂取により、生まれてきた子供にさまざまな障害がおこることです。具体的には、低体重や小頭症、顔の奇形のほか、最近では注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害、行動障害、学習障害との関係も指摘されています。
胎児への影響については、「少量なら問題ない」という研究結果があるのは確かです。しかし、どのくらいがその人にとっての「少量」なのかは個人差があり、コップ一杯なら大丈夫といった基準はありません。また、たとえ少量でも、胎児性アルコール症候群の発生リスクを高めることは確実です。アメリカ小児科学会は、妊娠3カ月まで飲酒した人は、そうでない人に比べてリスクが12倍、妊娠6カ月までなら61倍、9か月なら65倍になるとしています。したがって、胎児への影響を心配するのであれば、「一切飲まない」が最も安全と言えます。
また、アルコールはいわゆる酒類のみだけでなく、ドリンク剤にも相当量含まれていることがありますので、注意された方が良いでしょう。
妊娠中のタバコ、喫煙が胎児に与える影響
妊娠中の喫煙は、早産・流産・低体重の原因となり、出生後は乳児突然死症候群のリスクが高まります。胎児の命にかかわるため、妊娠中は禁煙が原則です。しかし、厚生労働省の調査によると妊娠中の女性の喫煙率は5%となっていて、妊婦の20人に1人はタバコを吸っているという現実があります。
タバコにはニコチン、一酸化炭素、シアン化合物、鉛など胎児にとって毒性があるもの含まれています。また、血管収縮作用により、酸素や栄養が十分に届けられません。そのため、胎児や胎盤の発育が悪くなり、早産・流産・低体重・常位胎盤早期剥離・前置胎盤の原因となります。
喫煙により、早産のリスクは1.5倍、流産は2倍、常位胎盤早期剥離は1.6倍になり、出生体重は平均より200gから450g少なくなると言われています。リスクは喫煙の本数が多いほど高くなります。
乳幼児突然死症候群とは、事故や窒息でもないのに赤ちゃんが寝ている間に突然死亡してしまう病気です。タバコはその大きな危険因子です。両親が喫煙者の場合、そうでない場合に比べて発症率が4.7倍高いという報告もあります。
これらの影響は、妊婦自身の喫煙以外にも、受動喫煙でも大きい事が解っています。同居している方で喫煙者が居ると、喫煙総本数に比例した影響が出ると考えられた方が良いでしょう。よく、「換気扇の下で吸っているから大丈夫」「室内でなくベランダで吸っているから大丈夫」と言っている方がいますが、全く無意味です。影響を無くす為には、部屋の開口部から5m以上離れるか、窓を完全に閉め切っておく必要があります。また、喫煙後数十分間は、呼気の中に大量の喫煙物質が含まれていますので、その間は妊婦や子供のいる屋内への立ち入りは避けましょう。
タバコの危険性は、妊娠中だけでは有りません。室内にタバコやその吸い殻が落ちていると、幼児はそれを食べてしまいます。タバコ1本のニコチン量は十分致死量に達しますので、生命の危険な状態になる可能性があります。また、空き缶を吸い殻入れにしている方をよくみますが、中に残っている水分を誤って飲んでしまうと、極めて高濃度のニコチンを摂取する事になり、極めて危険な状態になる可能性があります。
出産後も同居者に喫煙者が居ると、子供はずっと受動喫煙者です。屋内の喫煙本数が20本だとすると、20年後に独立するまでに喫煙係数は400となり、様々な危険を引き起こす状態になっています。
出産や乳児期を無事に過ごすことができても、成長してから肺や気道の病気、特に喘息にかかりやすくなるなど、子供の一生にわたって影響が出ます。妊娠中は(できれば妊娠前から)基本的に禁煙です。どうしても難しい場合は、「禁煙外来」を活用するのも、1つの考え方です。
妊娠中のカフェイン、緑茶・コーヒーはダメ?
妊娠中のカフェイン摂取については、タバコやアルコールほどではありませんがなるべく控えることが推奨されています。一定以上のカフェインの摂取は、胎児の発育を阻害するおそれがあるからです。
カフェインはコーヒーや緑茶、紅茶などに含まれています。また、コーラやエナジードリンク、チョコレートなど幅広い飲料や食品にも添加されています。カフェインは胎盤を通過し、胎児の体に移行します。胎児にはカフェインを排出する機能がないため、そのまま蓄積してしまいます。また、カフェインは胎盤内の血流を低下させることも分かっています。
どのくらいのカフェインが胎児にどのように影響するのかははっきりしていませんが、低体重や流産、将来の健康リスクが懸念されています。したがって、各国の保健機関は、あくまでも目安として妊婦の1日あたりのカフェインの最大摂取量を提示しています。
世界保健機構(WHO)は、妊婦はコーヒーの摂取量を1日 3から4 杯までにすべきとしています。英国食品基準庁(FSA)は1日のカフェイン摂取量を200 mg(マグカップ 2 杯程度)、カナダ保健省は1日300mg(カップ 4杯から6 杯)、オーストリア保健・食品安全局(AGES)も1日300mgとしています。
コーヒーや緑茶を1日1杯飲むくらいであれば神経質になる必要はないと思われますが、気になるようであればカフェインレスのコーヒーや他の飲物を選ぶのが良いでしょう。
妊娠初期にオススメの飲み物
妊娠中は水分補給が大事なので、積極的に飲み物を取り入れたいところですが、何でもよいというわけではありません。妊娠初期に適した飲み物とは何でしょうか?
日常的に飲める代表的な飲み物は「麦茶」です。ノンカフェインで食物繊維やミネラルが豊富です。ルイボスティーもカフェインの入っていないお茶です。あっさりとした味で鉄分やカルシウムが含まれています。母乳の出が良くなることで有名なタンポポ茶は、妊娠中でも血行促進や便秘解消に効くとして人気です。ゆず茶は、ビタミンC・ミネラル・鉄分・葉酸が含まれており、体をあたためる効果があります。ローズヒップはビタミンCが豊富で、酸味のある味はつわりでも飲みやすいハーブティです。
一方、ハーブティには妊娠初期に適さないものがあるので注意が必要です。カモミールやアロエ、ハトムギ、ジャスミンティーは子宮収縮効果があるので妊娠初期にはおすすめできません。
妊娠初期の飲酒や喫煙のリスクなどについてご紹介しました。妊娠中の生活習慣に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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