不妊の3割を占める卵管閉塞・卵管狭窄の原因、検査、治療、予防
- 作成:2016/07/01
卵管閉塞、卵管狭窄とは、卵管が狭くなったりつまる病気です。自覚症状はないですが、卵管は妊娠にあたって非常に重要な役割を果たしているため、不妊原因の3割を占めるとされています。原因や治療を含めて、専門医師の監修記事でわかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
卵管閉塞と卵管狭窄とは? そもそも卵管とは?
「卵管閉塞(へいそく)」および「卵管狭窄(きょうさく)」とは、卵管の通りが悪くなり詰まってしまう病気です。「閉塞」とはつまっていること、「狭窄」とは狭くなっていることを意味します。
卵管とは、子宮と左右の卵巣を結んでいる管で、左右に1管ずつ対照的に位置していて、8センチから12センチ程度の長さをもつ器官です。
卵管は、子宮側から、以下のようにわかれています。
・間質部→子宮に一番近い部分で、長さは1センチ程度、内腔1ミリ以下です
・峡部→子宮壁から2センチから3センチ程度の部分で、非常に内腔が狭い部分です
・膨大部→長さは6センチから7センチ程度あり、内腔は約6ミリから7ミリ程度あり、卵管内で一番内腔が広くなっている部分で、ここで卵子と精子が出会い、受精します
・卵管采(らんかんさい)→漏斗部や采部ともいい、卵管の先端に繋がっているラッパのような形をした開口部分で、卵子が排出されると卵巣を覆い、卵子を卵管の中に吸い込みます。この機能を「ピックアップ」と呼びます
卵管の内腔は繊毛(細かい毛のようなもの)があり、3層の筋層からなり、収縮による蠕動運動を行って、卵子などを運ぶことができます。
卵管の役目は、主に5つあります。卵巣から排出された卵子をピックアップし卵管へ取り込むこと(卵管采)、膣から遊走してきた精子を受け入れること、卵子と精子を受精させること(膨大部)、受精卵を育てること、そして受精卵を無事に子宮へ運ぶこと、です。
月一度の排卵日になると、卵巣から卵子が排出され、卵子は卵管を移動しながら子宮のほうへむかっていきます。膨大部で卵巣から排出された卵子と膣から侵入してきた精子が出会い、受精し、受精卵が誕生すると、今度は受精卵が子宮の方向へ移動し、子宮内膜に着床します。
ところが、卵管が詰まっていたり、あるいは卵管周囲癒着があり卵管采で卵子をピックアップできない(ピックアップ障害)と、卵管の役割が十分果たせないため、不妊症や子宮外妊娠になります。
卵管閉塞と卵管狭窄の原因
卵管が詰まる、あるいは卵管周囲癒着(ゆちゃく、本来くっついていないところがくっつくこと)が起こる原因の多くが、卵管内で起こった炎症だと考えられており、具体的には、子宮内膜症、骨盤腹膜炎、卵管留水腫、虫垂炎、開腹手術、クラジジアや淋病などの性感染症による卵管炎、などがあげられています。
卵管閉塞と卵管狭窄の症状
卵管閉塞(狭窄)のほとんどが無症状といわれているため、自覚症状はありません。
多くの方が不妊症の相談のために婦人科あるいは産婦人科を受診した際に、検査によってはじめて卵管が詰まっていたり、狭くなっていることが発見される場合が多くなっています。
卵管閉塞と卵管狭窄の妊娠への影響は?
卵管閉塞(狭窄)の一番の影響は、不妊症になる可能性が非常に高いという点です。不妊症の約30%が卵管閉塞(狭窄)が原因といわれています。
卵管閉塞では、卵管の通過性が悪く、また卵管や卵管周囲で癒着が起こっている場合が多いため、卵管の役割が十分果たせません。卵管の主な5つの役割のうちどれかでも機能していなければ、最終的に受精卵が子宮へ輸送されない可能性が非常に高くなるため、不妊症になる確率が高くなります。
卵管閉塞と卵管狭窄の受診科、検査
検査は、婦人科あるいは産婦人科で行われます。卵管が詰まっているかどうか確認する方法は、2つあります。1つ目は、「子宮卵管造影検査(HSG:hysterosalpingography)」と呼ばれる検査です。子宮口から、子宮内にレントゲンのエックス線に反応し白く映る造影剤を注入し、レントゲン撮影を行う方法です。通常、生理終了後の数日間に実施されます。この検査により、子宮の状態(奇形、ポリープ)そして卵管の疎通性(詰まっているか、通りがよいか)が判明します。
2つ目は、腹腔鏡検査です。腹部に1センチ程度の穴を開け、腹腔鏡(腹腔部を見ることができる内視鏡器具)を挿入し、腹腔内を観察します。この検査により、卵管周囲で癒着が起こっている可能性が判明します。卵管周囲癒着は、卵管閉塞(狭窄)と同時に発症しているケースが多いといわれています。
卵管閉塞と卵管狭窄の治療
治療方法は、妊娠を希望しているかなど患者の意思によって大きく異なってきます。
まず、卵管の通過を良くするための治療には、手術により卵管の詰まり(損傷あるいは癒着なども含めて)を治療する方法がとられます。「卵管鏡下手術(FT:卵管鏡下形成術)」といい、カテーテル(細い管)を膣から挿入し、子宮そして卵管まで内視鏡を通して観察し、詰まっている卵管の箇所を風船(バルーン)によって膨らませ、卵管の通過を回復させる方法です。この、バルーンを膨らませる治療は、子宮に近い側の卵管に効果的です。麻酔等は使用されず、身体への負担も軽く、日帰りで受けられます。
卵巣に近い側の卵管の治療には、卵管鏡下手術ではなく「腹腔鏡手術(腹部に穴を開けて手術する方法)」が実施されます。卵管周囲癒着があった場合には癒着の剥離(はくり、くっついているところをはがすこと)も行われます。この治療では、全身麻酔が用いられ、入院が必要になります。どちらの治療も健康保険が適用されます。
手術後に卵管の通過性が回復する確率は約70%といわれており、うち3分の一から半数以上がのちに妊娠しているという報告があがっています。ただ、再発する可能性もあります。
卵管閉塞は卵管狭窄の予防できる?
予防対策としては、原因となる卵管の炎症を避けることです。原因の1つとなっているクラミジアや淋病などの性感染症に感染しないようにすること、子宮内膜症や骨盤腹膜炎などを絶対に放置しないこと、そして婦人系の病気を早期発見するために定期的に検査を受けることなどが予防につながる可能性があります。
卵管閉塞、卵管狭窄についてご紹介しました。「不妊かもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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