大人・妊婦と麻疹(はしか) 抗体検査、症状、予防接種を解説 流産・早産確率が上がる?基準値の見方は?
- 作成:2016/09/06
子供の病気と思われがちですが、大人でも麻疹(はしか)を発症する可能性があります。さらに、妊婦の場合、生まれてくる赤ちゃんに影響数する可能性があります。抗体検査の種類や基準値などの概要も含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
大人の麻疹の症状 子供と違う?
麻疹(はしか)は、子供の病気と考えている人が多いと思いますが、大人でも発症します。
予防接種を受けていない人や、予防接種しても、その後抗体(体内に入ったウイルスなど戦うための武器のようなもの)が減ってしまった人が発症します。
大人が発症しても子供と同じように熱が出て、「コプリック斑」と呼ばれる、口の中の特徴的な発疹がみられます。全身に小さな発疹が広がり、発疹が引き始めると熱も下がります。
もともと麻疹を発症している間は、免疫力が落ちていて、子供でも合併症を併発することが多いのですが、大人の場合は子供よりも合併症を発症しやすく、重症化することも多いです。具体的には肺炎や肝機能障害、脳炎や神経系の後遺症を残すことがあります。
妊婦は麻疹に特に注意が必要?
妊婦が麻疹にかかると、30%程度の確率で流産・早産になります。また、分娩時期に麻疹を発症し、そのまま出産すると、赤ちゃんも麻疹を発症することがあります。そのため薬を使用して、出産のタイミングを遅らせることもあります。また、お母さん自身も麻疹で重症になる可能性が高いと報告されています。
ある時期の流行を調査すると、妊娠していない女性が感染した場合、合併症として、約10%が肺炎を発症し、死亡率は0.5%であったのに対し、妊婦の場合は約26%が肺炎を発症し、死亡率は3.4%でした。
妊婦において、合併症や死亡率が高いのは、妊娠によって免疫機能が低下することが関係していると考えられています。
さらに、通常は母親の麻疹抗体は赤ちゃんにうつり、出産後数カ月の期間、赤ちゃんを麻疹から守りますが、お母さん自身に麻疹の抗体が無い場合は、赤ちゃんも抗体がないまま生まれてくることになります。抗体のない赤ちゃんが、麻疹ウイルスに接すると重症化する可能性が高くなります。
妊娠判明後の予防接種はできない
麻疹のワクチンは、「生ワクチン」と呼ばれるタイプで、実際のウイルスを体に入れるものですので、妊娠が判明してから予防接種することができません。妊娠を検討している人は、妊娠後の不安を減らすために抗体量のチェックや予防接種も検討しましょう。
麻疹の予防接種をした場合、2カ月間、避妊が必要です。
麻疹の抗体検査とはどんなもの?
麻疹の抗体検査は「血液検査」で行います。検査の方法としては複数の検査方法があります。
国立感染症研究所が出したガイドラインで勧められているのは「EIA法(酵素抗体法)」と「PA法(ゼラチン粒子凝集法)」という方法です。2つの検査方法は感度が高い、つまり抗体があれば「陽性」という結果が出やすいという特徴があります。
「NT法(中和法)」という方法は、検査の手間が多く、結果が判明するまでに時間がかかるため、あまり行われていません。
「EIA/IgG法」という方法もあり、抗体を検出しやすいのですが、検査費用が高く、また結果がいくつであれば予防接種した方がよいのか基準がはっきり決まっていないため、あまり行われていません。専門的な話ですが、「EIA法」と「EIA/IgG法」は厳密には、異なるものですので、ご注意ください。
「HI法(赤血球凝集抑制法)」は感度が低く、つまり十分な抗体を持っている人でも陰性と出てしまうことがあり、あまり勧められていませんが、検査が簡単にできることからHI法で検査している病院もあります。
麻疹の抗体検査の基準値、費用
抗体が十分でないとみなし、予防接種がすすめられるのは、基準値は以下の通りです。
EIA法とEIA/IgG法→「16.0未満」
PA法→「128倍以下」(1:128以下)
NT法→「4倍未満」(1:4未満)
HI法→「4倍以下」
医療従事者など麻疹に接する機会が多いと考えられる対象者の場合は、現在抗体の量がギリギリ陽性であっても、将来減る可能性を考えて予防接種を勧められる場合もあります。
検査の費用としては、保険が使えず、自費になるため5,000円前後が一般的なようです。病院によってすべての検査方法に対応していないときもあるため、職場などから測定方法について指示が出ている場合は、あらかじめ病院に電話して検査方法や値段を聞いておくとよいでしょう。
【参考】麻疹(はしか)の抗体検査の基準値(日本環境感染学会のガイドラインより)
http://www.kankyokansen.org/modules/publication/index.php?content_id=4
麻疹の予防接種を受けなおす必要がある?
医療従事者など、麻疹に接する可能性が高い人は、抗体価を調べて数値を確認したり、予防接種が勧められます。過去に麻疹にかかっていたり、予防接種を受けて抗体が十分にある状態でも、予防接種をすることは特に問題ありません。
したがって、抗体価を測るのが手間であったり、時間がかかる場合などは、抗体の量を調べずに予防接種を打っても大丈夫です。
医療従事者でなくても、抗体価が少ないと、将来奥さんが妊娠した時に麻疹を家に持ち込んでしまう可能性や、妊婦が発症すると赤ちゃんへの影響が心配されます。
男女問わず、機会があれば抗体価をチェックし、低いと判明した時には追加の予防接種を受けるように心がけましょう。
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大人の麻疹(はしか)についてご紹介しました。麻疹の流行や妊娠との関係に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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