胞状奇胎の手術や薬での治療、術後の妊娠 医師の許可が必要?
- 作成:2016/06/15
胞状奇胎の治療では、子宮の内容物を全て取り出すことになります。ただ癌になるなど、重篤な病気につながる可能性がありますので抗がん剤を使うこともあります。治療後に妊娠の考え方や医師の許可の必要性を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
胞状奇胎の手術とはどんなもの?
治療で抗がん剤を使うことがある?
胞状奇胎で何も処置をしないケースがある?
奇胎娩出後管理とは?
胞状奇胎の手術後は妊娠を控えるべき?なぜ?
胞状奇胎になると、医師の妊娠許可が必要?
胞状奇胎の治療はどんなものがある?
検査の結果から胞状奇胎と診断されると、早急に治療が行われます。これは妊娠週数が経過すると、胞状奇胎による子宮内容物が増加するためです。もし早急な治療を行わなければ、胞状奇胎の治療による出血のリスクは増加します。
胞状奇胎の治療は流産と同様、「子宮内容除去術」を施行します。術後に得られた子宮内容物は病理検査に提出され、胞状奇胎の診断が正しかったのか否かを最終確認することとなります。そして、手術の約1週間後に、もう一度子宮内容除去術を行い、胞状奇胎が完全に除去できているか否かを確認します。
胞状奇胎除去手術は地域病院や診療所でも可能ですが、最近では胞状奇胎妊娠をより正確に診断するための詳細な検査などをする行うため、手術前に専門の病院へ紹介されることもあります。
胞状奇胎の手術が無事終了しても、治療後にも注意すべきことがあります。それは胞状奇胎が子宮の筋肉層に侵入している「侵入奇胎」や、「絨毛癌」の発症です。胞状奇胎を除去しても、約10%から20%の患者さんには、侵入奇胎や絨毛癌などの胞状奇胎後に続く病気となるリスクがあります。そのため、治療後も病院へ通院し、血液中のhCG値を用いて経過が順調であるかどうかを管理する必要があります。
胞状奇胎の手術とはどんなもの?
胞状奇胎では「子宮内容除去術」という手術が行われます。子宮内容除去術はその名の通り、子宮内にある内容物を取り除いて、妊娠する前の状態に戻すための手術です。子宮内容除去術は流産や胞状奇胎など、正常な妊娠ではない妊娠に対する治療です。
膣鏡を用いて膣を広げ、器具を用いて子宮頸管を広げます。そして、細長いスプーン状の鋭利な器具を子宮内に入れ、子宮内に残された子宮内容物を除去します。子宮内容除去術では鎮静薬あるいは全身麻酔を用いますが、多くの場合、入院は必要ありません。そして、手術の約1週間後に、もう一度子宮内容除去術を行い、胞状奇胎が完全に除去できているか否かを確認します。
治療で抗がん剤を使うことがある?
胞状奇胎の治療は子宮内容除去術と術後経過の管理です。ですから、胞状奇胎の治療で抗がん剤を使用することはありません。しかし、胞状奇胎と診断された人の約10%から20%の方は、侵入奇胎や絨毛癌などの病気が起こります。侵入奇胎や絨毛癌はともに抗がん剤が非常によく効く病気であるため、治療の中心は抗がん剤による化学療法となります。
侵入奇胎の場合は「メトトレキサート」か「アクチノマイシンD」という薬、あるいは両方を併用します。一方、絨毛癌の場合は、初回から、2つの薬に加えて、「エトポシド」という薬も併用します。
胞状奇胎で何も処置をしないケースがある?
肝臓に腫瘍があっても、それが「血管腫」と呼ばれるような良性腫瘍であれば何も処置をしないことはあります。しかし、胞状奇胎は早急な治療が推奨されています。というのも、もし、胞状奇胎に対して、何も処置せずにいれば、胞状奇胎はそのまま増殖します。そして、少し期間を空けてから胞状奇胎の治療を行うと、出血など手術の際のリスクは増加してしまいます。
また、胞状奇胎と診断されると、大変残念ですが、胞状奇胎が赤ちゃんになることはありえませんので、何も処置をしないことのメリットは少ないと考えられます。できるだけ早急に治療を行い、胞状奇胎の再発や侵入奇胎などの続発する病気が発生しないかどうかを確認します。
奇胎娩出後管理とは?
また、近年は胞状奇胎を分娩した後の「奇胎娩出後管理(きたいべんしゅつごかんり)」という管理方法が普及しました。奇胎娩出後管理は、体内に残った胞状奇胎、侵入奇胎や絨毛癌などを早期に発見するために行われます。
奇胎娩出後管理では血液中のhCGの値を測定します。そして、娩出後20週までを「一次管理」、その後最低4年以上を「二次管理」として、hCGの値を測定して管理します。通常、胞状奇胎が完全に取り出せていて、絨毛癌などの発症がなければhCGは順調に下がります。しかし、胞状奇胎が残っていたり、絨毛癌などを発症していると、hCGは判断基準よりも高い値となることがわかっています。この奇胎娩出後管理の普及により、絨毛癌の早期発見ができるようになり、胞状奇胎に続いて起こる絨毛癌は減少しています。
胞状奇胎の手術後は妊娠を控えるべき?なぜ?
胞状奇胎と診断されると、子宮内にあるものを取り除く子宮内容除去術という手術を行います。従来は「術後の妊娠は1年から2年は避けた方が良い」という見解でしたが、現在では6カ月程度の避妊期間で十分だとされています。千葉大学の報告では胞状奇胎と診断された患者さんであっても、その早産率や自然流産率は通常の妊娠と比較して高いわけではありません。しかし、胞状奇胎治療後、再び胞状奇胎となる確率は正常の妊娠よりも10倍程度高率であるとされています。ですから、手術後の妊娠を避ける必要はありませんが、6か月間は避妊を行い、定期的な検診を行うことで胞状奇胎の管理を行うことが必要だと言えます。
胞状奇胎になると、医師の妊娠許可が必要?
胞状奇胎の治療では子宮内容除去術が行われます。子宮内容除去術ではキュレットという細長いスプーン状の鋭利な器具を用いて、子宮内膜を削って残った胞状奇胎を取り除きます。胞状奇胎の治療後は胞状奇胎が再発していないかを確認したり、侵入奇胎や絨毛癌などが発生していないかといった管理を行います。
管理の際に用いられるのが、血液中の「hCG」 というホルモンの値です。血液中のhCGの下がり具合が順調であるかどうか、これが術後の管理で非常に重要になります。ところが、hCGは正常の妊娠でも上昇します。つまり、管理期間中に妊娠してしまうと、hCG値の上昇が妊娠によるものなのか、胞状奇胎の再発なのか、はたまた侵入奇胎や絨毛癌なのかが分かりません。こうした理由もあって、医師は半年から2年間の避妊を告げます。しかし、hCGの管理だけをもって、「絶対に妊娠をしてはいけない」という根拠にはなりません。子宮内膜は手術の際に損傷を受けますが、すぐに再生しますので、正常な妊娠は理論上可能です。
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胞状奇胎の治療や術後の妊娠についてご紹介しました。妊娠の状態に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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