トリコモナス症の原因、感染経路、予防方法 犬や猫からうつる?「トリコモナス腟炎」と同じ?

  • 作成:2016/09/29

トリコモナス症は、「トリコモナス原虫」という寄生虫が原因で引き起こされる病気の1つで、性病の1種です。ただ、性器以外にも症状が出ることがあります。感染経路や予防方法を含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は3分です

目次

トリコモナス症とは?「トリコモナス腟炎」と同じ?

トリコモナス症とは「トリコモナス原虫」という寄生虫が原因で、炎症を起こす病気です。

中でも「腟トリコモナス(トリコモナス・ヴァギナリス)」という種類は、腟や尿道、外陰部を中心に性感染症を引き起こします。炎症の部位により「トリコモナス腟炎(腟トリコモナス症)」、「トリコモナス尿道炎」、「トリコモナス性前立腺炎」と診断されますが、全て「腟トリコモナス」が原因で起こる病気です。

腟トリコモナス以外にも「腸トリコモナス(トリコモナス・ホミニス)」、「口腔トリコモナス(トリコモナス・テナクス)」などの種類があり、それぞれ寄生する臓器や症状が異なります。

トリコモナス症の原因となる原虫はどんなもの?特徴は?

トリコモナス(Trichomonas)は「原虫」とよばれる単細胞生物で、細胞核をもつ生物の中では最も原始的な生物です。原虫には「マラリア」や「赤痢」など、他の重大な病気の原因となるものも含まれます。

トリコモナスは、分類学的には、動物性鞭毛虫類(べんもうちゅうるい)の「トリコモナス目」というものに属します。寄生生活を送る生物であり、人では泌尿器や生殖器、消化器などに寄生します。

原虫は「鞭毛(べんもう)」とよばれる鞭(ムチ)のような長い尻尾を動かしながら、自分で移動することができます。そのため、性器や口などから入り込んで、自分で他の臓器に入り込んでしまい、そこで炎症を起こす原因になります。

トリコモナス症の感染経路 性交?犬や猫からうつることがある?

「腟トリコモナス症」は女性が発症する病気ですが、性交によってトリコモナス原虫は男性にも感染します。男性が発症しやすいのは「トリコモナス前立腺炎」や「トリコモナス尿道炎」です。これらは、「腟トリコモナス」に感染した女性との性交渉により、「トリコモナス・ヴァギナリス」という種類の原虫が、尿道や前立腺に侵入して、炎症を起こすものです。

トリコモナスの感染経路は性交渉のみではありません。トリコモナスは乾燥したところでは死滅しますが、水中では比較的安定に生き延びることができます。そのため、プールやトイレの便器やタオルなどが感染経路になる可能性もあり、性行為を行っていなくても感染することがまれにあります。

ただし42度以上でトリコモナス原虫は死滅するので、熱い温泉ならば感染することはほとんどないと考えられます。

また、トリコモナスは犬や猫、ハムスターなどの動物にも寄生します。動物の場合、病原性(病気としの症状を引き起こすこと)を示すことはあまりありませんが、しばしば水下痢を起こすことがあります。感染した動物の便を介して、人にも感染しますので、動物の便を取り扱ったときには、よく手を洗うなどして、感染しないように気をつけてください。

トリコモナスの感染率と、接触による感染確率

トリコモナス症は女性の方が男性よりも発症しやすく、成人女性の約20%が腟トリコモナス症を発症すると言われています。男性では感染していても症状が表れないことも多いですが、男性の尿道炎の5%から15%はトリコモナスが原因で起こると言われます。またトリコモナスを感染していると、淋疾など他の性感染症も同時に発症するケースが多く見られます。

トリコモナス症の予防方法

もっとも感染が起こりやすいのは性交渉による感染です。そのため性交渉に関して注意すべき点をあげておきます。

性交渉のパートナーが不特定多数の場合、感染の拡大につながります。そのため複数のパートナーとの性交渉は控えましょう。また感染している場合には性器からだけではなく、手や口からもうつる可能性があります。

また、トリコモナスの感染は、適切にコンドームを使用することにより予防することができます。コンドームは性交渉中には、可能な限り、継続して使用し、爪などで破らないように注意しましょう。

さらにパートナーが感染したことがわかった場合には、一緒に治療を行うことで、互いに病気をうつしあう「ピンポン感染」を防ぐことができます。たとえ自分には症状が出ていない場合でも、同時期に治療するようにしましょう。

また性交渉以外の経路でも感染する可能性があります。プールや公共のトイレなどの水の多いところでは、トリコモナス原虫が生存することがあり、まれにですが感染の原因になることがあります。

その他にも、腟の洗いすぎが間接的に腟炎を招くことがあります。腟にはいつも住みついている菌がいて、雑菌の繁殖を抑える働きをしています。陰部を清潔に保つことが一番ですが、あまり石鹸などで頻繁に洗い過ぎると、良い菌まで排除してしまうので、洗い過ぎには注意しましょう。



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トリコモナス症の原因、感染経路、予防方法などについてご紹介しました。「何かの性病にかかったかもしれない」と不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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