切迫早産の定義、原因、なる確率、出産に至る確率、予防方法 ストレス、喫煙、やせ体型も関係?
- 作成:2016/08/29
切迫早産とは、文字通り、「早産」になりかけている状態です。早産とは、妊娠22週以降から37集未満に起こるものです。なる確率や出産に至る確率、予防方法について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
切迫早産とは?その定義?そもそも早産のリスクとは?
妊娠22週以降から37週未満に起こる分娩を「早産」といいます。「流産」と「早産」が異なる点は、胎児が生育可能か否かという点です。現在の「早産」の定義は妊娠22週以降から37週未満、流産の定義は妊娠22週未満となっていますが、以前は24週以降から妊娠37週未満の分娩を「早産」と定義していました。つまり、早産の定義は新生児医療の進歩によって変移するもので、それだけ赤ちゃんの救命率が高くなっていることを表しています。
「切迫早産」とは、22週以降、37週未満の間に分娩が始まろうとしている状態です。具体的には、下腹部痛や性器出血、破水などの症状が出現します。内診では子宮口が開いたり、子宮頚管(膣と子宮を繋いでいる管)の短縮や軟化など、分娩の進行がみられるようになります。
早産になるリスク要因としては、頸管無力症や円錐切除術などの病気をわずらった経験や、喫煙やストレスなどの生活習慣、絨毛膜羊膜炎や多胎妊娠(双子以上の妊娠)、高齢妊娠などがあげられます。
切迫早産の原因 胎児の発育に問題?
早産のリスクはそのまま切迫早産の原因になります。
母体側のかかえている病気による問題(「現病」ともいいます)には、「絨毛膜羊膜炎」という病気や高齢妊娠、糖尿病や甲状腺疾患、精神疾患など、妊娠に影響を及ぼす病気を合併している妊娠などが考えられます。切迫早産の原因で最も多いと考えられているのが「絨毛膜羊膜炎」によるものです。絨毛膜羊膜炎は膣や子宮への感染によって、胎児・羊水を包んでいる「絨毛膜」と「羊膜」という膜に、炎症が生じる疾患です。ここに、クラミジアなどの感染が起こると、「プロスタグランジン」という炎症を起こすホルモンが産み出されます。プロスタグランジンには、オキシトシンを分泌させる作用があるため、強い子宮収縮が引き起こされ、切迫早産につながります。
母体側の既往歴(過去の病歴)による問題としては、頸管無力症や子宮頚部円錐切除術などが考えられます。「頸管」とは、膣と子宮を繋いでいる場所であり、本来はここが長く、閉じていて、硬くなっていることで、壁の役割をして胎児が出てこないようする仕組みになっています。頸管無力症の方の場合、生まれつきに子宮頚管に異常がある体質です。赤ちゃんが出てこないようにしている壁が柔らかくなってしまっており、胎児が出てこようとするのを抑える力が弱くなってしまっている状態です。もう1つの母体側の問題となるのが、子宮頸癌の治療目的に行う手術の「子宮頚部円錐切除術」です。頸管の一部を切除することで、頚管そのものが、物理的に短縮される事になり、出てこようとする胎児を受け止める壁としての力が弱くなってしまっています。
胎児側の問題としては、多胎妊娠や羊水過多(羊水が一定の基準を超えて多くなること)があります。羊水は、胎盤からの分泌物や胎児の尿から作られており、胎児が飲み込み、一部は吸収して、一部は排泄されることによって循環していると考えられています。妊娠後期のその羊水量は通常500ml程度とされていますが、概ね800mlを超えると、「羊水過多」とされます。その原因は、羊水産生量が過剰になることや、羊水の吸収障害です。
母体が糖尿病などの原因によって高血糖になると、胎児も血糖が高くなる事によって尿量が増え、羊水の産生が多くなります。また、まれに胎児の尿崩症によって尿量が多くなる事もあります。また、脊髄の形成がうまくいかず、本来閉じた空間であるはずの脊椎に裂け目が入ってしまう「二分脊椎」という奇形では、胎児体内に作られるはずの脊髄の中の脊髄液が羊水中に放出されてしまい、羊水量が過剰になります。一方、食道や小腸が閉鎖している食道閉鎖や消化管閉鎖などの奇形の場合は、羊水吸収が低下し、羊水量が増加する事になります。
喫煙やストレス、やせ、体質も問題に
母体側の生活習慣による問題としては、喫煙やストレス、やせが考えられます。喫煙では、ニコチンの作用により血管が収縮します。ストレスによって交感神経が活発になった場合も、血管の収縮が起きます。血管収縮が起きると、胎児に酸素を受け渡す場所である「絨毛間膜腔」という部分が、低酸素の状態になり、胎児への酸素供給に問題が出ます。やせによる低栄養では、胎児が栄養不全に陥ります。胎児の発育に障害が起こると、「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)」というホルモンが放出されます。CRHは子宮の収縮を引き起こす「オキシトシン」というホルモンの働きを強くさせる作用があり、強い子宮収縮が生じ、切迫早産を引き起こします。
切迫早産になる確率、無事出産に至る確率
切迫早産になる確率は、妊娠している女性の約15%といわれており、決して珍しいものではありません。しかし、実際に早産に至るのは全体の妊娠のうち約5%といわれています。したがって、切迫早産は今にも分娩が始まろうとしている状態ではありますが、適切な処置を行うことで、妊娠状態を維持することができます。具体的には、原因を除去する、安静にする、子宮収縮を抑制する薬品を使うなどの治療を行います。その結果として、切迫早産になっても、そのうち60%以上は早産にならず、無事「正期産」として出産に至ることができるのです。
切迫早産は予防できる?どんな方法?
当然ですが、原因となることを少しでも減らすことが、切迫早産の予防になります。
既往歴で挙げた、頸管無力症や子宮頚部円錐切除術に対しては、頚管を拡げないように縛っておく手術、「子宮頸管縫縮術(シロッカー手術やマクドナルド手術)」を行う事で対処が可能です、一方、生活習慣に関わる問題である喫煙やストレス、やせは、生活を見直せば、対応可能ではないでしょうか。特に、妊娠中の喫煙は、胎児発育遅延、妊娠高血圧症、胎盤機能不全、前期破水など多種多様な悪影響を及ぼします。タバコは百害あって一利なしと言われています。お腹の中の赤ちゃんのためにも、妊娠中は禁煙しましょう。「絨毛膜羊膜炎」の予防は、クラミジアの感染を防ぐために、あらかじめ感染の検査を行っておく事が重要ですが、保菌者との性交時にはコンドームで感染の要望を行う事が重要です。免疫力を高めることです。バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠など、規則正しく健康的な生活を送ることが大切です。
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切迫早産の原因、予防、確率などについてご紹介しました。切迫早産に対して、不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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