不妊の検査を男女別に解説 MRIや腹腔鏡も使う?費用、精子の質の基準、検査の意味まで広く説明
- 作成:2016/07/26
不妊の検査は、男女ともに多様です。妊娠と関係の深い、子宮や卵巣、精巣をみることもありますが、中にはMRIを使う場合があります。男性の場合、精子の質を確かめる検査もあります。どのような検査があるのかを、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
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女性の不妊治療の検査の概要
1 女性の一般的な検査
2 女性の特殊な検査
女性の不妊治療の検査費用
男性の不妊治療の検査概要
1 男性の精液検査
2 男性の泌尿器科的検査
男性の不妊治療の検査費用
女性の不妊治療の検査の概要
女性の不妊症の検査には、ほとんどの方が受ける一般的なものと何か不妊の原因となる病気が疑われる場合に受ける特殊なものがあります。
1 女性の一般的な検査
(1)内診・超音波検査
「内診」とは婦人科の診察台の上で行う検査で、医師が医療用手袋をした手を膣から挿入し、もう一方の手は体の表面に置き、子宮や卵巣を挟み込むようにしてしこりや痛みの有無について調べます。
不妊検査における超音波検査は、「経膣超音波断層検査」と呼ばれています。経膣超音波検査では、膣から直径約1.5センチから2cセンチの細い超音波の機械を挿入し、子宮や卵巣に異常がないかを確認します。子宮筋腫、卵巣のう腫、子宮内膜症などがあるかどうか分かります。また子宮内膜ポリープの大きいものであれば経膣超音波で観察できます。経膣超音波では、卵胞の大きさによる排卵の予測、子宮内膜の厚さ、排卵後の黄体などの確認もできます。
日本において性感染症の中で最も感染者数が多いといわれているクラミジアは卵管の癒着を起こし、不妊の原因になると考えられています。そのため、不妊検査にはクラミジア感染の確認も含まれています。クラミジア感染の確認方法には、帯下(おりもの)や子宮頚部(子宮の入り口)を綿棒でこすったものにクラミジアが存在するかどうか確認する方法と、血液検査でクラミジアに対する抗体を調べる方法があります。綿棒を使った検査は内診時に行い、子宮頚部の感染を検出できます。血液検査の場合、ほぼ全身の感染を検出でき、陽性の場合には卵管の感染を疑います。
(2)子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査とは、子宮から造影剤(画像検査の結果をわかりやすくする薬)を入れてX線で透視をしながら子宮の形や卵管の閉塞の有無を調べる検査です。少し痛みがあることがありますが、不妊の原因で多いといわれる卵管障害の有無を確認できる重要な検査です。両側の卵管が閉塞している場合には、自然妊娠は難しいため卵管を開通させる手術や体外受精を考える必要が出てきます。子宮卵管造影検査後には、軽度の卵管狭窄(卵管のつまりの程度が軽い状態)であれば開通するといわれており、検査後に自然妊娠する可能性もあります。造影剤ではなく、水や空気を用いた通水検査や通気検査を行うこともあります。
(3)血液検査
採血を行い、各種ホルモンや糖尿病などの全身の病気に関連する項目、感染症などについて検査します。ホルモン検査には、女性ホルモン、男性ホルモン、卵巣を刺激する「卵胞刺激ホルモン」、黄体形成ホルモン、排卵を障害するといわれている「プロラクチン」、甲状腺ホルモンなどが含まれます。自費になりますが、「AMH(アンチミューラリアンホルモン)」というものを測る検査もあります。
AMHは抗ミュラー管ホルモンとも呼ばれ、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。血液中のAMHの数値が、卵巣内で待機している卵胞の数を反映すると考えられており、AMHが低いと卵巣予備能(卵巣の能力)が低いと判断できます。ただし、AMHは検査による誤差も大きく、AMHが低いからといって妊娠しづらいわけではありません。何度も繰り返しますが、妊娠に最も影響するのは女性の年齢です。AMHは卵巣予備能を予想できるので、今後の不妊治療のステップアップ、つまり早めに、タイミング法から人工授精や体外受精に切り替えた方がよいかなどについて検討する材料になります。
(4)性交後試験
排卵直前の最も妊娠しやすい日に性交を行った翌日に病院を受診し、子宮頚管粘液の中に運動している精子を認めるかどうか確認します(フーナーテスト)。運動している精子が認められない場合には、体内に入った精子を排除する「抗精子抗体」の有無を調べます。もし抗精子抗体がある場合には、自然妊娠は難しいため人工授精か体外受精を検討します。
2 女性の特殊な検査
(1)子宮鏡検査
