健康診断で、前日の食事や飲酒、直前のタバコがダメな理由
- 作成:2016/01/27
健康診断前は、前日の食事や飲酒が制限されるのは、多くの方が経験されていると思います。理由は、検査の値に影響を与える可能性があるからなのですが、実際どのように影響するのかは知らない方が多いと思いますが、「中性脂肪」がキーワードになります。健康診断前日の食事制限の意味、直前の喫煙が禁じられる理由などを、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
健康診断で前日の食事、朝食がだめな理由
健康診断前日の食事ついては「健診受付時間の10時間前までに済ませて下さい」、「前日の午後9時以降は食事を控えて下さい」、などの制限が多いようです。もちろん当日の朝食もとれません。何故でしょうか。健診でも必ずある血液検査で、食事により検査値が影響を受けやすい検査項目があることが理由の1つです。代表的なものは「血糖」や「トリグリセライド(中性脂肪)」と呼ばれるものです。どちらも値が上昇してしまいます。他にも、いくつかの項目が影響されますが、逆に値が低下するものもあります。
もう1つの理由は、血清などの検体が乳白色に濁ってしまう「乳び」という現象です。食後あまり時間を置かないで採血すると、中性脂肪などが分解されず血液中に残っているためと言われています。正常でも見られることがあり、個人差もあるようです。血液検査のコメントには「乳び」と記載されます。
コメントをつける意味は、「乳び」は程度により、検査の結果に影響を与えてしまう検査項目があるからです。色の変化(比色法)や濁り具合(比濁法)を、測定に利用した検査項目が影響を受けやすいとされます。以上2つの理由を踏まえて、血液検査データの正しい判定、評価のために、検査前の食事制限の指示をしっかり守って採血を受けることをおすすめします。
健康診断で前日の飲酒がだめな理由
健康診断前日の食事制限の項でも述べたように、血液検査の結果が影響を受けやすい検査項目があることが、前日の飲酒がだめな理由です。特に問題になるものの1つが「中性脂肪」です。アルコールは肝臓で代謝され、分解の途中でアセトアルデヒドという物質になります。二日酔いの原因になる物質としても知られていますが、このアセトアルデヒドが脂肪の分解を抑え、同時に中性脂肪の合成を促進してしまいます。合成のピークは、アルコールを飲んでから12時間くらいと言われています。脂っぽい食べ物に深酒となれば、たとえ前日の午後9時まででも、影響が大きいといえます。
肝機能検査の1つである「γ-GTP(ガンマGTP)」にも前日の飲酒が影響します。γ-GTPという酵素は、肝臓における薬物や毒物などの代謝にとても大切な役割を担っている酵素群(「肝ミクロゾーム系」と言います)の1つで、肝臓の細胞の中に多く含まれています。肝臓に到達した、ある種の薬物(抗けいれん薬など)やアルコールによって、γ-GTPが誘導される(酵素誘導といいます)ために、血中の値が上がります。上昇の程度には、かなり個人差があるようですが、とても敏感に反応します。
前日の飲酒でも、少なくとも2つの検査項目は正しい判定が難しくなりますので注意して下さい。
健康診断で直前の喫煙がだめな理由
タバコを吸うと、タバコの成分であるニコチンが交感神経系を刺激し、アドレナリンをはじめとする「カテコールアミン」と呼ばれる物質がたくさん動員されます。その結果として、全身の血管は収縮し、血圧は上昇して、脈拍数も増加します。一服のたばこで、収縮期(いわゆる「上」)の血圧が110前後から130以上に上がり、心拍数も60回から80回前後へと増えるというデータもあります。したがって、健康診断直前の喫煙が、血圧測定と心電図の心拍数に影響を与えてしまうことは多いにありえます。
また、糖尿病や動脈硬化などの血液検査項目の1つである「遊離脂肪酸」は、採血前の喫煙で上昇することが知られています。カフェインも同様に上昇させるため、採血前の喫煙やコーヒーなどが禁止されています。喫煙によりニコチンが血圧を上昇させるメカニズムと同じように、カテコールアミンという物質を介した反応だと考えられています。そのため、直前の喫煙を禁じていることが多いのです。
健康診断前の注意は、意味があってなされるものです。正しく自分の状態を認識するためにも、必ず守るようにしましょう。
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健康診断前の食事制限の意味などについてご紹介しました。健康診断前の行為として適切かどうか疑問がある場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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