「子宮鏡検査」とは、子宮に直接カメラを入れて子宮の中の状態を観察する検査のことです。麻酔をかけずに行うことができるので、入院をしないで、外来で行うことができます。超音波で確認できないような小さい子宮内膜ポリープも、子宮鏡検査を行えばわかる可能性があります。ほかにも筋腫や腫瘍などの有無について確認できます。直接、子宮の中を観察できるので今まで分からなかった不妊の原因を見つけることができる点が子宮鏡検査の利点です。
(2)腹腔鏡検査
腹腔鏡検査とは、おへそから細いカメラを入れてお腹の中を直接観察する検査です。全身麻酔をかけて手術室で行います。子宮や卵巣などの骨盤内臓器の状態を確認でき、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などの有無について分かります。もし卵巣嚢腫や子宮筋腫がある場合には切除することもできます。「多嚢胞性卵巣症候群(卵胞が卵巣の中にたくさんでき、排卵が起きにくくなる病気)」に対しては、排卵しやすいように卵巣の一部に穴をあける手術も行うことができます。検査と同時に治療をできることが、腹腔鏡検査の利点です。
(3)MRI検査
MRI検査では磁場を用いて、体の内部を詳細に画像化することができます。子宮や卵巣などの臓器の観察に適しているといわれています。CTのようにX線を使用しないので被爆の心配もありません。ただ、強い磁場の中に入りますので磁石に引き寄せられるような素材や磁場の影響を受ける様な電子機器が体の中に存在している場合には検査ができません。具体的には、心臓ペースメーカー、金属製の心臓人工弁、人工内耳、着脱不能な金属製の義歯などがある場合は、できません。
女性の不妊治療の検査費用
女性の不妊治療の検査には、ホルモン検査、採血検査、感染症検査、超音波検査、子宮卵管造影検査などがあり、保険が適用されるので3割負担となります。自己負担額は、各検査には、それぞれ1000円から5000円のことが多いですが、病院やクリニックによって違うため事前に確認するようにしましょう。
男性の不妊治療の検査概要
不妊の原因の約50%は男性にあるといわれており、不妊治療において男性側も検査をすることはとても大切です。男性の不妊検査には、精液検査と泌尿器科的検査があります。
1 男性の精液検査
精液検査では、精液量、精子の濃度、運動率、運動の質、精子の形、感染症の有無などについて調べます。精液は2日から7日間の射精しない期間いわゆる「禁欲期間」の後に、用手法(自慰行為、マスターベーション)で全量を取って、検査容器に入れて提出します。温度が低い状態に長く置いておくと、精液の正確な状態が判断できないためできれば病院で取るのが望ましいです。しかし、自宅で採取して2時間以内に検査すれば病院で採取したのとほぼ同様であることが多いといわれています。忙しい方の場合には、自宅で採取したものをパートナーである女性が病院まで運ぶことも認められています。男性の精液の性状は日によって変動するので、悪い結果が1度出ても、再度検査をすると正常範囲ということもあります。
精液検査の正常値には世界基準値があり、以下の通りです。結果を医師とともに確認するようにしましょう。
・精液量は1.5ml以上
・精子濃度1500万/ml以上
・総精子数3900万以上
・前進運動率(前に直進する精子の割合)32%
・総運動率(前に進む以外のジグザグや円を描くように動く精子の割合)40%以上
・正常精子形態率4%以上
・白血球数100万/ml未満
2 男性の泌尿器科的検査
(1)診察
不妊症に関連するような病気や手術の病気の既往の有無、性生活の状況、精巣などの形、精巣サイズ、精索静脈瘤の有無などについて確認します。
(2)採血検査
採血によって男性ホルモン(テストステロン、性欲などに影響するホルモン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH 男性ホルモンを合成するホルモンなど)などといった項目ついて調べます。精子数が極端に少ない場合や、無精子症の方に対して、染色体検査や遺伝子検査をすることもあります。染色体のわずかな変化や遺伝子異常が精子の形成に影響することがあるからです。
(3)特殊な検査
精子の機能や精嚢(せいのう、精子をためる場所)、射精管の形について調べるMRI検査や、精巣での精子形成の状態を詳細に調べることのできる「精巣生検」、勃起能力を調べる検査などがあります。病状によって、追加することがあります。
男性の不妊治療の検査費用
男性の不妊検査は主に精液検査や血液検査になります。保険が適用されるので、3割負担です。自己負担額は平均1000-5000円といわれていますが、病院やクリニックによって違うため事前に確認するようにしましょう。
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不妊の検査についてご紹介しました。「不妊なのでは」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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